スピリチュアル・ポイズニング
霊毒を治す方法は一つしかなかった――少なくとも、俺が知る限りでは。
ネヴァリアに戻った俺は、図書館へ向かった。あそこには、予備の羊皮紙と羽ペン、それにインクが保管されているのを知っていたからだ。そこで必要な材料のリストを書き出し、住所をフェイに渡して、材料を手に入れたらすぐ来るよう伝えた。
運のいいことに、必要な材料はこの前俺が行った薬局で手に入るものだった。本当は俺自身が買いに行ってもよかったのだが――部屋の準備をしなければならなかったし、それに手持ちはまだ一万二千五百ヴァリスほどしか残っていなかった。あのAランク霊雷術を売った時の金が、だ。
フェイが着ていた服はシルク製だった。もっと高価な素材も世の中にはあるが、あれは一目でわかる、Fランク魔獣・シルクワームの糸から作られた高級品だった。つまり、彼女は貴族か、相当成功した商家の出身であり、少なくとも俺よりは金に困っていないことがわかった。
自宅に戻った俺は、まず部屋の掃除に取りかかった。別に汚部屋というわけではなかったが、「女性を迎えるにふさわしい空間」とは到底言えなかった。床を掃き、棚の埃を払い、ベッドマットを干し、最低限の清潔感は整えた。
それから浴槽に水を張る作業に取りかかった。
この作業が――めちゃくちゃ面倒だった。
この家には水道が通っていない。つまり、川からバケツで水を汲み、何往復もして浴槽を満たすしかない。
一度満杯にするだけで百三十往復以上……浴槽なんて買うんじゃなかったと心底後悔した瞬間だった。
浴槽を満たし終えた後は、ただ待つしかなかった。
俺はベッドに座り、簡単な循環訓練――霊力を体内で早めたり遅らせたりする基礎トレーニング――をして時間を潰した。大して効果がある訓練じゃないが、退屈しのぎにはなるし、多少なりとも鍛錬になる。
夕方になる頃には、フェイが本当に来るかどうか不安になってきた。
だが、そんな不安が頭をよぎったタイミングで――
「コン、コン」とドアを叩く音がした。
フェイだった。
「えっと……来ました」
フェイは小さく、恥ずかしそうな声で言った。
服も着替えていた。
先日とは違い、今日は濃緑のローブを纏っている。彼女の赤い髪とは対照的で、エメラルド色の瞳にはよく似合っていた。
ローブもシルク製で、高品質な素材だとすぐにわかった。表面に金色の装飾模様――たぶんルーン文字――が踊っているが、見たところ実用性はなく、ただのデザインだろう。
「入って」
俺はドアを大きく開き、彼女が中に入るのを促した。フェイは少し逡巡した後、おずおずと部屋に入ってきた。
俺はドアを閉めながら尋ねた。
「材料は持ってきたか?」
「は、はい。ちゃんと持ってきました」
フェイは何袋か手渡してきた。俺はそれを受け取り、一つ一つ中身を確認した後、必要なものが揃っていることを確かめてからうなずいた。
「よし」
俺は深呼吸した。
「そこ、ベッドに座ってていいぞ。錬成にはちょっと時間がかかる」
「錠剤…? 錬金術の薬?」
フェイは瞬きをしながら問いかけた。
「ああ」
俺はアルケミーセットの保管箱に向かい、留め具を外して道具を取り出しながら答えた。
「霊毒を治療するためには、いくつかのステップを踏まないといけない。まず第一段階として、お前に『洗霊丹』っていう錠剤を飲んでもらう。」
準備をしながら、俺は説明を続けた。
「この薬は体内の霊脈を巡り、詰まった霊力をほぐす働きがある。……まあ、『ほぐす』って言っても、完全に分解するわけじゃない。あくまで柔らかくして、俺が霊力を注ぎ込んで詰まりを砕けるようにするってだけだ」
フェイはすでにベッドに座っていた。膝をそろえ、手を膝の上に置きながら、俺を興味津々な目で見つめていた。
――まあ、当然か。
この国じゃ、こんな薬の存在すら知られていないのだろう。
