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軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第六章 アメリカ核攻撃

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第2艦隊主力部隊

「元帥閣下、前衛部隊は壊滅。敵重巡2隻は我に迫りつつあります」

「やはり、我々の技術では日本軍に太刀打ちできないか」


 スプルーアンス元帥は第2艦隊旗艦たるミッドウェイ級航空母艦二番艦フォレスタルの艦橋で報告を受けた。10隻もない艦隊を指揮するなら指揮所にいるより艦橋からその目で全てを確かめた方がよいと判断したからである。


「どうされますか、閣下?」

「敵は強大だが、所詮は条約型重巡洋艦に過ぎない。戦艦で迎え撃つ。空母は引き続き防空に専念せよ」


 アメリカ海軍は日本海軍と同じように戦没艦の再建造を盛んに行っていたが、それもキューバ戦争でほとんど沈められ、東海岸に残存する戦艦は現状、ここにあるニュージャージーとミズーリだけである。もっとも、アメリカは4隻の戦艦を建造中であり、そのうち実戦投入されるだろうが。


 と、その時、艦橋の真ん中の大きな椅子に座った少女が話しかけてきた。軍服の下から痛々しい包帯が見え隠れする少女は、この艦フォレスタルの船魄である。


「ははっ、本当に大丈夫なんですか? あんな産まれたての船魄で」


 フォレスタルは無気力に。


「船魄になったとて主砲の威力が向上する訳ではない。20.3cm砲でアイオワ級の装甲を撃ち抜くことは不可能だ」

「その慢心が命取りになりますよ、閣下。まあ私はどうなっても知らないですけど」

「仮に戦艦部隊が突破されれば君が、と言うか我々が目標になるんだぞ?」


 元帥は呆れたように。


「別にどうだっていいことです。死んだら死んだでもう働かなくて済みますし」

「残念だが、君に死んでもらう訳にはいかない」

「そうですかあ。まあ、どっちでも構いませんが」

「……主力部隊全艦、戦闘に備えよ!」


 スプルーアンス元帥も、流石に重巡相手に負けてやるつもりはなかった。


 ○


「な、何か、凄い大きい戦艦がいる気がするんですけど……」


 妙高はアイオワ級戦艦をその目で見ると尻込みしてしまった。と言うのも、アイオワ級は全長270mと大和より長い巨艦なのである。全長200mの妙高と比べれば圧倒的だ。


『アイオワ級ねえ。私が生まれて最初に沈めたのはニュージャージーだし、大東亜戦争で5隻沈めたわ。雑魚よ』

「瑞鶴さんにとってはそうかもしれませんが……」

『まあ冗談じゃなくて、本当に大したことはないわ。無駄に長いだけで排水量は長門に毛が生えた程度だし、主砲も長門と同じのが1門多いだけよ』

「長門様の主砲は十分致命傷なんですけど……」

『当たらなければどうってことないわ』

「は、はい……」


 妙高は瑞鶴に相談しても無意味だと悟った。


「と、とにかく、回避に全力を注ぐことにしよう、うん」

『戦艦ならば弾道も読めます。落ち着いて回避すれば大丈夫な筈です』


 妙高と高雄は巡洋艦である。砲弾が撃たれてから回避するのは十分現実的だ。


「それはそうだけどさあ……」

『さあ行きますよ、妙高』

「う、うん!」


 敵艦隊は空母4隻、戦艦2隻、駆逐艦6隻である。空母については一先ず無視していいので、戦艦と駆逐艦を何とかして無力化しなければならない。


「あ、あのさ、高雄。これまで考えないようにしてたんだけど、戦艦ってどうやって無力化すればいいの……?」

『わたくし達の主砲では歯が立たないでしょうから、魚雷で何とかするしかないかと』

「やっぱりそうだよね。魚雷は、沈めちゃわないかなあ」

『そんな心配をしている余裕は、わたくし達にはありません。それに、上手く大破させられても、自沈させられるかも』

「自沈、か……。それは止めてもらえるよう、アメリカ軍に伝えられないかな? 私達は敵艦を鹵獲するつもりなんてないって」

『現実的とは言えませんが……先程向こうから通信してきたことですし、あり得なくはないでしょうね。あなたの心配が減るなら試してみるのもありかと』

「分かった! やってみるね!」


 両艦隊の距離は40kmほど。妙高は第2艦隊に無線で呼びかけてみることにした。幸いにもアメリカ軍はすぐに応答してくれた。


『スプルーアンス元帥だ。まさか交渉してくれる気になったのか?』


 どうやら瑞鶴からだと思っているらしい。


「あ、あの……私は妙高と言います」

『ふむ。妙高(クラス)重巡の妙高か?』

「は、はい。その、先程とは別件でお話したく……」

『なるほど。要件は何だ? あまり話し合っている時間はない』

「妙高は、あと僚艦の高雄も、あなた方の艦を鹵獲したりするつもりはありません」

『それはそうだろうが……何が言いたいんだ?』

「航行不能になった艦を自沈させないで欲しいんです。曳航するのを邪魔するつもりはありませんから」

『要件は分かった。だがどうしてそんなことを? 港まで帰還すれば艦は修理され戦線に復帰するんだぞ?』


 スプルーアンス元帥はあくまで妙高を疑っていた。妙高は疑われて少々ご立腹である。


「そんなの船魄に死んで欲しくないからに決まってるじゃないですか! 戦えない艦を攻撃するような理由は、妙高にはありません!」

『分かった分かった。今回は君の要請を受諾しよう。君のような騎士道精神の持ち主は久しぶりに見たよ』

「あ、ありがとうございます。ではまた、戦場で」

『手加減はしないぞ』


 妙高はこれで心を乱されずに戦える。

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