表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
541/605

各国の対応

 国連総会は意味なく終結した。ソ連がUSAの背後にいることが世界中に知れ渡っただけで、結果的には時間の無駄であった。池田首相は早々に帝都に戻り、今後の対応を協議する。


「私としては中立を保ちたいと思うのだが、何か意見はあるかね? 忌憚なく言って欲しいんだが」

「理由をお聞かせ願えますかな?」


 重光葵外務大臣が尋ねる。もっとも、外務大臣自身はそんなこと言われるまでもないだろうからが。


「端的に言えば、どちらにも味方する理由がない。民主党の合衆国に手を貸すなど論外だし、とは言え連邦が崩壊してくれればドイツの影響力を削げるというものだ」


 そもそもアメリカ連邦は日本にとって仮想敵国の一つである。わざわざ味方をする理由はない。しかしアメリカ合衆国が勝利したとして、日本の友好国になってくれるかと言えば、それは絶対にあり得ないだろう。


「仮に合衆国が勝利した場合、アメリカがソ連の勢力圏に入ることになります。これは危険なのでは?」

「合衆国が連邦を滅ぼすに至るとはとても考えられないが、仮にそうなりそうなら、軍事介入してアメリカの一部を我が国の属国にするしかないだろうね。世界が三国志になるが、それならそれで安定するというものだ」

「まさに天下三分の計ですな」

「仮定の話だがね」


 池田首相は最悪の場合、ソ連・ドイツと共にアメリカを三分割するつもりである。アメリカは超大国の地位から完全に脱落し、この三国による冷戦が始まることだろう。


「ではアメリカ連邦が勝利しても構わないというのが首相閣下のお考えですか?」


 神重徳軍令部総長は問う。


「ああ、そうだ。その時は、何も変わらないというだけだからね。まあ連邦が勝ったとしても、アメリカの国力は更に落ちることになる。我々としては好都合じゃないか」

「左様ですか。それでよろしいかと」


 アメリカ合衆国が敗北寸前ともなれば、ソ連は合衆国を見捨てて最初から関わっていないフリをするだろう。そうなれば日ソ同盟にも影響は出ず、ただアメリカの国力が弱まるだけである。どちらに転んでも帝国は利益を得ることができるのだ。


 ○


 さて、ベルリンに帰還したゲッベルス大統領も会議を開いていたが、その内容は些か受動的なものであった。


「大統領閣下、イギリス政府より、アメリカ連邦の救援に向かうとの通達がありました」


 イギリスがドイツに事前の承諾も得ず、派兵を決定したのである。


「ははっ。確かに、女王陛下はかなりお怒りだったからな。無理もない」

「このまま追認ということでいいんですか、閣下?」


 グデーリアン元帥が尋ねる。


「まあ、いいじゃないか。イギリスは対等な同盟国なんだ。僕達にそれを止める権利はない」

「そうは言いますがね、実際のところ、イギリスはドイツの属国と言っていいでしょう。イギリス単独では国を維持できないのですから」

「そんなことを公の場で言うものじゃないと思うが、別にいいじゃないか。どの道、僕達としてはアメリカ連邦を支援する以外の選択肢はないんだ」


 アメリカ連邦はドイツの同盟国であるし、民主主義の狂信者とドイツが相容れる訳がない。ドイツに選択肢はないも同じであった。


「元帥は、何か懸念するところがあるのか?」

「イギリスが独立志向を強めるのは好ましくないかと」


 ドイツに頼らずイギリスだけで戦果を挙げたという事実がイギリスの独立心を刺激することは間違いない。外交上でもイギリスがドイツに対して大きく出てくる可能性はある。


「その懸念も分からないことはないが、寧ろイギリスには多少の独立性を持ってもらった方が、僕達の負担が減るというものだろう」

「それは……長期的にそのような体制を閣下が望んでいらっしゃるなら、構わないかと」


 ヨーロッパ全てを属国化することなど、ゲッベルス大統領は望んでいなかった。余りにも広大な領土は行政の非効率を招くだけである。寧ろ彼はヨーロッパ諸国が対等な関係を築く方が合理的だと考えている。


「それに、主力はイギリスでも、ドイツが多少なりとも参戦しておけば、イギリスだけで事を成したという事実は残らない」

「プロパガンダとしては、まあ、それでいいでしょう」

「僕の考えはこんな感じだ。後は軍事的な話を詰めるだけというところだが、何か意見はあるか?」


 大統領が意見を求めると、デーニッツ国家元帥が名乗りを挙げた。


「海軍としては、大統領閣下のご意見に基本的に賛同します。本土に駐留する艦隊を動かさず、イギリスにアメリカを支援させれば、ソ連に対して圧力をかけ続けことができます」

「なるほど、確かにそれはいい案だ」


 ドイツ本土にはドイツ最大の艦隊、ビスマルク率いる大洋艦隊第一隊群が置かれている。ソ連対策のこの艦隊を動かさなければ、ソ連もマトモに海軍を動かせない。バルト海の制海権を失うことは共産党が許さないだろう。


 かくしてヨーロッパ・アーリア人連合は、既にアメリカ方面にいる大洋艦隊第二隊群とイギリス海軍(ついでにフランス海軍も)を派遣することを決定した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