ネヴァリアの人間は、まだ本当の錬金術を知らない。
「そんな錠剤、聞いたこともありません…」
フェイは呟くように言った。
「次のステップは何を?」
「薬が効果を発揮した後、俺の霊力を使って、お前の霊脈を塞いでいる霊力の塊を取り除く」
フェイが何か言いかけたが、それを遮って俺は続けた。
「ただし、この治療は誰でもできるわけじゃない。まず、霊毒に関して深く理解している必要がある。そして――」
俺はフェイの視線をしっかりと受け止めながら言った。
「この治療には、詰まった部位に直接触れてマッサージしながら、自分の霊力を肌を通して流し込む必要があるんだ」
「は、肌に直接触れるって……?」
フェイは顔を真っ赤に染め、俺が言いたいことをしっかり理解したようだった。
「今ならまだやめることもできる」
俺は静かに告げた。
「嫌なら、無理にやる必要はない。ただ、もしこのまま何もしなければ、二度と霊力を使わないことを強く勧める。今ここで治療しなければ、霊力を使うたびに身体が壊れ、最悪の場合は命を落とすだろう」
正直なところ、ここまで来てからようやく思い至った。
この治療方法を説明していなかったのは、ただ彼女を救いたいという一心だったからだ。
だが今は、すべてを正直に伝え、選択肢を与えるべきだと思った。
フェイはしばらく黙ったままだったが、やがてゆっくりと首を横に振った。
「諦めるわけにはいきません。強くならないといけないんです」
その決意に、俺は静かにうなずいた。
「分かった。それじゃ、今から錠剤の錬成を始める」
「……はい。邪魔しないようにします」
フェイも落ち着いた声で応えた。
「助かる」
すでにアルケミーセットの準備は整っていた。
まずは、五百ミリリットルのフラスコに半分ほど水を入れる。それから、陶器のプレートと火打石を使って火を起こし、水を沸騰させた。
火加減を確かめながら、次に手に取ったのは《風狸》の骨の削り屑だった。
一枚一枚、水の中に沈めるたびに、数秒待って完全に水に馴染ませる。これを五枚、慎重に沈めていった。
作業がひと段落ついた俺は、次の材料に手を伸ばした。
それは――Cランク魔獣の水属性モンスターコアだった。
水面に波紋が広がるような模様を持つ青い球体。
これを乳鉢に置き、乳棒を使って砕き始める。
ゴリ、ゴリ、と音を立ててひび割れていくコア。
二分ほど叩き続けた後、ついに砕け、細かな粉末にすることができた。
その頃には、《風狸》の骨の削り屑はすっかり水に溶け、液体は鮮やかな緑色に変わっていた。
俺はモンスターコアの粉をひとつまみ取り、沸騰するフラスコにパラパラと振り入れる。
さらにもうひとつまみ、またひとつまみ――すべての粉を入れ終わるまで、丁寧に繰り返した。
最後に全体を混ぜ合わせると、液体は明るい緑から、淡いシアン色に変わった。
作業を続ける俺を、フェイがじっと見つめているのに気付く。
「何か質問があるのか?」
手を止めずに尋ねる。
錬金術ではタイミングが命取りになる。材料を放置すれば、すべてが台無しになるからだ。
フェイは一瞬驚いたようだったが、すぐにコクンと頷いた。
「実は……錬金術を実際に見るのは初めてなんです。今まであまり興味がなかったんですけど、こうして見ていると……ちょっと気になってきました。特に、これで本当に霊毒症を治せるなら」
「その気持ちは分かるな」
俺は一旦言葉を切り、250ミリリットルのビーカーに水を四分の一ほど注いで沸騰させた。
そして次に、ニルンルートをすり潰しながら、話を続けた。
「錬金術っていうのは、材料同士の相互作用を理解して、最適な組み合わせを見つける技術だ。
効果はさまざまだが――今作っている《清霊丸》も、その一つだ」
「他にはどんな薬を作れるの?」
フェイが興味津々に尋ねた。
