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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)

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空母対重巡

「ツェッペリン、大変だぞ。ユニコーンがベルファストから打って出たらしい」

「居場所が露見して、いつまでも港に引き籠っている訳があるまい」

「確かに、その通りだな」


 ツェッペリンが正論と正論を放ってきたので、シュニーヴィント上級大将は少し面食らってしまった。


「で、奴はどこに向かっているのだ? まあ予想はつくが」

「恐らくは君の予想通り、ユニコーンの目的地はここだろうと思われる」


 ユニコーンは現在、アイルランドとグレートブリテン島の間を南下している。それ以上の情報はないが、グラーフ・ツェッペリンを自ら撃沈する為に出撃したことは間違いないだろう。


「さて、問題はユニコーンにどう対処するべきかだが……どうする?」

「重巡を呼んでいると言っていたではないか。どうなっているのだ?」

「現在、レニングラードからアトミラール・ヒッパーを呼び戻しているところだ」

「一隻だけか」

「一隻だけだ」


 レニングラードの戦況は決して余裕のあるものではない。海上から支援砲撃を行う為、ドイツが保有している数少ない戦艦や重巡洋艦を動かす訳にはいかなかった。それに空母と撃ち合うくらいなら重巡で十分だろうという打算もあった。


「まあよかろう。不本意だが、アトミラール・ヒッパーが到着するまでは逃げ回っていることとする」

「君からそう言うとは、意外だな」

「わざわざ相性の悪い敵と戦う必要はあるまい」


 そういう訳で、ユニコーンの相手はアトミラール・ヒッパーに任せて、ツェッペリンは逃げ回ることにした。


 ○


 一九四五年四月二十日、オランダ近海。


 アトミラール・ヒッパーとユニコーンが衝突したのは、英仏海峡から少し東に行ったオランダ・ハーグの沖合であった。もちろんツェッペリンは更に東に逃げて距離を取っている。


「まもなくアトミラール・ヒッパーとユニコーンが交戦を開始するであろう」

「ああ。くれぐれもヒッパーが空から攻撃を受けることはないようにな」

「無論だ」


 ツェッペリンは相変わらずイギリス上空の制空権の維持に務めており、アトミラール・ヒッパーとユニコーンの戦闘に介入することはできなかったが、少数の戦闘機を出して両艦の対決を空から観察していた。


「ユニコーン、アトミラール・ヒッパー、距離30kmを切った。まだ砲撃を始める気配はないな」

「普通の軍艦は射程ギリギリで交戦を始めたりはしないんだ」

「そういうものか」


 ユニコーンとアトミラール・ヒッパーはお互いに距離を詰めていく。この調子ならば数分で現実的な交戦距離に入るであろう。


「お、ユニコーンが撃ったぞ。すぐさまヒッパーも撃ち返したな」


 ユニコーンが最初に4門の主砲で砲撃を開始し、アトミラール・ヒッパーも撃ち返した。実のところアトミラール・ヒッパーも艦橋より前方にある主砲は4門だけであり、正面向きの火力は同等なのである。


 20秒ほどして、最初の斉射の結果が出た。砲弾はアトミラール・ヒッパーに命中し、A砲塔が火を噴いた。反対にヒッパーの砲撃はユニコーンから200m以上離れた地点に落着した。最初の斉射にしては悪くない精度だが、二度目の斉射は火力が半分になってしまう。


「この距離で初弾から命中させるなど、とんでもないな……」

「やはりこれからの時代、人間の軍艦など淘汰されるのみであるな」

「何を嬉しそうにしているんだ。ヒッパーがやられたら困るのは君なんだぞ」


 砲塔を一つやられたヒッパーは、艦を90度右に回頭させて、全ての主砲をユニコーンに向けた。ユニコーンはグラーフ・ツェッペリンを沈めるべく突っ込んでくるので、こちらが正面を向けている必要はないのである。


「よし。これなら……」

「勝ってもらわねば困るな」


 ユニコーンとアトミラール・ヒッパーはほぼ同時に二度目の斉射を行う。その結果は、またしてもユニコーンの砲弾がアトミラール・ヒッパーの後方に命中し、ヒッパーの砲弾は惜しいところで命中しなかった。


「ヒッパーはまた火を噴いておるぞ」

「大丈夫なのか?」

「さあな。我には分からん」


 と思っていると、シュニーヴィント上級大将に通信が掛かってきた。上級大将はわざとらしく残念そうな顔を浮かべた。


「どうしたのだ?」

「ダメだった。アトミラール・ヒッパーは戦闘不能だ」

「たったの数発で壊れるとは、使えぬ艦だな」

「まあ、巡洋艦というのは概してそんなものだ。仕方ないだろう」


 巡洋艦は基本的に、武装に比して装甲が薄い。巡洋艦たるに相応しい航続距離や速度性能を発揮する為に仕方ないことではあるが、そういう訳で、アトミラール・ヒッパーはあっという間にして無力化されてしまったのである。


 ○


「ふふふ、私に挑もうだなんて、愚かなことですわね」


 ユニコーンは優雅に紅茶を飲みながら呟いた。


 その相手はついこの間まで連合国遠征軍海軍戦力司令官をしていたバートラム・ラムゼー大将である。所謂ダンケルクからの撤退やノルマンディー上陸作戦における海上戦力を指揮した男だ。そして意外にもユニコーンとの関係は良好であった。


「まさか本当に重巡洋艦に勝ってしまうとは」

「当然ですわ。で、あれは沈めなくてもよろしいのかしら?」

「砲弾の無駄だ。その必要はない」

「そうですか。ではグラーフ・ツェッペリンを沈めに参りましょう」

「ああ。奴さえ消せば、我々の勝利なのだ」


 グラーフ・ツェッペリンを撃沈できれば、状況は完全に逆転する。主力部隊が全滅した連合国軍に反撃する余力はないが、少なくともイギリスに上陸したドイツ軍は殲滅できるだろう。

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