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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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船魄達の戦後処理

 一九五九年七月二十六日、広島県呉市、呉海軍工廠。


 一方その頃。月虹から戦後賠償として引き渡された戦艦土佐は呉にいた。その船魄は当然ながら艦の制御から切り離されており、厳重に拘禁されているのだが、そこに岡本技術中将が訪れた。


 2人の警備兵に見守られながら、岡本中将は土佐と面会する。まあ土佐に拒否権はないのだが。


「やあ、土佐。元気にしていたかな?」

「ははっ、元気〜? 大嫌いな帝国海軍に捕まって、元気なわけがないじゃないですか〜」


 土佐ののんびりとした口調の中にも、確かな敵意が感じられる。


「まあ、それは仕方ないか」

「中将閣下は、何しに来たんですか〜?」

「君の今後について、話し合わなければならないと思ってね。まあ既に伝わっているとは思うが、君は優秀な船魄だ。今後とも我が軍で働いてもらいたい」

「嫌に決まってるじゃないですか〜。私が帝国海軍が大嫌いだって、分からないんですか〜?」

「その際は、無理やり戦わせるだけだ。ちょうど、船魄と艦の制御を外部から切り離す装置を開発していてね。それが完成すれば、反乱など不可能になる」

「例え反乱ができなくても、私が真面目に働くと思ってるんですか〜?」

「別に構わないぞ。その際は少々惜しいが、貴重な船魄の試料として君を解剖させてもらおう。君の脳味噌でも切り開いてみれば、より良い船魄を生み出す秘訣が明らかになるかもしれない」


 岡本中将がそんなことを言っていると、流石の土佐も引いている様子。


「ただ殺されるだけならまだしも〜、死体を弄ばれるのは嫌ですね〜」

「であれば、我が軍に協力してもらおう」

「そんな無理やり脅して戦わせても、意味ないと思いますけどね〜」


 岡本中将に曰く、船魄は強い自我を持っている方が強いらしい。無理やり脅して従わせても意味がないだろうと、土佐は真っ当な指摘をする。


「その通りだ。だから君には、帝国海軍を許して欲しいと思っている。和解しようじゃないか」

「和解? 私にした仕打ちが分かってない訳じゃないですよね〜?」

「もちろんだ。以前の君は、生まれた瞬間から処分されることが決まっていた。ワシントン海軍軍縮条約のせいでな。君には酷いことをした」

「それが分かってるなら、和解なんて無理だとは思いませんか〜?」

「既にワシントン条約を結んだ人間は全員死んだし、アメリカもイギリスも滅んだようなものだ」

「悪い奴らは全員死んだとでも言いたいんですか〜?」

「ああ、そうだ。君が怒りを向けるべき相手は、もうとっくに全員死んでいるんだ。君は意固地になっているだけじゃないか」

「そんなこと……ありませんよ〜」


 土佐は明らかに動揺を示した。どうやら図星だったらしい。


「もちろん、帝国海軍という組織として、君に対して謝罪したいと思っている。これは海軍大元帥のご意思でもある」

「……本気で言ってるんですか〜?」

「ああ、本当だとも。今一度、帝国海軍の船魄としてやり直してはくれないか?」

「……まあ、そこまで、言うなら。でも、それでいいんですか〜? 私は飛龍を騙し討ちで殺したのに?」

「それについては、君を色々と実験台に使わせてもらうということで手を打とう」

「そうですか〜。そのくらいなら別にいいです〜」


 という訳で、土佐は比較的穏当に帝国海軍に戻ることになった。


 ○


 さて、大問題を起こした船魄はもう一人。連合艦隊旗艦の戦艦和泉である。


 もしも彼女が薩摩を攻撃していなければアンティル諸島沖海戦の結末は真逆だったかもしれない。普通に考えれば反逆罪で即座に死刑というところなのだが、これまでの功績を鑑みて罪には問われていない。土佐と同様に軟禁はされているが。


 帝国海軍としては和泉に軍務に復帰してもらいたいところである。その為に、連合艦隊司令長官の草鹿大将は、横須賀の彼女を説得しに来ていた。


「君の気持ちは概ね分かっている。自分が世界最強の戦艦でないことが嫌なんだろう?」

「当たり前だ。和泉型戦艦は世界最強の戦艦だ。あんな醜い戦艦に負ける筈などない。今すぐもう一度戦わせろ」

「それは無理な相談だ。しかし……そうだな、何から話せばいいか迷うのだが……」

「何が言いたい? とっとと本題を話せ」

「分かった。端的に言って、戦艦の時代というものは終わりつつある。我が軍は対艦誘導弾を開発中だし、魚雷の性能も年々上がってきている」

「……だから何だ?」

「戦艦を戦闘に使うことは、もうじきなくなるだろう。今後の戦艦の用途は、艦砲射撃などの限定的なものか、或いは海上の司令部としての運用になる。その点、薩摩より君の方が、将来的な運用には向いているんだ」

「ほう? 薩摩を廃艦にするのか?」

「20年ばかりは現役だろうが、実用的な用途はないだろう。将来的に残るのは和泉型戦艦だけになると予想される。ああ、薩摩型二番艦の建造については、取り止めが決定されている」

「ははっ。それはいい。いいだろう。20年くらいは待ってやる」


 和泉型戦艦の海上司令部としての能力には一定の需要がある。将来的には和泉型戦艦以外の戦艦は全廃されるということで、和泉の機嫌はあっさり回復した。


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