「たくさんだな」
俺は笑いながら答えた。
「多すぎて、全部挙げるのは無理だ」
錬金術については、俺は専門家というほどではなかった。
深入りして学んだわけじゃないし、ミッドガルドでは中級者、いわゆる「熟練者」レベルにしか過ぎない。
だが、ネヴァリアでは間違いなく「達人」扱いされるだろう。
「たとえば、最近《三脈拡霊丹(スリーウェイ・スピリチュアル・ワイデニング・ピル)》を作ったばかりだ」
俺は棚の方を顎でしゃくった。
「あそこにある袋、見てみろよ」
フェイは気になったのか、好奇心を浮かべながら立ち上がり、棚の方へ向かった。
その隙に、俺はすり潰したニルンルートをビーカーに投入し、かき混ぜ始める。
液体はすぐに泥のような茶色に変わった。
その色を確認した俺は、最後の材料――《火根草》を加える。
この赤い草は魔獣山脈の特定の場所に自生するもので、わざわざすり潰す必要もない。
そのままビーカーに放り込み、沸騰した水に溶かしていった。
その間に、フェイが棚から戻ってきた。
彼女の手には小さなビーズ状の錠剤が握られている。
ほんのりとした甘い香りが、湯気と一緒に立ち上っていた。
これで混合は完了だ。
俺は火を消し、慎重にフラスコの中身を鍋へと注ぎ入れる。
前回と同じように、量は鍋を満たすほどではないが、今回はたった一粒作れればいい。
問題ない。
俺は鍋の縁を掴み、液体に霊力を注ぎ込んだ。
鍋の中で雷光が弾け、液体が泡立ち、パチパチと音を立てる。
数秒が経つと、液体は徐々に滑らかに、丸く凝縮され、ついにはシアン色の錠剤へと変わった。
「この錠剤って、どんな効果があるの?」
フェイが手に持っている錠剤を見ながら尋ねた。
「霊力の使いすぎで傷んだ霊脈を修復するんだ」
俺は答えながら錠剤を収納し、鍋を掃除し始めた。
「霊脈を癒すだけじゃない。広げる効果もある。結果として、より多くの霊力を通せるようになる」
鍋の中の材料はほとんど錠剤へと精錬されていたが、わずかに残った残渣をきれいにするのは重要だ。
特に、これから全く違う種類の錠剤を作ろうという時はなおさらだ。
「すごく役立ちそうね」
フェイの目が好奇心できらめいた。
「訓練用に使ってる」
彼女が続けて質問してくるだろうと思い、先に説明しておいた。
「霊脈ってのは筋肉と同じだ。使えば使うほど成長する。霊力を流すたびに霊脈は微細な損傷を受ける。けど、時間が経てば自然に修復されて、以前より強く、太くなる。それで、扱える霊力の量も増えるってわけだ」
「うん、それは知ってる」
フェイは俺に笑いかけた。
「学院で習ったから」
「学院? ああ、《霊術士養成学院》のことか」
「そう」
フェイはこくりと頷いた。
「へえ。知らなかったな」
俺は鍋をきれいに磨き終えると、ビーカーへと目を向けた。
液体は燃えるような赤色に変わり、シナモンに似た芳醇な香りを漂わせている。
それを確認しながら、俺は続けた。
「《三脈拡霊丹(スリーウェイ・スピリチュアル・ワイデニング・ピル)》は、霊脈を癒して休養時間を短縮する。だから、より早く、より多く訓練できるようになるんだ」
俺はビーカーを手に取り、鍋に中身を注いだ。
鍋の中はおよそ三分の一ほどしか埋まらなかった。
フェイは錠剤をしばらく見つめ、うなずいてから俺のほうを見た。
「その薬があれば、訓練の効率が大幅に上がりそうね」
「そうだな。訓練の進み具合は何倍にも加速する」
俺はうなずきながら言った。
「霊脈の回復時間のせいで、月に四十五日しか訓練できない人が、この薬を使えば毎日訓練できるようになるんだ。月に六十三日あって、年に九ヶ月あることを考えたら、その差はとてつもなく大きい」
そこまで話してから、俺は再び錠剤の精錬に集中するために口を閉ざした。
赤く煙を上げる液体に意識を集中させると、額から汗が流れ落ちた。
