表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十二章 通商破壊戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

657/766

バミューダ諸島小艦隊

 一九五九年四月十九日、バミューダ諸島ドイツ軍シュロス基地。


 日ソ連合艦隊は短期決戦を諦め、大西洋の制海権を確保することを優先した。帝国海軍が取った最初の作戦は、ドイツ本国からカリブ海への輸送経路を遮断することであった。


 ほとんど帝国海軍の艦艇からなる小艦隊は、ドイツ海軍のシュロス基地があるバミューダ諸島の東方200kmほどに展開している。輸送船団が来るのであればバミューダ諸島に立ち寄る可能性が非常に高いからである。そうでなくとも、この辺りは敵の予想進路の中央に位置し、索敵には持ってこいなのだ。


 月虹は帝国海軍の動きをドイツの人工衛星によって素早く察知していた。そして帝国海軍に先んじて、機動力のある部隊をシュロス基地に配置している。


 月虹側の主力となるのは、武尊型大巡洋艦三番艦の瑞牆とシャルンホルスト級戦艦二番艦のグナイゼナウである。どちらもその実質は巡洋戦艦と称される艦であり、通商破壊や海上護衛に特化した艦と言える。


「まったく、君達と組むことになるなんて、甚だ不愉快だよ」


 と、グナイゼナウは妙高・高雄・愛宕に対して言い放った。シャルンホルストを殺した彼女達に対しての恨みは、未だ晴れていない。当然のことではあるが。


「ごめんなさい……。妙高は、ただ謝ることしかできません……」

「お言葉ですが、戦争において相手を殺すというのは当然のこと。それをそこまでお恨みになるのは、筋違いかと存じます」

「そうよそうよ。お姉ちゃんの言う通り、いつまでもねちっこいのよ」


 愛宕はともかく、高雄もグナイゼナウに対して挑戦的であった。妙高は予想外の高雄の態度にあたふたすることしかできなかった。


「仕方なかったとでも言いたいのかな?」

「はい。それが戦争というものです。お悔やみ申し上げはしますし、わたくし自身も心を痛めてはいますが、この場において相応しくないのはグナイゼナウさんの態度の方かと」

「ちょっと高雄、そこまでは……」

「いいのです。こういうことは、ハッキリさせておくべきなのです」


 高雄が凛々しく言い切ると、グナイゼナウはすっかり疲れ果てたかのように溜息を吐いた。


「はぁ……わかってるんだよ。私の方が間違ってるってことはね。この話はもう終わりにしよう」

「グナイゼナウさん……」

「これ以上、私的な話はしないようにしよう。作戦に必要な情報交換のみだ」

「は、はい……」


 和解できそうな空気もなく、妙高は項垂れることしかできなかった。が、そこに空気を読まずに参入してくる少女が一人。


「あら、私達も私的なお話はしちゃダメなのかしら?」


 不敵な笑みを常に浮かべた少女、プリンツ・オイゲンである。オイゲンに捕捉されると、グナイゼナウはまたしても呆れ果てたような溜息を吐いた。


 月虹に対する恨みに比べると、オイゲンとザイドリッツに対する恨みは大したものではない。話に応じる気はあった。


「よくもまあ、裏切ったクセに平然と私の前に現れられるね」

「ドイツ海軍が悪いのよ。リュッツオウをソ連に売るなんて馬鹿げたことをするのがいけないの」

「何年前の話だと思っているんだ」

「19年前よ」

「……私達はその時点で存在すらしていない。そんな過去のことで裏切りを正当化できるとでも?」

「時間なんて関係ないわ。ドイツがリュッツオウの奪還に向けた動きを見せない以上は、ドイツに戻るつもりはないわ」

「正気とは思えないね。まあ、今更戻ってこさせるつもりもないけど」

「それは助かるわ。仲良くしましょうね、グナイゼナウ?」

「君達は私の部下でしかない。仲良くするつもりはない」

「あらあら。つれないわね」


 と言っていると、更に乱入してくる少女が一人。何を考えているかわからない瑞牆である。


「そこの重巡洋艦達はボクの部下で君の部下じゃないよ?」


 月虹側通商破壊艦隊の旗艦は瑞牆であった。グナイゼナウはその配下なのである。


「……そうだったね」

「同僚なんだから、仲良くした方がいいと思うよ」

「まったく、瑞鶴とビスマルクはどうして君みたいな問題児を旗艦なんかにしてるんだ」


 瑞牆は月虹を利用して皇道派の昭和維新を実行しようとした。瑞鶴にとっては非常に不信感のある相手の筈だ。


「まあ、ボクとしても月虹に負けられたら困るから、裏切るようなことはないだろうと思われたんだろうね。それに、船魄を可能な限り殺さないようにしたいっていう思いは、瑞鶴と同じだからかな」

「であれば、私の方が適任だと思うけどね」

「自分でそれを言うのかい? まあ、単純にドイツ海軍に主導権を握られたくないって話だろうから、多分ボクより君の方が素質はあると思うよ」

「そう言われると、それはそれで腹が立つな……。君の命令に背くつもりはないが」

「ははっ、助かるよ」


 この高速機動艦隊、船魄同士の関係が非常に複雑なことになっていることは言うまでもない。しかしそんな状況でも、実戦までの時間はほとんど残されていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