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船魄達の動向Ⅱ

 さて、USAが各方面に工作をしている間、エンタープライズとケネディ中将らが月虹の海上要塞を訪れた。瑞鶴はエンタープライズとは二度と会いたくないと思っていたが、こんな状況では仕方ないということで、海上要塞に入ることを許した。


 まずはケネディ中将と瑞鶴が少数の護衛だけを伴って面会した。


「――確認だが、我々と君達の同盟に変更はないということでいいかな?」

「ええ、そうね。別に回りくどい聞き方はしなくていいわよ。私達は民主党のクズ共に手を貸すつもりなんて全くないわ」


 大東亜戦争について、日本人の恨みの大半はルーズベルト個人に向いているが、戦争を支持した民主党にもそれなりに向いている。それは瑞鶴など船魄達にも同様である。大東亜戦争に参戦した瑞鶴であれば、他の船魄よりも憎しみは強いだろう。


「それは朗報だ」

「民主党をぶち壊すなら、喜んで協力するわよ。せっかくだしトルーマンを機銃掃射でぶっ殺したいわね」

「機会があれば、君達にその手柄を譲るとしよう。だが……少し言い難いことがあってね」


 ケネディ中将は軽く苦笑いする。


「何よ?」

「うちのエンタープライズが我儘なんだ」

「いつものことじゃない」

「それはそうなんだが、いざとなったらUSAに寝返ると言って、私達を恐喝しているんだ」

「大した脅しねえ。確かにあいつが敵になったらかなり面倒だけど」

「ああ。万が一にも、エンタープライズが裏切るようなことは避けなければならない。だから我々としては、彼女には可能な限り譲歩せざるを得ない」

「あ、そう。それが私達と何の関係があるの?」


 ケネディ中将がやたら回りくどく話すので、瑞鶴はとっとと結論を伝えろと迫る。


「それは、彼女に直接聞いた方がいいだろう」

「……まあ、いいけど」


 ケネディ中将はエンタープライズを連れてきた。エンタープライズはニヤニヤと笑みを浮かべながら瑞鶴の前に座る。瑞鶴は不快そうに睨みつけるが、エンタープライズはまるで意に介さない。エンタープライズは部屋から人間を全員追い払う要求し、ケネディ中将達は素直に出ていった。


「――あんたの我儘に付き合えって言われたんだけど、何なの?」

「あら、そこまで聞いてらっしゃるんですか。では話が早いですね。私からの要求は一つです。私を抱いてください、瑞鶴」

「はぁ…………。やっぱり、そんなこと言われる気がしたわ」


 瑞鶴は呆れ果てたと言わんばかりに盛大な溜息を吐くが、エンタープライズに撤回する気など毛頭ない。


「簡単じゃないですか。あなた方が失うものは何もなく、私が味方になるんですよ?」


 この取引は非常に瑞鶴に有利である。エンタープライズという世界最強の空母がタダ同然で味方になってくれるのだから。


「それはそうだけど……」

「あら、瑞鶴は大和さん一筋なんですか?」

「いや、まあ、そんなこともないんだけど……」

「でしたら問題ないではありませんか」

「そんな訳ないでしょ。あんたなんかとするなんて嫌に決まってる。少しは人の気持ちくらい考えろ」

「そうですか……残念です。では仕方ありませんね。あなたのことは動けなくなるまで壊してから私のものにするとしましょう」

「……そういう気持ち悪い発言は本当にやめてもらいたいんだけど、ちょっと待って。考えさせて」

「ええ。結論が出るまで幾らでも待ちますよ」


 エンタープライズが敵に回るのは、非常に好ましくない事態だ。国連軍がアメリカを叩き潰した時と違って、味方は少ない。彼女の存在は戦争の行く末を大きく左右するだろうし、月虹の仲間に被害が出る可能性も十分に考えられる。かつて大和を沈めたエンタープライズより、今のエンタープライズの方が遥かに強力なのだ。


 自分の個人的な感情で仲間を危険に晒していいものかと、瑞鶴は思う。エンタープライズへの嫌悪は著しいが、彼女の要求を拒否して危険に晒されるのは大和なのである。大和を守る為ならば、気色悪いことの一つや二つ、どうということはない。


「やっぱり……あんたの我儘を聞いてあげるわ」

「ふふ、嬉しいです、瑞鶴。あなたならそう言ってくださると思っていました」

「こんなことして、あんたは満足するの? 私があんたを好きになることなんて絶対にないわよ」

「分かっています。それでも、上辺だけでもいいから、あなたが欲しいんです。さあ瑞鶴、ベッドに行きましょう?」

「いいんだけど、抱かせろじゃなくて抱けなの?」

「ええ、そうです。意外ですか?」

「……そうでもないわね」


 エンタープライズは元より瑞鶴に殺されて喜んでいる変態であるから、それほど意外なことではない。


「あんたのことだから、痛くされる方が好きなのかしら?」

「ふふ。どうでしょう。痛くされても構いませんが」

「あっそう。どうなっても知らないからね」

「情熱的ですね、瑞鶴。そういうところも好きですよ」

「何言ってんの?」


 かくしてエンタープライズの望みは叶い、月虹はエンタープライズという強力な味方を手に入れた。

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