火霊草は頑固な材料だ。
俺の霊力はまだ完全には制御できていないため、これを完全に精錬するには三十秒近くもかかった。
残念ながら、この錠剤は一度に一つずつしか作れない。
三脈拡霊丹の時とは違い、火霊草の性質上、まとめて精錬するのは不可能だった。
最終的に、俺は全部で六十三個の錠剤を精錬した。
今回ここで使う分を含めて、フェイは一日一個使えばちょうど一ヶ月分になる。
俺はそれらを、彼女が薬局で買ってきた材料を入れていた袋のひとつに詰めた。
「終わった」
深く息を吸いながら、俺はそう宣言した。
「まずは片付ける。それが終わったら、第二段階に移ろう」
「だ、第二段階…」
頬を真っ赤に染めながらも、フェイはしっかりとした口調でうなずいた。
「…わかりました」
俺は鍋、フラスコ、ビーカー、乳鉢とすりこぎを丁寧に洗い、それらを箱に戻して留め具をカチッと締めた。錬金道具を所定の場所にしまい、フェイのほうを振り返った。
「じゃあ、薬を飲んでくれ」
俺はシアン色の錠剤を渡し、その代わりに彼女が興味深そうに見ていた三脈拡霊丹を受け取った。
フェイは何も質問せず、渡された錠剤を口に入れて噛んだ。
俺が三脈拡霊丹を袋に戻している間に、錠剤の外殻が崩れ、中の液体が彼女の口内に広がった。
錠剤の外側はただの硬化した膜に過ぎず、中身は液状になっている。
今まさに、その液体が喉を通って彼女の霊脈へと流れていっているはずだった。
「…特に変化は感じません」
フェイが首をかしげながら言った。
俺は思わず目を翻しかけた。
「感じるわけないだろ。これは詰まっている霊力を緩めるだけの薬なんだ。あくまで、俺の霊力を使ってマッサージで取り除けるようにする準備に過ぎない」
そう説明してから、俺は少し間を置き、次の質問をした。
「で、霊毒がどこまで進行している?」
フェイは一瞬だけためらったが、すぐにため息をついて答えた。
「…身体のほとんどです。最後に確認した時は、鎖骨にまで達していました」
俺は震える息を吐いた。
「そこまでとは思ってなかった…これは思っていた以上に手強いかもしれないな」
「治るんですよね?フェイは心配そうに尋ねた。
「もちろん。私にすべて任せてください」。
スピリチュアル・クレンジング・ピルが彼女の体に行き渡るにはしばらく時間がかかるので、私はフェイと取るに足らないことを話し、学校のことや家族のこと、これから起こることから気を紛らわせるためにできることは何でも聞いた。フェイは明らかに恥ずかしがっていた。しかし、私はそれどころではなかった。私が裸を見たことのある女性はカリだけだった......ケイリもそうだったと思うが、2歳の娘が裸で家の中を走り回っているのと、これとはわけが違う。
「ピルはもう効いているはずだ。もう潮時だ。私はフェイの顔が急に恥ずかしそうになったのを見て、安心させるような笑顔を見せた。「心配しないで。浄化の部分については何もできないけど、あなたが服を脱ぐ間、目をそらすことくらいはできるわ」。
「ありがとう」とフェイはつぶやいた。
私は床の上で振り返って目を閉じたが、衣擦れの音を聞いてすぐに目を開けた。目を閉じたことで、その音がより強調された。さらに悪いことに、彼女の裸を想像させた。
「終わったわ」と彼女は告げた。
振り返ると、目の前に裸の少女が立っていた。
他の状況であれば、フェイはゴージャスの典型と見なされただろう。彼女のウエスト、ヒップ、そしてバストの繊細な曲線は、数少ない女性だけが実現できる魅力的なものだった。彼女の胸は大きくはなかったが、小さくもなかった。しっかりとした柔らかさのあるその胸は、まるで一対の桃が胸の上にちょこんと乗っているようで、小さな乳首が逆さに付いていた。お腹は滑らかで、腹筋の輪郭があった。そして私は彼女の脚に目をやった。彼女の股間のV字のところ、ちょうど下唇の上に、柔らかい赤い毛が一本生えていた。彼女の太ももの間の隙間は、ストレートな男性なら硬直してしまうだろうが、最も注目を集めたのは彼女の脚だった。彼女ほど完璧な太ももとふくらはぎを持つ女性は見たことがなかった。筋肉と脂肪の比率が完璧で、力強さと柔らかさを同時に感じさせる。
