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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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ソビエト連邦の変節

 休憩時間中、瑞鶴達はビスマルクに呼び出されていた。日本とソ連には話を聞かれない一室で、ビスマルクは話し出した。


「ソビエト連邦が非現実的な程に強硬な態度を取っている理由について、本艦の予想をお聞かせしようと思い、ここに皆さんをお呼びしたのであります」

「予想って、信用できるのかしら?」

「無論、本艦が勝手に考えていることではないのであります。我が国の情報機関が集めた情報から総合的に判断したものであります」

「あ、そう。で、理由ってのは何なの?」

「ソビエト連邦の最高指導者、ニキータ・フルシチョフ殿の権力基盤が揺らいでいるというのが、最大の理由でありましょう」

「随分前からそんな話を聞く気がするけど」


 フルシチョフがソ連の最高指導者になってから、ソ連は大きな戦争を三度も経験した。アメリカ戦争においてはカナダを共産化することに成功したが、その後の第二次南北戦争ではソ連が支援するアメリカ合衆国が崩壊し何の成果を得ることもできなかった。


「以前にも増して、フルシチョフ殿の権力基盤は不安定になっているのであります。今回も何の戦果も得ることができなければ、軍部の強硬派や党内の反フルシチョフ派が勢いづくことになりましょう」

「1回勝ったけど2回負けたらダメってこと? 世知辛いわね」

「政争とはそういうものであります」

「そんなのに関わらなくて本当に良かったわ。で、だからソ連は何でもいいから結果を欲しがっているって訳ね」

「そういうことであります。フルシチョフ書記長の意向が強く前面に出ていると言っていいのであります」


 フルシチョフ書記長は戦果を欲している。そうでもなければ自分が失脚させられる可能性が大きいからである。デレビヤンコ中将も、この無茶な交渉をさせられている苦労人なのだ。


「でも、だったらどうすればいい訳? 最高指導者がその気なんだったら、下っ端と幾ら交渉しても意味ないんじゃない?」

「それが困ったところなのであります。しかし、ソ連海軍単独では月虹に対抗することなど不可能。一体どうするつもりなのでありましょう」

「あんた……ビスマルクなんて名前してるんだから、何とかしなさいよ」

「ドイツはあくまで援軍なのでありますが……。この際は、フルシチョフ殿には大人しく失脚していただく他にないのであります」

「へえ? 何するの?」

「簡単なことであります。ソ連との交渉は打ち切り、彼らの望むように開戦するのであります。ソ連だけではどうしようとないと、ソ連の指導部に思い知らせてやりましょう。さすれば、ロシア人も妥協せざるを得なくなることでありましょう」


 ビスマルクの名前の割には随分と荒っぽい提案であったが、月虹の武力によって脅すというのが確かに一番確実な方法に思える。なお、不安そうな顔をしている妙高にビスマルクは「誰も沈める必要はないのであります」と安心させた。


 かくして、交渉が再開された。デレビヤンコ中将は依然として最低でもグラーフ・ツェッペリンを差し出すことという条件を変えなかった。瑞鶴はそれに対し、ソ連との交渉は不可能であると宣言した。


「――まさか本気で連邦と戦争するつもりか?」

「ええ、さっきからそう言ってるじゃない。主力艦隊でも何でもカリブ海に来ればいいわ。全員叩き潰してあげる。そんなことになったら、モスクワもレニングラードも丸裸になるわね」

「正気とは思えないな。やはり海賊と変わらないということか。……ドイツは、月虹の肩を持つつもりなのか?」

「我々でありますか? 無論、ソ連の敵はドイツの盟友なのであります。総力を挙げて支援するつもりであります」

「ほら、どうするの? 私達は全面戦争になっても一向に構わないわよ?」


 瑞鶴はデレビヤンコ中将を挑発する。中将は色々と考え込んでいるのか、暫く黙り込む。


「賊が相手とは言えこんな手は使いたくなかったが……。仕方があるまい」

「ん? 何?」

「申し訳ないが、君達を人質に取らせてもらおう」

「なっ……」


 デレビヤンコ中将が手を挙げて合図すると、途端に10名ばかりのソ連兵が会議場に乱入してきて、船魄達にAKの銃口を向けた。


「汚いぞ、ロシア人が!」

「ツェッペリン、お前の首を取れば、大きな戦果になる。すまないが死んでもらおう」

「何だと!? ふざけるな、野蛮人風情が!」


 騒然とする会議場で東條元帥は平静を保っていた。だが、デレビヤンコ中将がいよいよツェッペリンを殺そうとしたところで、静かに口を開いた。


「おやめになったほうが賢明でしょう、デレビヤンコ中将閣下」

「……元帥閣下? 何を仰いますか」

「帝国は、例え同盟国と言えど、かような野蛮を許すつもりはないということです」


 東條元帥がパンと手を叩くと、今度は日本兵が会議場になだれ込んできた。腕に分かりやすく憲兵の腕章をつけた兵が倍以上の数で現れ、ソ連兵に銃口を突き付ける。

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