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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第十四章 第二次世界大戦(覚醒編)

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パリは燃えているか

 フランスに上陸した連合国軍は10日ほどで組織的な戦闘能力を完全に喪失した。またド・ゴール率いるフランス臨時政府はパリとその周辺しか制御することができず、パリ市長と揶揄される始末であった。


 こんな折に総統は、総統暗殺未遂に関与した嫌疑がかけられているエルヴィン・ロンメル元帥に復権の機会を与え、20万のB軍集団を率いてフランスに侵攻させた。ロンメル元帥は一切の抵抗を受けず、パリの間近に迫った。


 ○


 さて、ドイツ軍から降伏勧告を出されたド・ゴール主席は、決断を迫られていた。


「閣下、最早我々に、ドイツ軍に抵抗する力はありません。降伏してパリを受け渡すべきです。相手はあのロンメルですから、悪くは扱われないでしょう」


 臨時政府の高官、レジスタンス時代にはフランスに潜伏してプロパガンダ活動に勤しみ、外務大臣になることが内定している男、ジョルジュ・ビドーは、ド・ゴール主席にそう提案した。


 ロンメル元帥は騎士道精神を重んじる人物として連合国軍にも尊敬されている男だ。パリを明け渡しても決して略奪などは行わないだろう。しかし、ド・ゴール主席の考えは少し違った。


「ロンメルと戦うつもりなどない。私の手元にあるのは自由フランス時代から従ってくれている僅かな部隊に過ぎないからだ」

「でしたら……」

「だが、ドイツにパリを渡すつもりなどない! パリは全て焼き尽くせ! ドイツに渡すのはパリの廃墟だけだ!!」

「なっ……何を仰いますか」

「私の思い通りならんパリなど、フランスなど、必要ないのだ!! 分かったら今すぐパリを破壊しろ!! 今すぐだッ!!」

「……承知しました。では、閣下は今すぐに脱出を」

「当たり前だ。後のことは任せたぞ」


 ド・ゴールはパリのことを部下に任せて早々に脱出した。しかし、彼の部下達がド・ゴールに従うと見せたのは、ド・ゴールを最初から見限っての芝居であった。残された臨時政府の面々はパリを無傷のままドイツ軍に明け渡したのである。


 その日のうちにド・ゴールからビドーに電話がかかってきた。


『ビドー、パリは燃えているか? パリは今まさに燃えているか? Oui(ウィ)Non(ノン)で答えろ』

「閣下……今やあなたはフランスの主席などではありません。あなたの質問に答える理由は我々にはありません」

『何……? 貴様、裏切るとでも言うのか!?』

「裏切る? 最初にフランスを裏切ったのはあなたでしょう、ド・ゴール。金輪際あなたと関わることはないでしょう。さようなら」


 ド・ゴールは政府から追われ、ドイツ軍からも追われ、戦争が集結するまで地方の農村で隠れ潜んでいたという。フランス臨時政府は解散し、フィリップ・ペタン元帥を主席とするフランス国政府が復活した。


 ○


 英仏海峡の封鎖から2週間。インドから帰還したイギリス主力艦隊はジブラルタルに引き篭って出てくる気配がなかった。その報告を聞いたグラーフ・ツェッペリンは上機嫌になっていた。


「何だ? 奴ら、我に怖気付いたのか?」

「そういうことじゃないだろうな。いつでも反撃できる戦力を保持しておけば、君は英仏海峡に残り続けざるを得ない。それを狙っているんだろう」


 シュニーヴィント上級大将は連合国軍の考えをほぼ完璧に読んでいた。


「ではジブラルタルまで行ってイギリス人共を皆殺しにしようではないか」

「恐らく、そうしたら逃げられるだけだ。意味はないだろう」

「ではどうするのだ? ずっとここにいる訳にもいくまい。可能な限り早く東部戦線に向かわねば」


 西部戦線が事実上消滅したとは言え、東部戦線の戦況は依然として絶望的と言っていい。一刻も早くツェッペリンが援護に向かわねばならないのだ。


「そうだな。ここはレーダー元帥に指示を仰ぐとしようか」

「……まあ、よかろう。勝手にするといい」


 そういう訳で海軍司令官レーダー元帥から告げられた命令は、制海権を握られても補給が満足にできないように、フランスとイギリスの港を破壊しておくことであった。もっとも、既に連合国軍は壊滅しているので、あえてそんなことをする必要もないのだが。


「――そうか、面白い。ついでにイギリスも焼け野原にしてやろう」

「飛行場とレーダーと工場を潰しておけばいい。民間人を狙っても意味はない」

「……分かった」

「ああ。それと、何隻か増援が来てくれるようだ。港の方はそちらに任せてもいいだろうな。我々は内陸部の破壊に注力しよう」

「我に命令するな」


 海軍から戦艦ティルピッツ、重巡洋艦アトミラール・ヒッパーとプリンツ・オイゲンが派遣され、フランス北海岸とイギリス南海岸の港を砲撃して徹底的に破壊した。これで制海権が回復してもマトモに補給を行うことは不可能だろう。もっとも、補給を受け取る人間など残ってはいないが。


 グラーフ・ツェッペリンは飛行場の破壊や、フランス内陸で多少の抵抗を続ける連合国軍の残党に対する爆撃を行った。連合国の不沈空母であったイギリスは破壊され尽くし、ドイツ軍に反抗する力はほぼ失われた。


 このような破壊に3日を費やし、グラーフ・ツェッペリンは整備と補給の為にヴィルヘルムスハーフェン港に寄港した。

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