確かに、他の場面であれば、フェイは誰もが認めるほどの美しさを誇っていただろう。
だが、今はそんな場面ではなかった。
その美しい体には、不気味な黒い痣のようなものが広がっていた。それが自然なものでないのは一目瞭然だった。ただ黒いだけではなく、まるで生きているかのようにうねっており、さらに光る青い線が肌の上に浮かび上がっていた。その線は、彼女のスピリチュアルパスウェイだった。
「仰向けになってください」と、俺は言った。
「う、うん……」
フェイはうまく声にならず、ベッドの上に仰向けになった。彼女は少し顔をしかめた。この硬くてごつごつしたマットレスは、彼女が普段使っているものとは比べものにならないだろう。
俺は彼女の隣に膝をつき、肌の状態をじっくり観察した。正直なところ、少しだけ感謝している部分もあった。もし彼女のスピリチュアルポイズニングがここまで酷くなかったら、間違いなく俺は勃起していたかもしれない。その状態が、俺を「そういう気分」から完全に引き戻してくれたのだ。
「これから始めます」
「う、うん……」
「スピリチュアルパスウェイの詰まりを解消するとき、人によっていろんな感覚を覚えるらしい。俺は激しい痛みを感じた。君も痛みを感じるかもしれないけど、我慢してほしい」
フェイはうなずいたが、そのうなずきには焦りがにじんでいた。俺は少しでも安心させようと微笑みかけたが……効果があったとは思えなかった。
「よし、始めるぞ」
深く息を吸い、三秒間止めてから、俺は動き始めた。
まず手をつけるべきは、一番重要な場所――心臓だった。スピリチュアリストにとっても、人間にとっても、心臓は最も大切な器官だ。生きるために欠かせないその場所のパスウェイを最初に開通させることが、何よりも優先される。
心臓は胸骨のすぐ裏側、やや左寄りに位置している。俺はそこに通じるスピリチュアルパスウェイを見つけ、光り輝く青い線の上に指を置いた。軽く圧をかけながら、その線に沿ってゆっくりと指を滑らせる。フェイの呼吸がすぐに乱れた。俺のスピリチュアルパワーが彼女の中へ流れ込むと、何度か呼吸が引っかかり、やがて胸が上下しながら小さな吐息へと変わっていった。
俺はそれに気を取られることなく、ただ癒やすことだけに集中した。
蓄積され、凝縮されたスピリチュアルパワーを取り除くのは、簡単な作業ではない。それを行うには、俺自身の力を直接フェイの体内へと流し込み、パスウェイに沿って進み、詰まりを“破壊”していく必要がある。そのためには、俺のスピリチュアルパワーを“円錐”の形に成形し、詰まりの中へ突き刺し、通り道を広げていくのだ。
俺のコントロール力はまだ万全とは言えない。だからこそ、癒しの力で知られる“水”のエレメントを使って補強した。
効果は出ていた。俺の指が通った場所から、少しずつ彼女の肌の色が明るくなっていく。黒ずみが完全に消えることはなかったが、それは当然だ。肌の色が元に戻るのは、第三段階――つまり、これから一ヶ月かけて行う最終工程が終わってからのことだからだ。
私は作業を続けながら、フェイが足の指を握ったり解いたりしているのに気づいた。汗が彼女の体を覆い、肌を伝い、その跡に柔らかな小水を残している。彼女の呼吸は、苦痛を感じているようには聞こえないが、重い喘ぎ声に変わっていた。さらに、彼女の頬は赤らんでいた。
