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夜襲 雷撃戦

「妙高の妹達って言うのに、何をしてるんだ……」


 那智達は一向に来る気配がなく、峯風は焦っていた。


『ふふ。何を焦ってるのさ、妹よ』

「焦るに決まってるだろ。時間をかければ確実に敵の増援が来る。戦艦が他に現れたら私達は一瞬で壊滅するぞ」

『まあねー。そんなとこよりさ、峯風はまだ妙高に対する情みたいなのは残ってるんだね』

「残っていて悪いか? ……行方不明になっているだけで、沈んだ訳じゃない」


 もちろん妙高が帝国海軍を裏切って反抗し続けているとは言えないので、公的には妙高や高雄は行方不明ということになっている。


『へー、そう。行方不明ねえ』

「何か言いたいことでも?」

『何でもないよ。まあ私達もそろそろ、敵に一撃加えるとしようか』

「作戦でもあるのか?」

『敵の軽巡洋艦を魚雷で沈めよう。護衛のない戦艦なんてどうとでもなるよ』

「巡洋艦相手にせっかくの魚雷を使ってもいいのか?」


 魚雷の本数は非常に限られている。重巡洋艦がいれば砲撃で容易に沈められる軽巡洋艦相手に消費してしまうのは勿体ないと、一般には考えられる。


『私達以外にも魚雷を持ってる艦はたくさんいるし、何とかなるよ』

「……そういうことにしておこう。だが相手は軽巡洋艦だ。近付くのは危険じゃないか?」


 駆逐艦にとっては戦艦より軽巡洋艦の方が危険である。戦艦の鈍重な主砲など簡単に回避できるが、軽巡洋艦の軽快な主砲を回避し切るのは難しい。巡洋艦の主砲は元より駆逐艦を沈めるのが主目的であるから、当然のことではあるが。


『島風型駆逐艦が敵の大砲に怯える必要なんでないよ』

「他の二人は吹雪型だろうが」

『うーん、まあ、何とかなるよ、きっと。じゃあ皆で突撃しよう』

「どうなっても知らないからな……」


 不安しかないが、峯風は島風の提案に乗ることにした。水雷戦隊旗艦の阿賀野も島風に許可を出したので、作戦はすぐに実行される。敵の駆逐艦は既に軽巡洋艦が大方沈めているので、軽巡洋艦までの道を遮るものはない。


 峯風と島風、それに吹雪型の吹雪と白雪は全速力を出して、一気に敵との距離を詰める。魚雷の射程自体は50kmあるのだが、現実的に命中を期待したいのなら遠くとも10kmくらいに近寄らなければならない。


『敵まで500mくらいにまで近寄ろうか。そうすれば絶対に当たるよ』

「敵の砲撃を躱せるか?」

『何とかなるよ。皆歴戦の駆逐艦だしね。多分』

「……まあいい」


 敵の戦艦は2隻いて、その右と左を軽巡洋艦が2隻ずつで守っている。まずは敵艦から見て右側から接近することにした。


 吹雪型の最高速度に合わせるので島風型の性能を十分に発揮することはできなかったが、吹雪型も決して遅いという訳ではない。近代化改装を経て最大戦速は39ノットに達している。


 クリーブランド級軽巡洋艦は12門の主砲を活かして大量の砲弾を撃ち込んで来るが、ジグザグ走行で回避する。峯風は装甲が損傷するほどの至近弾を何度か受けたが、直撃は何とか免れた。


「距離500を切ったぞ!」

『うん。じゃあ皆、いい感じに2隻狙って、魚雷全門斉射!』


 魚雷発射管に装填してある魚雷を全て発射した。島風型が15門、吹雪型が9門装備しているので、合計48本の魚雷が一斉に放たれる。


 発射し終えると、駆逐隊はすぐさま敵から距離を取った。魚雷の再装填は自動化されているが5分は掛かる。標的にした軽巡洋艦のことは気にせず、峯風達は戦艦の反対側に回り込む。


『さーて、当たるかな』

「あれだけ撃てば当たるだろう」

『――うん、当たったね。綺麗な花火だ』


 数秒で酸素魚雷は目標に到達した。軽巡洋艦は大爆発を起こしてキノコ雲を上げていた。2つのキノコ雲は戦艦の艦橋よりも高く、まず間違いなく爆沈だろう。


『みんなー、魚雷の再装填は済んだー?』


 島風が遊びに誘うかのように聞くと、全員が準備完了と答えた。


『じゃ、行こうか。絶対に当てないとダメだよ』


 魚雷は2回斉射を行う分しか積んでいないので、もう一度斉射をすれば使い切ってしまう。外してはならないのは確かだ。


 島風の号令を受け、駆逐隊は再び敵に向かって突撃を始めた。が、今回は運悪く、島風にクリーブランド級の主砲が1発当たってしまう。島風の艦尾から爆炎が吹き上がった。


『うわ、痛いなー、撃たれるのって』

「おい大丈夫か、姉さん?」

『平気平気。後ろの方にちょっと穴が開いただけだよ』

「平気じゃないだろ、それは」

『主砲がちょっと使えなくなっても問題ないでしょ』

「まあ、それはそうかもしれんが……」


 島風は全く気にすることなく作戦を続行した。もう少し当たり所が悪かったら魚雷に誘爆して木っ端微塵になっていたところなのだが。


「敵までの距離、ちょうどいいぞ」

『そうだね。全艦、残りの魚雷全部発射ー。そして離脱!』


 魚雷を全部撃ち終えて身軽になったところで全速力で離脱。残りのクリーブランド級も真っ二つになりながら爆沈していくところが確認できた。これで戦艦2隻を守る艦はなくなったが、魚雷も使い切ってしまった。

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