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遠くにそびえる塔

道のさらに先を見た瞬間、俺の顎が外れそうになった。

目玉が飛び出すかと思うくらい、驚愕していた。

遥か彼方から、すべてを見下ろすように立ち並ぶ、七本の巨大な塔。

あの小さな町にいたとき、遠くに見えていたのを思い出す。でも、今こうして間近で見ることで、初めてその壮大さと威厳を理解した気がした。

まるで天を突き刺す杭のように、無言の番人として街を見守っているかのようだった。

一体何でできているのか見当もつかないが、どれも尋常じゃない存在感を放っている。

この距離からだと、それぞれの塔がどれくらい離れて建っているのか分かりづらい。近づくにつれて、余計にバラバラに見えてくるけど、それはきっと俺の目の錯覚だ。

六本の塔が囲むようにして、中央にひときわ大きな塔がそびえ立っていた。

「…あの塔は何だ?」俺は思わず声を上げた。

「ふふ」

エリカが喉の奥で笑うような音を漏らす。

「あれは、ミッドガルドで最も力を持つ宗派たちの塔よ。外側の六本は、それぞれ〈聖騎士団〉〈霊術研究宗〉〈錬金術士協会〉〈毒宗〉〈治癒宗〉〈戦乙女団〉のもの。中央にある一番大きな塔は、〈ミッドガルド霊騎士団〉の本部なの」

「じゃあ、あなたの宗派って……ミッドガルドの中でも最上位ってことか」

俺は驚きのあまり、向かいに座る彼女を凝視した。

エリカの甘い笑みは、なぜか逆に俺の神経を逆撫でした。

「そうね。私たちの宗派は、最近になってようやくあの塔を与えられたの。でも、前の団長――アレクシス様は、援護なしでAランク魔獣を討伐できるほどの強さを持っていたのよ」

その言葉に、カリと俺は息を呑んだまま、黙り込んだ。

Aランクの魔獣――

それは信じられないほど凶暴で、強力な〈霊術攻撃〉を使う化け物だ。

俺とカリは、〈果てなき砂漠〉と〈北方平原〉を旅していた中で、何度も魔獣と戦ってきた。

だけど、二人がかりでやっとBランクを倒せたのが関の山だった。

それだけでもネヴァリアの人たちは驚いていたのに、Aランクを一人で討伐って……もはや化け物だ。

北方平原にある数多の宗派……その強さはいったいどれほどなのか。俺は心の中で思わずそう問いかけていた。

「その団長さん、かなり恐ろしい人物なんじゃない?」カリが呟く。

しかし、エリカの笑みはさらに深まった。

「そう思うでしょうけど、実際はとても優しい人よ。少しよそよそしいところはあったけど、それ以上に――意外と子供っぽいところもあるの。特に背の高さについて言うと、ふてくされちゃうくらい」

俺もカリも、あまり信じられないという表情を浮かべていたと思うが、それを口にすることはなかった。

「ともかく、あなたたち二人を、良い宿に案内してあげるわ」

俺たちの反応に、エリカは面白そうに微笑みながら話を続けた。

「〈アンティクイティ・イン〉という宿よ。ここはミッドガルドの中でも最も古く、設備が整っていて、それでいて価格も良心的なの」

「ありがとうございます。本当に感謝してます」俺は頭を下げた。

「気にしないで」

彼女は軽く手を振って、それが些細なことだと言わんばかりだった。

「この数日間、あなたたちとの会話でたくさんのことを学ばせてもらったし、何より――あなたたち、結構気に入ったのよ」

「こんなことまでお願いするのは申し訳ないんですが……何か仕事を見つけるアドバイスってありますか?」

カリが少し遠慮がちに口を開く。

「宗派に入った方がいいのか、それとも――」

「それはとても良い質問ね」

エリカはうなずき、腕を組んだ。

そして脚を組み替えながら言葉を続けた。

「もちろん宗派に入るという選択肢もあるわ。でも、注意しなければならないのは、ミッドガルドにはたくさんの宗派があるってこと。その中には――正直、評判の悪いところもあるの」

「……そうなんですか」

「安定した雇用と収入を求めるなら、個人的には〈ミッドガルド霊騎士団〉に入るのがいいと思う。でも、それはつまり、ミッドガルドに住む覚悟を決めるということ。……それは、あなたたちには向かないんじゃないかしら?」

俺とカリは同時に首を振った。

俺はどこに住んでも構わないと思っていたが、カリは違う。

彼女は旅をしたい、世界を見て回りたい、遺跡を探索して冒険がしたい――そう語っていた。

そして俺は、彼女が行くなら、どこへでもついていくつもりだった。

俺にとっては、カリと一緒にいられるなら、それだけで十分だったのだ。

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