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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第二十八章 海上補給線

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援軍の到着

『大丈夫かい、ウリヤノフスク?』


 ヴェールヌイが世間話でもするような調子で尋ねてきた。ヴェールヌイには人の心がないのではないかと思える時がしばしばある。


「ひ、飛行甲板は、使えなくなった……。修理が、必要……本格的な……」

『修理か。近場だとワシントンまで逃げるしかなさそうだけど』

「……でも、私は、グナイゼナウから、に、逃げ切れない……」

『確かに、それもそうだね』


 グナイゼナウの速度はウリヤノフスクを上回っているし、彼女を足止めできるような戦力は存在しない。ウリヤノフスクはここで降伏する他にない。


「わ、私は……鹵獲される訳には……。だから、自沈、しないと……」

『まあまあ。ちょっと待とうよ。そのうち、援軍が来てくれる筈さ』

「ま、間に合うか――」


 と、その瞬間であった。ウリヤノフスクに通信が入った。


『同志ウリヤノフスク! 大丈夫!?』


 通信機から飛んでくる煩い声は、ソビエツキー・ソユーズのものであった。


「そ、ソユーズさん……。私は、生きては、いるけど……」

『どうしたんだ?』

「その、飛行甲板を、撃たれたので……」

『そんなことか。沈む危険はないんだな?』

「ま、まあ……。グナイゼナウが、ま、また撃ってくるかも、しれませんけど……」

『そんなことは許さん。我々はもうすぐそこまで来ている。安心してくれ』

「そ、そう、ですか……。は、早いですね……」

『ドイツ海軍に動きがあると知り、急行してきた』


 グナイゼナウ達が動く予兆を掴んだゴルシコフ艦隊は、快速のソビエツキー・ソユーズ級戦艦を急行させた。ハワイ級戦艦は速力がかなり劣っているので置いていく他になかった。ソユーズ達は全速力で航行し、ウリヤノフスクを助けに来たのだ。


 ハワイ級やグラーフ・ローン級を相手にしては心許ないソユーズ級であるが、グナイゼナウ相手ならば単騎でも余裕である。


 ○


『まさか、こんなに早く援軍が来るとはね……』


 追いつかれた側のグナイゼナウは、溜息を吐いた。


「どうする? 連中と戦う?」

『馬鹿なことを言うんじゃない。相手がソユーズ一隻だけでも勝てるか怪しいんだ。三隻もいたら勝てる訳がない』

「当たり前ね」

『速やかに最大戦速でこの場を離脱する。ウリヤノフスクの無力化という目的は果たしたんだ。これ以上は望まなくていい』


 可能ならばウリヤノフスクを降伏させて鹵獲するなり自沈させるなりをしておきたかったが、数ヶ月単位で使い物にならなくしただけで大戦果だ。


 グナイゼナウは戦闘を直ちに中止させて撤退を命じた。ペーター・シュトラッサーもウリヤノフスクの艦載機を牽制しながら戦場を離脱する。


「リュッツオウを、また見失うことになるのね……」


 プリンツ・オイゲンはそう呟く。


『せっかく会えたのに、すまない。だが今は、どうしようもないだろう?』

「そうね。……いっそソ連に鞍替えするのもありかしら」


 リュッツオウと一緒になるだけなら、それが一番手っ取り早いかもしれない。


『ちょっと、オイゲン!?』

『姉さん、流石にそれは私も賛同しかねます』

「冗談よ。何を真面目に受け取ってるの、あなた達?」

『冗談にしても、それは言い過ぎだよ。軍法会議送りになってもおかしくないからね』

「……そうね。ごめんなさい」

『……そう。とにかく、急ぐんだ』


 オイゲンが素直に謝ってきて、グナイゼナウは驚いた。


 撤退する上で問題が生じることはなかった。ソユーズ級よりグナイゼナウの方が早いので、追いつかれることはない。クロンシュタット級二番艦セヴァストポリだけは脅威になる可能性があったが、特に追いかけてはこなかった。


 ミッドウェイは取り逃したが、ウリヤノフスクは無力化することに成功した。特に犠牲は出ていない。この局地戦はドイツ海軍の勝利に終わったと言えるだろう。


 ○


 さて、グナイゼナウ達が撤退している最中のこと。ウリヤノフスクは、タリン(リュッツオウ)に電話を掛けていた。


「た、タリン……。その、姉妹の人達と、お別れ、だけど……」

『うん、そうだね』


 タリンの声は凍てつくように冷たい。感情を感じさせないという点ではミッドウェイと同じだが、タリンはより刺々しいと、ウリヤノフスクは思う。


「お、お姉さん達と、会いたい……?」

『分からない。私は、姉妹の船魄の姿も声も知らない』

「せ、船魄は軍事機密、だからね……」

『もしも会えたら、どうするかな。でも、ドイツに戻りたいとは思えない』

「そう、だよね……。ど、ドイツが、あなたを売ったから……」

『そうだね。私は、売り払われたんだよ。ドイツも、ソビエトも、全部嫌い』


 声音を変えず淡々と言うが、どこか憎しみを感じさせる声だった。


「わ、私も、嫌い、なのかな……?」

『ウリヤノフスクさんを? ……好きとも嫌いとも思ったことはないよ』

「い、一番辛い答え、かも……」


 タリンに興味がないと宣言され、ウリヤノフスクは落ち込んだ。

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