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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
終章 少しだけ平和になった世界

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新たな段階

 ドイツ側の交渉役に選ばれたのは、案の定と言うべきかビスマルクであった。船魄として65年ばかりドイツの外交に関わってきた彼女は、今やドイツになくてはならない存在である。


 ヒンデンブルク級ミサイル戦艦三番艦となったビスマルクであったが、その艦内には相変わらず豪勢な宴会場が設けられており、そこで出される料理はヨーロッパ中から特に優れた料理人を集めて生み出された絶品の数々である。


 妙高は席に着いてスープを飲みながら、早速本題に移る。


「ビスマルクさん、ここでは名目上の話は不要です。お互い、本音で話し合いましょう。少しでも行き違いが起これば、私達は破滅するだけです」

「ふむ。承知したのであります。では、我々の主張から確認しましょう。西ポーランドの政変がソ連の謀略であることは明らかであり、その目的は我が国への侵略に違いないのであります。我々は先制自衛権を行使すると同時に、西ポーランドの中立化と非軍事化を要求するのであります」

「いきなり全面戦争に踏み切るのはやり過ぎだと、思わないのですか?」

「手をこまねいているうちに東西ポーランドが統一、ソ連軍が我が国の目前まで進出してくることは、絶対に許容できないのであります」

「では、停戦に応じるつもりは?」

「停戦している間にソ連に出し抜かれるかもしれないのであります。先程申し上げた西ポーランドの中立化と非軍事化が約束されない限り、受け入れられないのであります」

「そうですか……」

「申し訳ないことでありますが、妥協は成立しなさそうなのであります。ソ連が手を引くと公言するのなら、もちろん交渉の余地はあるのでありますが」

「ソ連を裁くことができない……。それは、常設国連軍の制度上の欠陥です。すみません」

「お互い、苦しいものでありますな」


 ドイツの視点に立てば、国連軍の要求に従って停戦したとしても、西ポーランドをソ連に取られる可能性が非常に大きく、国連軍と全面戦争に至るのと状況はそれほど変わらないのである。やはり人類は互いを信用することができないのだ。


「であれば……国連軍から提案があります」

「ほう? この状況を何とかできると?」

「はい。国連軍の名の下に、西ポーランドの中立化と非軍事化、それを約束させます」

「それは越権行為であると分かっているのでありますか?」

「あくまで、停戦を成立させる為に必要な措置です。国連軍の任務からは逸脱していません」

「そうでありますか。ならば当然、ドイツは停戦を受け入れるのであります」

「ありがとうございます」


 妙高の言葉は明らかに詭弁であった。国連軍は政治的な活動を行うべきではないという原則に反する行為だ。


 しかし国連軍は、これを強硬した。停戦監視団の名目で西ポーランドに国連陸軍を送り込み、西ポーランド政府に対し中立化と非軍事化を突きつけたのである。


 停戦は速やかに成立したが、ソビエト連邦は国連軍の越権行為であると強烈に非難した。しかし、この戦争を停戦に持ち込んだという実績を評価する国も多かった。


 結局、西ポーランドは社会主義政権を維持したまま、ドイツ・ソ連・東ポーランドと永世中立条約を締結。ポーランド人民は大国と国連軍の思惑に翻弄され、分断状態を固定されることになってしまったが、第三次世界大戦の危機だけは回避することに成功したのである。


 ソ連は表面上は国連軍を非難し続けたが、国際的に約束された中立地帯が成立するのは悪い話ではない。ゴルバチョフ書記長は徐々に姿勢を軟化させ、ついに西ポーランドの中立化を公式に承認するに至った。


 ○


 2016年、予想に反して西ポーランドと東ポーランドは連邦制による統一を実現した。経済的には一つの国であるにも拘わらず、西半分に一切の軍隊を置いてはならないという奇妙な国家が誕生した。


 他方、国連軍は更なる権力の強化を目指している。妙高は国連総会の許可なしでの出動、独自の停戦交渉を行う権利などを要求した。西ポーランド事変で常設国連軍による安全保障体制が崩れかけたことを受け、改革が必要だと各国に呼び掛けを行った。


 国連総会の許可なしでの出動を認める議案は否決されたが、停戦を履行させるにあたって国連軍に強力な権限を持たせることは承認を得た。常設国連軍は政治的中立性を放棄し、新たな形の国家になりつつあるのだ。


 ○


 時は飛び、2023年。


「妙高、緊急事態です。パレスチナのユダヤ人自治組織が、パレスチナ領内に大規模なテロ攻撃を行いました。これを受け、パレスチナ政府はユダヤ人自治区に攻め込むつもりのようです」

「ユダヤ人側からの先制攻撃ってこと?」

「ええ。先に仕掛けたのはユダヤ人です。パレスチナ政府には自衛権があります」

「戦争になったら、一方的な虐殺になる。それは止めないといけない。妙高達の目的は戦争を絶滅させることだから。たとえ外からの侵入者であっても、命の価値は変わらないよ」

「そう言ってくださって何よりです。直ちに臨時国連総会の開催を請求します」


 人類が人類である限り、常設国連軍の戦いに終わりはない。


 ○


 軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~


 完

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