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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
終章 少しだけ平和になった世界

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軍備更新

 1960年代後半に入ると、いよいよミサイルの時代が本格的に始まった。列強の海軍はこぞって新型の対艦・対空ミサイルの開発を推し進め、既存の艦艇に装備していった。主砲というものは最早、補助兵装としか見なされなくなっていた。


 国連海軍はと言うと、1966年からミサイル艦の整備を始めた。既存艦艇の改修を行いつつ、ミサイルを艦として設計された駆逐艦をアメリカと日本に発注し、各国に先がけて駆逐艦の近代化を成し遂げていった。


 一方で、巡洋艦以上の艦艇については依然として更新が行われていなかった。妙高や高雄は後部の主砲を撤去して一四式対空誘導弾を導入するなどの近代化改装を行っていたが、それだけで対応するのにも限界があり、国連海軍の主力は最新の駆逐艦達に移っていた。


 さて、最新のミサイル駆逐艦達は新規建造艦艇であって、その船魄は生まれたてのまっさらな存在だったのだが、最初に船魄の新世代艦への入れ替えが決まったのは空母であった。艦載機の大型化、それに伴う空母の大型化によって、今や翔鶴型やグラーフ・ツェッペリン級も軽空母に分類されるようになり、最も早く実用性を失っていた。


 そういう訳で1969年、国連海軍は日本に7万5千トン級通常動力空母を2隻、ドイツに同等のものを1隻発注した。原子力空母でないのは、国連軍が周辺国から支援を受けつつ戦うことを前提としているからである。


「新世代の超大型空母と言うからには、瑞鶴が一番艦になるのがよいでしょう」

「え、お姉ちゃんが妹になるってこと?」


 翔鶴と瑞鶴は新形超大型空母として生まれ変わることが決定していたが、どちらが一番艦になるかで揉めていた。


「ここでは瑞鶴の方が先任ですし、世界的にもあなたの方が遥かに有名です。新世代の主力空母の一番艦を飾るには、あなたこそが相応しいかと思いますよ」

「いやー、でも、やっぱり翔鶴お姉ちゃんが妹になるっていうのはどうもねぇ……」

「おい、我を勝手に三番艦にする前提で話を進めるな」


 グラーフ・ツェッペリンもまた新型空母として生まれ変わることになっている。日本とドイツには同じ設計図で発注している。


「別にあんたを一番艦にするのは構わないわよ。私達は翔鶴お姉ちゃんと私のどっちが上になるかで揉めてるのよ」

「そんなのどっちでもよかろう。とは言え、気持ちの問題は我らにとっては重要か」


 船魄が十分な能力を発揮するには、その艦が自分そのものであると強く自覚することが必要である。瑞鶴が不本意に一番艦になってしまうと、能力に支障が出るかもしれない。これは案外軽く見てはならない問題なのだ。


 妙高は、この問題についてはあくまで翔鶴と瑞鶴に決めて欲しいと思っている。


「対外的な印象は、全く気にする必要はありません。その上でお二人が納得できる方としてください。あ、でも、日本の方が早く完成しそうなのでツェッペリンさんは三番艦でお願いします」


 瑞鶴を一番艦にした方が確かに対外的な受けはいいだろうが、妙高はそういうことを気にしないよう伝えた。となると、やはり姉妹関係は今のままの方がいい。国連海軍の新型空母は翔鶴型空母と名付けることが内定した。


 既に日本から受け取っている6万トン級空母の瑞龍・白龍、それにエンタープライズと合わせて、国連海軍は主力空母と分類される空母を6隻保有することになる。


 ○


 翔鶴型空母の建造が始まってから暫く。大日本帝国とドイツから同時に、現在の瑞鶴とグラーフ・ツェッペリンを記念艦として保存したいとの要請があった。瑞鶴は旧鳳翔を除いて現存する(再建造ではない)日本最古の空母であるし、ツェッペリンはドイツが初めて建造した空母であり。歴史的な価値が大きいと判断されたのだろう。


 しかし、瑞鶴は抜け殻になった体であっても日本に譲渡することを拒否。折衷案としてハワイ真珠湾に永久保存されることが決定された。もちろん新しい艦体が完成した後の話である。


 一方、ツェッペリンは特に要請を拒否することもなく、キールで記念艦となることが決定された。二人とも妙高や高雄より早い引退であった。


 ○


 1970年に入り、薩摩をいずれ廃艦にする約束で懐柔された和泉は、その気配がないことに不満を募らせていた。そして帝国海軍からは別の説明が行われた。


「――薩摩はこのまま運用するだと? 約束が違うが?」

「薩摩は後部の主砲2基4門を取り外し、対空誘導弾などを装備する予定だ。戦艦としての機能はほとんど失われるようなものだろう。それで納得してくれないだろうか?」


 薩摩を大量の対空ミサイル運搬に特化するよう改装するのが帝国海軍の計画であった。やはり全長320mに達する薩摩の威容を捨てたくはないのだ。


「確かに、主砲が4門しかない戦艦など、死んだようなものだな」

「ああ。もちろん、君と摂津については、対空兵装の改装以外を行うつもりはない」


 和泉と摂津は時代遅れの高角砲と機銃を取り外し、一五式三十粍多砲身機関砲(ガトリング砲)や一四式対空誘導弾を各所に設けられている。


「…………分かった。認めてやる」

「よかった。引き続き連合艦隊旗艦として、よろしく頼む」


 和泉の指揮機能は現在でも重宝されている。戦艦の時代が終焉しても彼女が解体される日はそうそう来ないだろう。

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