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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十七章 恒久平和

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賠償問題

「土佐を引き渡せば、この件についてはそれで解決になるのかしら?」

「そういうことになる」

「あ、あの……そうした場合、土佐さんはどうなるのでしょうか……?」


 妙高がおずおずと尋ねる。両軍にかなりの被害を齎した元凶とは言え、妙高は船魄の身を案じざるを得ないのである。


「どうなるだろうね。まあ、殺すことはしないと約束しよう。その後の処遇は私の知るところではないが」

「よ、よかったです……。ですが、土佐さんを帝国海軍にそのまま受け入れるとは、思えないですが……」

「私は陸軍大将なのだ。そんなことを聞かれても困る」

「す、すみません……」

「しかし、話の通じる人間は連れてきたぞ。彼に聞くといい」

「どなたでしょうか……?」


 東條元帥が何やら部下に命令しているのを妙高は不思議そうに見ていたが、瑞鶴は誰が来るのか察したようで溜息を吐いていた。


「はぁ。あんたの顔なんて二度と見たくないと思ってたのに」


 それほど難しい問題ではない。颯爽と姿を現したのは船魄の生みの親こと岡本平八技術中将である。


「悲しいことを言わないでくれ。まあ、私に反抗するだけの自我を獲得していることは、嬉しくはあるがね」

「気持ち悪い奴ねぇ」

「あ、あの、瑞鶴さん、本題を……」


 妙高に少し怒られ、瑞鶴は「ごめん」と謝る。岡本中将もすぐに切り替え、先程の疑問に答えることにした。


「結論から言えば、土佐には帝国海軍で働いてもらうか、船魄としての任を解くか。その2つの道しかない」

「任を解く……?」

「ああ。これから普通の人間として暮らしてもらうという選択肢もある。もちろん、我々は鬼畜ではないから、それなりに生活の支援はするつもりだ」


 妙高や高雄が安堵している横で、瑞鶴は何とも歯がゆそうな表情を浮かべていた。だが、反対側に座っている岡本中将を除いてそれに気づいた者はいなかったし、岡本中将は特に気にする素振りを見せなかった。


「もっとも、それは私としては受け入れ難い選択だ。せっかくの上質な船魄を捨てるなどもったいない」

「上質な船魄、ですか……」

「決して君達を卑下している訳ではない。君達も十分に上質と言える部類だよ。こうして反乱を起こしているということは、立派な自我があるということだ」


 どんな形であれ強い自我を持っている方が良い船魄だというのが、岡本中将の思想らしい。まあ船魄の開発者が言うのだから、間違ってはいないのだろうが。


「反乱起こす方が上質なんて、頭おかしいんじゃないの? 東條に怒られるわよ」

「私は別に気にせんよ」

「だ、そうだ」

「ああ、そう……」


 瑞鶴は皮肉が不発に終わり、少し残念であった。


「ともかく、土佐には我が軍で働いてもらうつもりだ。ちょうど、船魄が反乱を起こした時に外部から船魄と艦の接続を切断できる装置を開発していてね。土佐にはその実験台になってもらおうと思っている」

「あ、そう……。なんか思ってたのと違うけど、そういうことなら土佐は勝手に持っていって構わないわよ」


 結局土佐を使い続けるのであれば、それは本当に賠償と呼べるのかと瑞鶴は思ったが、帝国海軍が満足しているのならわざわざ指摘することもない。この条件であれば妙高も納得してくれそうである。


 土佐について、本人に同意を得る必要なぞないという一点においては、月虹も日ソ連合艦隊も最初から同意見であった。よって直ちに土佐の引渡しが決定された。


「――これで賠償の話は済んだと思っていいのかしら?」

「いや、まだ話さねばならないことがある。こちらについては交渉次第だが」


 東條元帥は比叡が用意した料理を一旦どけて大きな地図を広げさせた。カリブ海とその周辺一帯の地図である。


「君達の手によって、帝国の海外拠点が甚大なる損害を蒙った。プエルト・リモン鎮守府もそうだが、特にグレナダ鎮守府の被害は著しい。死者も出ている」


 カリブ海における帝国海軍の拠点である両鎮守府は、月虹が事前に爆撃などで破壊していた。そこに保管されているであろう燃料弾薬が日ソ連合艦隊の補給になることを避ける為だ。


 実際のところ、主要な弾薬庫などは地下に設置されており、この攻撃にそれほどの効果はなかったのだが、警備に当たっていた兵士などに若干の人的被害が出ている。


「これについては、騙し討ちでも何でもないわ。戦争の過程で生じた、仕方ない犠牲よ」


 瑞鶴はこの件については損害を賠償するつもりはないと主張するが、東條元帥もそう簡単に譲るつもりはない。


「鎮守府への攻撃は、一方的な虐殺と言ってもいい。これは戦争とは言えない」

「そんな騎士道精神みたいなことを言われてもねぇ」

「人的被害のことは置いておいても、日本の同盟国の土地が攻撃を受けたとなれば、なかったことにはできない」

「だからグレナダを燃やした賠償をしろって?」

「その通りだとも。グレナダ鎮守府とプエルト・リモン鎮守府の被害について、賠償を求める」

「そう言われても……。こっちには出せるものがないんだけど」


 陸地への攻撃は月虹の正式な作戦として行った攻撃なので、生贄を差し出して解決することはできない。

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