私は顔をしかめたが、彼女の通路の詰まりを取り続けた。青く光る軌跡をたどっていくと、彼女の胸から乳房のあたりにたどり着いた。女性の胸にはたくさんの霊道が密集している。そのほとんどは授乳のためだった。スピリチュアル・パワーは赤ちゃんにとって重要な栄養素である、そうカリは私に言った。
「ハッ...ハッ...アーン...」。
フェイの左乳房の乳首が、逆さになっているにもかかわらず、ゆっくりと硬直したとき、私は立ち止まった。乳輪から突き出そうとしているのが見えた。しかし、私が立ち止まったのはそのためではなく、彼女が発した音のためだった。
「フェイ...」 訊くのをためらったが... 「興奮してる?」
フェイの顔は以前から赤かったと思ったが、私の質問を聞いて、彼女の顔をストーブにすることは可能だろうかと思うほど熱く燃えた。彼女は顔を向けたまま何も言わなかった。
「ごめんなさい」と私は謝った。「答えなくていい。ただ...ショックだったんだ。
「私もよ」フェイは苦笑いと照れ笑いを合わせたような表情で認めた。それはちょっとかわいらしかったが、彼女が恥ずかしさを隠すためにその声を出しているだけだとわかった。
「続けるわ。いいですか?
「ええ、続けてください
私はこれを続け、青い線が彼女の肩に沿って、腕、手、指、そしてお腹と脚を横切っていくのを追った。フェイはお腹がとても敏感なようだった。私がそこにスピリチュアル・パワーを流し始めると、彼女の呼吸が上がった。それは、私が彼女の胸の周りの経路の詰まりを取り除いたときと同じ反応だった。しかし私が受けた最大の反応は、彼女の脚の霊路の詰まりを取り始めたときだった。
「アーン!」
フェイがもう片方の足で彼女の片足をつかみ、つま先を握りしめたとき、私は自分がしていたことを止めた。彼女の太ももが震えた。彼女の息が荒くなり、皮膚から少量の汗が吹き出した。
「やめてほしい?と私は尋ねた。フェイの返事はただ首を横に振るだけだった。今は話せないのだろうと思った。「わかったわ。辛くなったら言ってね」。
彼女はうなずき、私はまた始めた。私は彼女の太ももをなぞり、内ももまで垂らし、ふくらはぎに到達したところで再び上に戻した。その間、フェイは泣き出さないように唇を噛んでいた。とはいえ、体の震えを止めることはできなかった。私は彼女の足でフィニッシュした。右足は左足よりも黒かった。
私は額の汗を拭い、彼女の顔を見た。「オーケー。前面は終わった。腹ばいになって、私が背中をやるわ」。
フェイはむせび泣いたが、うなずいた。正直、同情した。もし私が彼女の立場だったら、興奮や快楽よりも圧倒的な苦痛のほうを選んだと思う。どんなに治療を切望していたとしても、見知らぬ男にこれほど親密に触られるのは気持ちのいいものではなかったはずだ。
背中は前より少し楽だった。背中はそれほど敏感ではなかったようだ。私はほんの数分で、彼女の背中の上部、肩、腕、腰のすべての霊の通り道の詰まりを効率よく取り除くことに成功した。これ以上こじれることなく終わらせることができると思わせるには十分だった。
それから私は彼女のお尻を鍛え始めた。
「HRN!」
フェイが非常に大きく、喉の奥でうめき声をあげた。それは信じられないほどセクシーで、彼女と私が情熱に完全に没頭したときにカリが発していたうめき声を彷彿とさせた。喘ぎ声と同時に、彼女のお尻の頬が引き締まり、つま先が丸まった。香りが充満し、彼女の唇が強烈な興奮に濡れて光っているのに気づいた。
「本当にごめんなさい」と私はフェイに言った。私がどれほど惨めな思いをしているか、彼女には正確に伝えなかった。私がどんな罪悪感を抱いていたとしても、彼女が感じていたに違いない恥ずかしさとは比べものにならなかった。
「大丈夫よ 彼女は歯を食いしばった。「ただ...早く終わらせて...。お願いだから..."
