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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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常設国連軍構想Ⅱ

「永遠平和など、そんな絵空事を国際会議で出されても困りますな」

「確かに、それを実現するのは実際には不可能でしょう。しかし、それを目指し続けることこそが、人類の最も尊い姿であるとは思いませんか? 事実、100年前と比べれば、世界はある程度マシになっています。それは人類の大多数が多少なりとも世界平和を望み、少しづつ前進してきたからです。アメリカ連邦は少しでも世界から争いが減ることを望みます」

「なるほど。面白い見解ですな」

「私から申し上げられることは、このくらいしかありません」

「左様ですか。もう少し腹の中を明かして頂いてもよいかとは思いますが」

「そう言われましても、アメリカ連邦はただ平和を希求するのみとしか、言いようがありません」


 現実的なことを言えば、常設国連軍構想は小国であるほど有利なものである。大国が武力によって中小国を従わせることが困難になるからだ。


 そして、アメリカ連邦は未だに第二次世界大戦前の経済的水準を取り戻せておらず、軍事力も壊滅している。アメリカはどちらかと言うと脅される側にいるのだ。それがアメリカが常設国連軍構想を強く支持する理由の一つである。


 もちろん、各国も内々にはそんなことは分かっている。特に拒否権を持つような大国は常設国連軍の設立を嫌がる可能性はある。もっとも、大国も大国で軍事費を削減できるという利点はあり、どういう態度を取るか予想するのは難しい。


「ひとつお聞きしたい。ドイツは常設国連軍構想を支持するのですか?」


 グロムイコ大臣はザイス=インクヴァルト大臣に直接尋ねた。グロムイコ大臣としては答えを濁されるだろうと思っていたのだが、意外にも明確な返答があった。


「はい。ドイツ国は、常設国連軍構想を支持します」

「ほう……。それは一体何故ですか? 我々のような大国にとっては、不利益も大きいと思われますが」

「もちろん、それは承知しています。しかし、我が国はソビエト連邦のように侵略を外交の手段として用いるつもりはありません」

「ユーゴスラビアとギリシャを侵略して未だに従属させているような国には言われたくありません」

「それは過ぎたことですし、それらの国々は我が国と対等の関係を結んでいます。それに対して、ソビエト連邦はつい最近カナダを侵略したばかりでは?」

「それは国連の要請を受けてキューバおよびメキシコの救援の為に出兵しただけのことです」

「それならば、カナダを未だに傀儡にしているのは説明がつかないでしょう」

「カナダは自ら革命を起こし王室を追放したのです。そして自らの意思で我が国と同盟を結んでいる」

「そんな詭弁が罷り通るとは思えませんが」

「ドイツこそ、英仏はともかくとして、それ以外のヨーロッパ諸国を力によって従属させていることは認めざるを得ますまい」


 ドイツとソ連が勝手に喧嘩を始めた。まあいつものことである。そこで止めに入ったのは池田首相であった。


「過去のことを気にしていては仕方がありません。重要なのは未来のことです。これからも覇権主義に拘るのか、それとも対話によって問題を解決する国際秩序を築き上げるのか。これはそういう選択なのです」

「そうは仰いますが、それなら日本はどうなのですか? 常設国連軍なるものを支持すると?」

「帝国としては複雑な心境ではありますが、ここは大局的な判断から、常設国連軍の創設を支持します。軍事力によって国際問題の解決を図る時代は終わりました。そして日本もアメリカ連邦やドイツと同様、世界平和の実現を希求します」

「中華民国を侵略したことを、なかったことにするおつもりで?」

「中華民国とは既に、必要な賠償責任は果たし、和解を済ませています。満州国の承認も得ました。暗い過去を忘れるべきではありませんが、それに縛られるべきではありません」

「なるほど……」


 これでソ連以外の拒否権を持つ国々が常設国連軍への支持を表明したことになる。イタリアと中華民国については、ドイツと日本の意向に真っ向から逆らうことはないだろう。


 これで常設国連軍創設について、賛成が多数派を占めたことになる。しかし拒否権を持つソ連が反対すれば、この議案は通らない。ソ連は本国と相談の上で最終的な意思決定をするということで、投票は一時見送られた。月虹の船魄達の出番も一度終わり、国連本部内の待機室に戻ってきている。


「ソ連が賛成してくれないと、どんなに賛成が多くてもダメなのよね……」


 瑞鶴は力なく呟いた。


「はい。例えソ連以外の全ての国が賛成しても、この提案は成立しません」


 高雄が冷静に答えた。


「そうよね……。こればっかりは、どうしようもないからねぇ……」

「瑞鶴さん、自信がないのですか……?」


 大和が尋ねる。


「そりゃそうよ。ソ連が何考えてるかなんてわかんないし」

「そ、そうですね……」

「でも、これが通ってくれないと、私達の地位は安定しない。大和の安全を保証できない……」

「はいはい。あんた達はよそで仲良くしてて」


 愛宕は瑞鶴と大和を追い払った。

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