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過去、妻と共に奇妙な儀式に使われていた女性たちを見つけた

この廊下は、かなり奇妙だった。崩れかけた外観とは裏腹に、床は驚くほど滑らかで、壁には多くの模様や彫刻が彫られていた。

ある壁画には、尖った耳を持つ男が、他の人々の上に立ち、頭上に剣を掲げて軍勢を率いている姿が描かれていた。別の壁には、同じ男が巨大な球体を頭上に抱えている様子があった。

俺たちが通るごとに、その尖耳の男が中心となった壁画が続いていた。

「この遺跡って、もしかして寺院みたいな場所だったのかな?」

俺がふと疑問を口にする。

「さあね。」

カリは壁を見つめたまま答える。

「本当はゆっくり探索したいけど、その前にあの子たちを助けないとね。」

「……一つ、聞いてもいい?」

「なに?」

「どうして、あの少女を助けようと思ったんだ?」

「どういう意味?」カリが首を傾げる。「助けたくなかったの?」

「そうじゃない。ただ、俺たちには関係ないことじゃないかとも思って……」

カリは立ち止まり、くるりと振り返った。突然の行動に俺は驚く。

彼女の目には強い意志が宿っていた。しばらく黙って俺を見つめた後、ふっと哀しげに微笑んだ。

「……怖いんでしょ?」

カリの言葉に、俺は目を逸らす。思い出してしまった。

――ネヴァリアで出会った人々。俺たちと共に《果てなき砂漠》へと逃げ、命を落とした者たち。

「エリック、あなたが“助けられなかったこと”を恐れているのは分かる。助けようとして、救えなかった時の後悔は、誰より私が知っている。だけどね、今の私たちには、助ける力がある。力があるなら、それを正しく使うべきじゃない?」

「……そうだな。うん、その通りだ。」

ようやく俺は頷いた。「ごめん。優柔不断だった。」

カリは首を横に振った。

「いいのよ。今までのことを考えれば、その気持ちも無理はないわ。――さあ、行きましょう。」

「いつだって、隣にいるさ。」

遺跡の中には、無数の通路、広々とした部屋、そして隠し扉があった。外から見た時よりも、遥かに広大だった。外観では一階部分しか見えなかったが、実際には階段を下りていくと、更なる階層が広がっていた。通路の数も、分かれ道も、部屋の数も、次第に増えていった。

そして、この遺跡の壁には、すべて彫刻が施されており、例の尖った耳を持つ人物が描かれていた。大きな部屋のいくつかには、その人物の像まで設置されていた。その人物が誰なのか、非常に気になった。

さらに驚いたのは、これほど古いにもかかわらず、その彫刻や像が非常に良い状態で保存されていることだった。いったいどんな建築技術を使えば、こんなにも長い年月に耐えられるのか、考えても想像がつかなかった。

カリもその像に視線を送っていた。じっと見つめる彼女の横顔から、もっと詳しく調べたいという欲求が見て取れた。しかし、彼女はその思いを抑えていた。

階段をさらに下り、三階層目に到達したとき、何かの声が響いてきた。二人とも立ち止まり、耳をすませる。

――それは、会話ではなかった。

絶望と恐怖に満ちた、悲鳴だった。

俺たちは迷うことなく駆け出した。廊下を曲がりくねりながら、声の反響を頼りに進んでいく。

いくつかの角を曲がった先、俺たちは突如として広間を見下ろすような場所に立っていた。そこはバルコニーのように部屋の内側を取り囲んでいた。

この部屋は、今まで見てきた中で最も複雑な構造だった。部屋の左右には、例の尖耳の像が三体ずつ、合計六体並んでいた。右手には下の階へと通じる別の入り口があり、左手にはさらに大きな像があった。他の像と同じ、長い髪と尖った耳、足元まで届くローブをまとった男の像だが、そのサイズだけが異なっていた。他が等身大だったのに対し、この像は俺の三倍はあっただろう。

そして部屋の中央には、少し高くなった台座があり、そこに七人の人物がいた。六人は、あの森で戦ったフード姿の者たちと同じで、もう一人は十六か十七歳ほどの少女だった。

少女は台座の中央に仰向けに寝かされ、両腕は頭上で縛られ、脚も鎖で地面に固定されていた。涙を流しながら、必死に命乞いをしている。

「お願い……もうやめて……帰ります、誰にも話しませんから……」

彼女はすすり泣きながら懇願した。

そして、部屋の六体の像の足元には、ほかの五人の少女たちも同様に鎖でつながれていた。皆、恐怖に顔をゆがめ、涙を流しながら、同じように許しを請うていた。


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