「わかったわ」
私はフェイが発するうめき声、うめき声、うめき声を無視することに全力を尽くした。フェイの身体は汗で覆われ、呼吸は荒くなっていた。カリと何度も寝た私は、フェイが少なくとも最後のほうでオーガズムを得たことくらいは理解していた。
私は少し気分が悪くなった。
「私はそっと言った。「もう覆いかぶさっていいよ」。
フェイはすぐに言われたとおりに、私のベッドにあった毛布をつかんで自分の体に巻きつけた。私は見ないようにしていたが、彼女の顔が真っ赤に焼けているのに加えて、目に涙が浮かんでいるのに気づかずにはいられなかった。
くそっ。泣かせちまった。
今度はもっと最悪な気分になった。
俺は彼女から目を逸らし、さっき作った血のような色の錠剤のひとつを手に取り、浴槽へ向かった。そして、それを湯の中へ落とした。数秒後、浴槽の水は真紅に染まり、すぐに湯気が立ち上り始めた。俺は深く息を吸い込んで、ほのかに香る安らぎの香りを感じながら静かに頷いた。
「次の工程は、この“霊力強化の薬湯”を使って風呂に入ってもらうことだ。」
俺は静かにそう説明した。「何かあったらすぐ言ってくれ。すぐ外にいるから。」
返事はなかった。
あまりに長い沈黙が続いたから、正直、怒ってるのかと思った。
部屋を出ようとしたそのとき、かすかな衣擦れの音がして、フェイが毛布を身体に巻いたまま起き上がるのが分かった。
「…わかりました。」
小さく、かすれた声だった。
「そうか。」
俺はそれしか言えなかった。
俺は部屋の扉を開けて出て、扉を閉め、背中をドアにもたせた。
そのままゆっくり腰を下ろし、木の床に座り込む。両手で目を覆いながら、深く息を吐いた。
まるでSランクの霊術でも喰らったかのような罪悪感が俺の胸にのしかかってきた。
今までの人生で、これほど自分の行動を恥ずかしく思ったことはなかった。
たとえ彼女を救うためだったとしても――
さっきのあれは、やっぱりどこかおかしかった。
気持ちを切り替えようとして、別のことを考え始めた時だった。
ふと、ある事実に気づく。
「ちくしょう…俺より先に風呂に入るのが、まさかフェイになるとはな…」
誰に言うでもなく、ぼそっと呟いた。
みなさん、こんばんは!
もう結構遅い時間ですね。正直、めちゃくちゃ眠いです。今日はあまり多く語ることはありませんが、今回の章を楽しんでいただけたなら嬉しいです。
これまでの内容より、ちょっとエッチな要素が多めだったと思いますが……たまには、こういうのもアリですよね?




