表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第三十一章 最終決戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

647/766

第二次リオデジャネイロ沖海戦

 一九五九年三月二十七日、ブラジル、リオデジャネイロ州沖合。


 大和・土佐・天城を中心とする艦隊はギアナを出撃し、ティルピッツの言う通り、日ソ連合艦隊の目を避けてまんまとリオデジャネイロへ到達することに成功した。流石にリオデジャネイロから200kmほどにまで近づくと気付かれたが、十分に奇襲に成功したと言えるだろう。


 リオデジャネイロから緊急で出撃した守備隊には、やはりと言うべきか、武蔵がいた。


『やっぱりいましたね〜、武蔵さん〜』

「……はい。そうみたいです。大和は、戦わなければなりません」

『少し前に武蔵さんと御一緒に戦って、心苦しくはあるんですが〜、しかたないですよね〜』


 先のアメリカ戦争、日米の艦隊決戦となった北太平洋海戦において、武蔵・土佐・天城は遊撃部隊として共に戦った仲である。


「あなたは……。と、ともかく、敵に武蔵以上の戦力はいないようです。大和が武蔵と戦います。皆さんは、周辺の敵艦を牽制してください。指揮は、土佐さんに任せます」

『牽制、なんですか〜?』

「はい。可能な限り……誰も殺さないようにしてください」

『私にそんなことを頼むなんて〜、無理な話な気もしますけどね〜』

「その時は……その時に、考えます。序列として、あなたが一番相応しいでしょう」

『まあ、そうですね〜。せっかく私を頼ってくれたので〜、可能な限り頑張りますよ〜』

「……はい。よろしくお願いします」


 月虹と日本を戦争に引きずり込むという目的を果たした以上、土佐が余計なことをする可能性は低いと、大和は判断した。


 そうして土佐に周辺の警戒を任せつつ、大和と武蔵は、ついに出会った。武蔵から大和に通信の呼び掛けがあった。大和はすぐさま応じた。


『まさか、このような場所でこのような形で姉上とお会いするとは、思わなかったのであります』


 武蔵は淡々と言う。


「……はい。大和も、こんな形であなたと再開したくはありませんでした。武蔵……」

『まさか姉と妹が同時に帝国を裏切るとは。大和型は今後、帝国にとって汚点になることでありましょう』

「……それは、わかっているんです」

『であれば、今からでも帝国海軍に帰参するのが、せめてもの償いでは?』

「それでも……大和は、瑞鶴さんを見捨てることはできません。それに、最初に大和を裏切ったのは、日本の方です。瑞鶴さんは、大和を守ってくれたんです」


 それは大して意味のない反論だった。瑞鶴の行動はそれなりに同情を得られるものではあったが、果たして脱走が最も良い選択肢だったのかと言われると、必ずしも肯定はできない。大和は自分自身を納得させる為にそれを主張しているに過ぎなかった。


『結局のところは、感情論でしかないのであります』

「……ははっ。初めて会うというのに、武蔵にはお見通しですね」

『帝国海軍を裏切るような姉は、最早姉妹などではないのであります。無論、妹もでありますが』

「聞くまでもありませんが……大和達に加勢してくれるつもりは、ありませんよね……」

『何を馬鹿なことを。大恩ある祖国を裏切るなど論外であります。そして、姉妹から二人も裏切り者を出した責任として、私は姉上を沈めるのであります』

「覚悟はしていたつもりでしたが、いざとなると……妹と殺し合いをするのは、心苦しいです」

『本当にそう思っているのなら、月虹などから抜ければいいのであります』

「それは無理なんです。大和にそれはできません。ですから、そこを退いてもらいます、武蔵」

『ここを通す訳にはいかないのであります』


 かくして、戦端が開かれる。武蔵以外の艦艇は、土佐と天城を警戒しているのか、後方で待機して動かない。まさに大和と武蔵一騎打ちであった。実際、そのどちらかが戦闘継続不能になれば、勝負は決まったようなものだろう。


 一先ずは35kmほどの距離で同航戦に移行し、主砲を全て相手に向ける。


「……主砲、一斉射」


 艦橋で、大和は力なく言った。


 大和は9門の主砲で一斉射撃を行う。武蔵もそれを見るとすぐさま一斉射撃を開始した。大和も武蔵も、わざわざ交互撃ち方をして狙いを定める必要はない。最初から砲門は敵を向いている。


 大和の放った砲弾は5発が命中、武蔵のそれは3発が命中した。共に艦の中央部で爆発が起こり、表面の副砲や高角砲が吹き飛ばされるが、艦の枢要部に損害は全くない。


「同型艦で撃ち合っても、装甲を貫通するのは困難……。有効な打撃を与えたいなら、もっと近づかないと……」


 大和型は通常の交戦距離で大和型の攻撃に十分耐え得る装甲を持つ。大和型同士で普通に撃ち合っていても決着はつかないだろう。勝敗を決するには、もっと近づかなければならない。


 武蔵もそれを察したのか、砲撃を一度止め、急速に距離を詰めてくる。大和も当然、距離を詰める。


「距離、およそ20km……。まだ有効打を得られる距離ではありませんが……しかし、あなたならば……。ごめんなさい、武蔵」


 大和はその距離で再び主砲一斉射を行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