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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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和平の成立

「元帥閣下……どうして邪魔をなさるのですか?」

「言った通りです。誰が相手であっても、このような卑怯な真似は容認できません。それに、もしも彼女達を殺すようなことがあれば、月虹とソ連の全面戦争になるとは思わないのですか? 彼女達は何の遠慮をする必要もなく、レニングラードを火の海にすることもできるでしょう」

「いいことを言うではないか! もう一度レニングラードを灰燼に帰してやろうぞ!」

「いやいや、その時はあんたは殺されてるでしょ」

「何だと!?」


 ツェッペリンは話をよく分かっていないようだが、彼女のことは気にせず瑞鶴と東條元帥は話を進める。


「もしもあなた方が彼女達を攻撃した場合、こちらもあなた方を撃たなければならなくなります。ソビエト連邦の国益とあなた方の生命を守りたいのであれば、銃を降ろす方がが賢明です」

「クッ……。しかし……」

「どうせフルシチョフはこれで失脚するんだから、責任取らされることはないでしょ」

「…………分かった。全員退け!」


 意外にも瑞鶴の一言がデレビヤンコ中将に響いたようで、ソ連兵はあっさりと引き上げた。瑞鶴達の護衛として日本の憲兵は残るようだが。


「東條こそ、こいつらで私達を脅したりしないでしょうね?」

「まさか。あり得ない。これは君達を守る為の兵だ」

「あ、そう。それじゃ、ソ連との交渉を再開しましょうか」


 日本が半ば月虹側にいるようなものなので、ソ連の立場は非常に弱い。ソ連側に要求を突きつける力はなかった。


「私達としては、日本と同様、プエルト・カベサス基地を攻撃した分の弔慰金くらいなら払ってやってもいいわよ。もちろんドイツに払ってもらうけど」

「その程度であれば、お安い御用であります」

「……分かった。その条件で、連邦は和平を受け入れる」

「どうも。これで、ようやく終わったわね……」


 日本とソ連が和平を受けいれ、ようやく公式に戦争状態が終結した。


 となれば次は、月虹の今後についての話を始めなければならない。本質的に国際社会のはぐれ者である月虹が今後とも生存し続ける為にどうするべきか、という話である。


 東條元帥がその話を切り出した。


「妙高、君達は国際連盟に所属することで、既存の国際秩序に自らを組み込むつもりのようだね」

「は、はい……。政府ではない国際機関は、現時点でも幾つかあります」

「国際赤十字社のようなものかね。とは言え、君達は慈善団体とは性質が違い過ぎる。非政府組織としても国際社会が受け入れるとは考え難いが」

「それでも……受け入れてもらえるよう、努力します」

「そうか。いずれにせよ、それは私の関与するところではない。私は君達との和平交渉をしに来ただけだ。国際社会と渡り合いたいのなら、国際連盟に話を通さなければならない」

「……そ、そうですね」

「帝国政府との連絡だけは、私が付けておこう。そこから先は、君達で頑張りたまえ」


 一度和平が成立した後は、東條元帥は月虹に協力的であった。月虹は帝国政府と連絡を取り、国際連盟総会に参加することを認められたのである。


 ○


 一九五九年七月十八日、大日本帝国神奈川県横須賀市、横須賀鎮守府。


 アンティル諸島沖海戦が終結してから2ヶ月。月虹の船魄達は太平洋を渡り、横須賀を訪れていた。瑞鶴・ツェッペリン・妙高・高雄・愛宕・大和・信濃、そして河内が横須賀港に入る。河内は万が一にも帝国海軍が攻撃してきた時に備えての保険である。


 陸に上がると、月虹の船魄達を出迎えたのは、儚げな様相の小柄な船魄であった。


「見たことないけど、誰かしら?」


 愛宕が直球に尋ねた。


「私は、白雪と言います。あなた方とは、何度か無線越しではお話しました」

「あー、白雪。吹雪の妹ね」

「愛宕……。少しは配慮というものを……」

「大丈夫です。前にも申し上げた通り、姉を、吹雪を殺してくださったことには、感謝しています」


 吹雪は完全に心が壊れてしまっていた。白雪は高雄達が吹雪を終わらせてくれたことに、感謝している。だが高雄は、実の姉妹を殺すことに不快感を持たざるを得なかった。


「本当に……吹雪さんは殺すしかなかったのですか? 他に道はなかったのですか?」

「そんなもの、あるならその方がよかったですよ。でも、何を試しても意味がなかった。もちろん岡本中将にも相談して、色々と試してもらいましたけど、吹雪の容態は何も改善しませんでした」

「そう、ですか。白雪さんの言葉を疑うつもりはありませんが……白雪さんは悲しくないのですか?」

「悲しいに決まってるじゃないですか。でも、これ以上姉を苦しませるのはもっと嫌だった。ただ、それだけです」

「白雪はこう言ってるんだし、この話を続けるのは意味ないと思うわよ、お姉ちゃん」


 珍しく愛宕が高雄を諭した。


「そう、ですね……。すみません、白雪さん。あなたの決断を軽んじるような物言いをして」

「気にしないでください。世間的に言ったら私達姉妹の方がおかしいんですから。さあ皆さん、大阪に行きましょう」


 白雪は本来の役割を再開し、一行を国際連盟本部のある大阪まで案内する。

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