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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第七章 アメリカ本土空襲

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先制攻撃

「閣下! 南東200kmに、急速に接近する航空編隊を確認しました! 数はおよそ150!」

「敵に先制攻撃を許したか……」


 艦隊旗艦フォレスタルの司令室で、スプルーアンス元帥は自軍が既に敵に捕捉されていることを悟った。


「全艦、直ちに直掩を出せ! 即応だけでもこちらが優位だ!」


 アメリカ海軍お得意のカタパルトで、飛行甲板上に用意してあった艦載機を直ちに発艦させる。これだけで艦上戦闘機を80機は出すことができ、数の上では月虹の戦闘機を上回っている。


「引き続き、発艦作業を進めさせます」

「ああ、そうしてくれ。艦上戦闘機が最優先だ」

「しかしこれだけ出せれば、追加で発艦させる必要もないのでは?」

「馬鹿を言うな。エンタープライズを除いて、我々の戦闘機は瑞鶴の爆撃機にすら敵わないんだ」


 前回の戦いに参加していなかった士官は、瑞鶴とツェッペリンの恐ろしさを理解していない。


「爆撃機と戦闘機でドッグファイトを?」

「そうだ。全員心しておけ。奴らは本当に規格外の化物だ」


 スプルーアンス元帥は念には念を入れて戦いに臨む。


 ○


『敵の要撃が出てきたな』

「ええ。蹴散らしましょう」


 瑞鶴とツェッペリンの航空編隊は一直線にアメリカ艦隊に突入する。スプルーアンス元帥の懸念通り、アメリカの迎撃部隊と会敵するや否や、迎撃される側の爆撃機や攻撃機が逆にアメリカの戦闘機を落とし始める。予想通りの展開だ。


 だが次の瞬間、ツェッペリンの攻撃機が一気に2機も落とされた。


『何? 我の機体を一気に落とすなど――』

「エンタープライズよ。気をつけなさい!」

『しかし見分けがつかんぞ!』

「何とかするのよ!」


 エンタープライズも他の空母も使っている機種は全く同じである。見た目でどれがエンタープライズ所属機なのかを見分けることは不可能だ。だがそれでも、エンタープライズの艦載機は明らかに他の機と動きが違う為、注意深く観察すれば判別することは可能であった。


『クソッ。もう少し纏まって行動しろ』

「エンタープライズ機に戦闘機を優先して当てるわよ」

『無論だ』


 エンタープライズ以外の艦載機など攻撃機の副武装で十分である。瑞鶴とツェッペリンはエンタープライズの戦闘機を捕捉すると自らの戦闘機で積極的に攻撃し、爆撃機や攻撃機から注意を逸らす。


『で、攻撃目標はどうする?』

「この調子だと戦艦に仕掛けるのは厳しそうね。空母を無力化するわ」

『分かった。なれば、我に続け』

「あんたなんかに追い抜かれないわよ」


 未完成とは言え戦艦の対空砲火は強力である。瑞鶴は空母に一撃仕掛けて航空戦力を減らすことにした。


 ○


「閣下! 敵機全く食い止められません!! 食い破られます!!」

「ああ、そうだろうな。全艦対空戦闘用意! 仕掛けてくるぞ」


 戦闘機で敵を追い返すことができれば理想的だが、そんな甘い考えは月虹には通用しない。アメリカ艦隊は対空砲で敵を迎え撃たざるを得なくなった。


「敵機来ます!!」

「撃ち方始め! 敵を通すな!」

「閣下、敵の目標は空母のようです!」

「やはり、空母を落としに来るか。戦艦の対空砲火で食い止められればいいが……」


 空母は戦艦や巡洋艦の輪形陣に囲まれている。その外郭で敵を食い止めれれれば及第点だが――


「防空網が突破されました!」

「やはり無理か」


 とは言え、輪形陣の内側こそ最も対空砲火が厚くなる場所。空母と戦艦による対空砲火で敵機を撃墜せんと試みるが、砲弾も弾丸も簡単に回避されてしまう。


「ラングレーが魚雷を喰らいました! 左舷艦尾に被雷し傾斜しています!」

「ラングレー、船魄が無力化されました!」


 ミッドウェイ級空母四番艦のラングレーは、船魄が余りに激しい衝撃に襲われ、戦闘能力を喪失した。操舵と対空砲火くらいなら人間が引き継げるが、艦載機は完全に無力化される。ラングレーの艦載機は安全装置が作動して次々に着水していった。


「一隻くらいなら許容だが……」

「敵機、エンタープライズを狙っています!」

「それなら大丈夫だな」


 ツェッペリンは調子に乗ってエンタープライズにも一撃加えようと接近する。だがエンタープライズの対空砲火は他の艦のそれとは比べ物にもならず、近付いた攻撃機が一瞬にして2機、撃墜された。


「やはりエンタープライズは、格が違うと言うか……」

「あの子一人に頼らざるを得ないのは遺憾だがな」

「敵機、撤退していくようです!」

「流石に怖気付いたか」


 瑞鶴とツェッペリンの艦載機は一斉に引き上げた。空母一隻が失われたも同然であったが、依然として戦力はアメリカ艦隊が圧倒的に有利である。


「よし……。敵艦隊の位置はまだ分からないのか?」

「現在捜索中で――」

「待て」


 エンタープライズからスプルーアンス元帥に直接通信が入って来た。 元帥は直ちに通信を取る。


「どうした、エンタープライズ?」

『ふふ、愛しの瑞鶴を見つけました。データは送ってあります』

「瑞鶴だけということか?」

『ああ、そう言えば、ついでに空母と巡洋艦もいましたよ』

「ならいい。敵を見つければこっちのものだ。攻勢に出るぞ」

『瑞鶴はもちろん、私のものにしてくれますよね?』

「……ああ、好きにするといい。勝てたらだがな」

『ありがとうございます、元帥』


 かくして第2艦隊は反転攻勢を開始した。

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