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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十四章 アンティル諸島沖海戦Ⅱ

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特攻の結末

 瑞鶴からの機銃掃射や爆撃を受け、ソ連兵はウクライナの艦内から出ることすら叶わなくなった。数百の兵士が殺され、移乗攻撃を実施すること最早不可能になった。


『ふう。ようやく静かになったわね』

「そ、そう、ですね……」


 大和は辛そうに返事した。


『大和……人間を殺すことを躊躇してるの?』

「そ、それは、当たり前です……。船魄の命を守ろうとするのなら、人間の命も可能な限り守るべきです」

『可能な限りなら、殺さないようにしているわ。今回は仕方なかったのよ。あなたを守る為には、敵を皆殺しにするしかなかった』

「それは……そうですが……」


 瑞鶴がソ連兵を攻撃していなければ、大和が乗っ取られていた可能性が高い。勝てるのであれば可能な限り死人が少ない手段を採るが、人道の為に負ける訳にはいかないのである。


『大和さんは、大東亜戦争で大勢の人間を殺してきたのでは〜?』


 土佐が挑発するように尋ねてきた。


「あの時のアメリカ人は、一方的な侵略者でした。だから、殺すことに躊躇いはありません。もちろん、今のアメリカ人が相手であれば、大和は命を尊重します」

『なるほど〜。今の敵は侵略者ではない、と仰るんですね〜』

「元はと言えばあなたが始めた戦争でしょう……」


 土佐の他人事な態度に、大和は飽きれざるを得なかった。


『相手が侵略者だろうとなかろうと、殺される兵士は国に無理やり戦わされているだけ。そうは思わないのかしら?』


 陸奥が尋ねてきた。それは単なる興味本位の質問であったが、大和には重くのしかかる。


「そ、それは……。そうかも、しれませんが……」

『なら、大東亜戦争の時のアメリカ人だろうと、今回の敵だろうと、何ら違いはないんじゃない?』

『まったく、陸奥殿は大和殿を困らせて何がしたいのでありますか?』


 ビスマルクが助太刀なのかよく分からない介入をしてきた。


『私はただ、中途半端な考えはロクな結果にならないと思っているだけよ』

『では、本艦からアメリカ人とそれ以外の違いを提示しましょう』

『ふーん?』

『簡単なことであります。先の大戦時のアメリカは民主主義国でありましたから、戦争は全て国民の意思なのであります。故に、アメリカ兵は被害者などではなく、全てのアメリカ人が等しく加害者なのであります。アメリカ合衆国の人間を殺したことに道義的な問題はないのでありますよ、大和殿』

「そ、そうですね……」

『なるほどねえ。まあそういうことにしておきましょう』


 そんな話を呑気にしていると、ソビエツカヤ・ウクライナに動きがあった。


「主砲が動いてる……!」


 ウクライナの主砲が動き出したのである。まだ主砲や機関は無事なのだから、動かない方が不自然ではあったが。


『至近距離から撃つ気だ! 大和、先にやれ!』


 ティルピッツが叫ぶ。いくら大和でもこの距離から41cm砲弾を喰らえば装甲を破られることは間違いない。最悪の場合艦橋を吹き飛ばされて船魄が殺される可能性もある。


「クッ……やるしかない……」


 大和は既にウクライナに向けていた主砲の照準を微調整し、敵の主砲に向けた。そしてウクライナの一番、二番主砲塔に向けて主砲一斉射を行う。最も装甲が厚い主砲塔と言えど、この至近距離から格上の主砲に攻撃されては敵わず、どちらも砲弾が貫通して完全に破壊された。


 今度こそ、戦場は沈黙に包まれた。ウクライナは大和に突き刺さった状態で完全に動きを止めていた。


『で、こいつはどうする? いつ動き出すとも知れないが』

「ど、どうしましょうね……」


 ウクライナは完全に機能停止したとは言えない。特に機関は今でも生きているだろう。


『降伏でも呼びかければいいんじゃないかしら?』


 陸奥が提案した。


「そうですね……! これ以上戦うのは、無意味でしょうから」


 大和は早速、ウクライナに降伏を呼びかけた。但し、船魄のウクライナがそんなものを認めないのは明白だったので、上司のソビエツキー・ソユーズに話をつける。


『――同志ウクライナは武装解除し戦場を速やかに離脱する、か。お前達に鹵獲する気はないのか?』

「その必要はありません。勝負は決しました。もしも抵抗するのなら、ウクライナさんを沈める他にありません」

『……了解した。ウクライナには直ちに戦場を離脱させる。無論、貴艦らへの攻撃は一切行わせない』


 ウクライナは何もせず速やかに戦場から消える。その条件で交渉は纏まった。


「あ、ありがとうございます!」

『感謝するのはこちらの方だ。とは言え、手を抜くつもりはないぞ』


 ソビエツキー・ソユーズとしては、妹を失わなくて済むのでありがたい話であった。ソ連海軍としての面子も何とか守られる。


 ウクライナ本人は非常に嫌がっていたが、元より艦の制御から切り離されているので何もできなかった。かくしてソビエツカヤ・ウクライナは戦場を離脱し、動けない艦艇を保護すると宣言しているキューバに向かった。


 キューバに足を踏み入れれば、安全を保証される代わりに武装解除されキューバ政府の管轄下に置かれることになり、この海戦に再び参加することはできなくなる。

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