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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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ソビエト連邦の態度

「へぇ。あんた達は、自分が勝ったと思ってるのね?」

「君達こそ、身の程を弁えた方がいい。君達は所詮、海賊に過ぎない。海賊ごときが国家を相手にして勝てた例は、歴史上一つとして存在しないのだ」

「ふん。ロシア人ごときが調子に乗りおって」

「ちょ、ツェッペリンさん……」


 妙高はデレビヤンコ中将にとんでもない悪態をつくツェッペリンを止めようとするが、ツェッペリンはまるで態度を改めるつもりがない。


「ロシア人共と、あとウクライナ人とベラルーシ人共というのはな、話が通じん野蛮人なのだ。力で言って分からせるのが最適なのだ」

「グラーフ・ツェッペリン……。我が連邦と戦争をお望みかな?」


 グラーフ・ツェッペリンは言うまでもなく、独ソ戦を引き分けに持ち込んだ張本人である。結果的に見れば引き分けではあるが、ツェッペリンが登場するまで圧倒的に優勢であった赤軍が一気に防戦一方に追いやられたので、ソ連軍としては極めて憎むべき相手である。ソ連人民最大の敵とはよく言われたものだ。


 デレビヤンコ中将も独ソ戦で赤軍を指揮していた身なので、ツェッペリンへの恨みは大きい。


「やれるものならやってみるがいい。ソ連海軍ごときが、我らに手を出せるものならな」

「よかろう。我が軍を舐めないでもらおうか。すぐにモスクワに打電して、主力艦隊をカリブ海に派遣してもらうことにしよう」

「主力艦隊だと? 笑わせるな。マトモな空母はウリヤノフスクとやら一隻しかおらず、最強の戦艦でも大和級に過ぎぬ貴様らなど、造作もなく捻り潰してくれるわ」

「ちょっと、大和を馬鹿にするのは許さないわよ!」

「今はそういう話ではなかろうが!」


 ツェッペリンが勝手にソ連に喧嘩を売るので、瑞鶴もビスマルクも大混乱であった。そして当然、デレビヤンコ中将は激怒している。


「私は極めて怒っている。であるから、和平の条件を変更する」

「何だ急に?」

「連邦は損害賠償としてグラーフ・ツェッペリン、お前の引渡しを要求する!」

「はぁ? そんな要求が通る訳がなかろう。なあ、瑞鶴?」


 ツェッペリンが瑞鶴に同意を求めるが、瑞鶴は真剣に考え込んでいる様子であった。


「おいおいおい、考え込むな。即座に否定しろ!」

「え、だって、あんたを渡せばソ連が手を引いてくれるんなら、安い契約だと思わない?」

「我を手放すなどあり得んだろ!」

「瑞鶴さん? 本気で言ってませんよね……?」


 妙高が泣きそうな声で尋ねた。


「ええ、流石に冗談よ。ツェッペリンはいてくれないと困るわ」

「よ、よかったです


 ツェッペリンもほっと安堵の溜息を吐いた。


「て言うか、あんたも勝手にそんなこと言っていいの? 粛清されない?」

「私は同志フルシチョフからこの交渉について全権を委任されている」

「それにしたって急な方針転換すぎると思うけどねぇ」

「私の心配をしている余裕があるのか? 交渉が決裂すれば、連邦と君達の全面戦争になるんだぞ?」

「全面戦争ねえ……」


 瑞鶴は冷静にソ連軍の戦力を思い出してみるが、ソ連軍だけなら大した脅威ではないと判断した。ドイツ軍が協力してくれなかったとしても、ソ連はドイツを警戒して一定の戦力を本土に置かざるを得ない。その残りが来たところで、月虹の戦力だけで撃退することは十分に可能であろう。


 故に、心配するべきは日本がソ連に協力する意思があるのかどうかだ。


「ねえ東條、仮にソ連が私達と全面戦争するなら、日本はソ連側に立って参戦するの?」

「しないだろう。そんなつもりは毛頭ない」


 東條元帥があっさり言い切ると、デレビヤンコ中将は驚きを隠せなかった。


「元帥閣下? それは連邦と日本との同盟に反することではありませんか?」

「日ソ同盟はあくまで、相互安全保障条約です。ソ連が攻め込む戦争に、日本が協力する義務はありません」

「連邦はあなた方の月虹への攻撃に最大限の協力をしました。その恩に報いる気はないのですか?」

「それについては、とてもありがたいことだと思っています。しかし、だからと言って、そう易々と新しい戦争を始めることはできません」

「なるほど。それが日本の意志と捉えてよいのですね?」

「ええ。もちろんです」


 日本はソ連に協力する気がないとはっきりした。瑞鶴はこれで勝利を確信した。


「私達はソ連海軍の被害への賠償も、グラーフ・ツェッペリンの譲渡も、受け入れる気はないわ。和平を受け入れないっていうなら、戦争も受けて立つわよ? さあ、どうするのかしら? もっと現実的な妥協案を見出した方がいいんじゃないの?」

「…………。これ以上の妥協など、連邦に降伏を迫っているに等しいものだ。君達は交渉をする気がないのか?」

「交渉する気がないのはそっちでしょ」


 デレビヤンコ中将にこれ以上妥協する気は全くないらしい。とは言いつつも、月虹との全面戦争などという決定を中将が独断で下せる筈もなく、議論は一向に進展しなかった。結局、モスクワに問い合わせるということで、会談は一時中断された。

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