ぐっすり眠っていた
家に帰り着いたのは、思っていたよりもずっと遅い時間だった。
ドアを静かに閉めると、すでにリンはぐっすりと眠っていた。
部屋を見回しながら中に入る。家具はほんの少ししかないが、それでも全て新しく購入した家へ運ぶ必要がある。
そのためには、誰かの助けを借りなければならないだろう。運送業者に頼む必要がありそうだった。だが、そこには一つ問題があった。
ベッドへと歩み寄り、眠っているラミアの少女を見下ろす。
彼女は体を横にして寝ており、長い蛇の尾はカバーの下からはみ出し、ベッドの端から床にまで届いていた。
尾の重さのせいで、ベッドがたわんでおり、今にも壊れそうで少し不安になる。
黒髪は絹のように滑らかで、体とベッドを包み込むように流れていた。
顔から目を移すと、布団の隙間から見える肌が月光に照らされており、夜風で冷えたのか、彼女の体が少し震えているようにも見えた。
「……君を新しい家へ連れて行って、しかも人に見られずに荷物の運搬を済ませるなんて……どうしたものか」
小さく呟きながら、無意識にリンの髪に手を伸ばし、そっと撫でていた。
そのことに気づいたのは、しばらく経ってからのことだ。ハッとして手を引っ込め、首を振る。
――こんなに可愛くて、しかも異種族の女の子と一緒に暮らすのは、本当に大変だ。




