表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~  作者: Takahiro
第六章 アメリカ核攻撃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/751

第2艦隊との砲撃戦

『妙高、敵前衛艦隊が間もなく射程に入ります』


 高雄はカタパルトから飛ばした水上機を通し、戦場を俯瞰している。もちろん妙高もだ。


「う、うん。分かってるよ……」

『妙高、しゃきっとしてください』


 覇気のない妙高に、高雄は怒り気味に言う。


「そ、そうだね。今度もきっと、大丈夫」


 妙高と高雄を迎撃しに打って出てきたのは、巡洋艦が3隻と駆逐艦が6隻の小部隊であった。バランスが悪いのはアメリカ海軍に――少なくとも東海岸にロクな艦隊が残っていないからである。


『射程に入りました。砲撃を始めましょう』

「分かった。まずは巡洋艦から狙おう!」

『承知しました』


 妙高と高雄は単縦陣を組み、敵に対して斜行し全ての主砲を指向しながら、砲撃を開始した。最初の目標は敵の巡洋艦である。


「よし、命中……」


 妙高は最初の砲撃で主砲弾2発を命中させることに成功する。


『敵方に損害はほとんど見られません。どうやらかなりの重装甲のようです』


 敵艦は舷側装甲が多少が凹んでいるようだが、特に影響はなさそうだ。


「だったら、そう簡単には沈まないよね?」

『ええ、恐らく――妙高、敵が撃って来ます!』

「大丈夫!」


 敵重巡も当然ながら攻撃を開始した。ほとんどの弾は見当違いの方向に飛んでいくが、数発は精度が良く、妙高のすぐ左に大きな水柱が複数上がった。


『妙高! 大丈夫ですか!?』

「至近弾だよ。このくらいなら大丈夫」


 駆逐艦なとであれば至近弾でも損傷するが、仮にも重巡である妙高にそれは通じない。注射針を刺されたくらいなものだ。


『そ、それなら、よかったです』

「高雄、攻撃するよ!」

『はい!』


 敵がそうそう沈まないと知ると、妙高は本気を出せる。


「まずは一番左の巡洋艦から集中攻撃して!」

『承知しました!』


 妙高と高雄の合計20門の主砲が全力で砲撃を開始する。2人揃っての斉射で6発の命中弾を与えることに成功し、敵艦から炎が上がり始める。


『効果はあるようです。しかし主砲や機関は無傷かと』

「……なら、もっと撃とう」


 妙高も覚悟を決める。敵艦が全力で砲撃してくるのをジグザグ針路で回避しつつ、全主砲で砲撃を行う。普通は止まって撃っている方が有利なのだが、船魄の性能差で逆に妙高が圧倒していた。


「よし、命中」

『10発喰らっても平気そうとは……アメリカの技術も侮れませんね』

「妙高にはその方がありがたいかな」


 船魄化されたからと言って主砲の攻撃力が向上する訳ではない。敵艦を沈めるのに必要な鉄量は変わらないのだ。それに要する時間は大幅に短縮されるが。


「今度こそ、黙ってもらう!」


 妙高は5度目の斉射を行う。砲弾は命中したが、次の瞬間、敵重巡の艦首付近で大爆発が起こった。主砲塔が幾らか吹き飛び、たちまち炎に包まれたのである。


「な、何で急に……」


 妙高は青ざめる。


『弾薬庫を撃ち抜いたのでしょう。沈みはしません』

「本当に……?」

『船体そのものに大きな損傷はないようです。大丈夫でしょう。それに、あれで船魄が動けるとは思えません。わたくし達の目的通りです』

「そ、そうだね……」


 重巡は大炎上しているが、沈む気配はなさそうだった。そして同時に完全に沈黙し、殺さず無力化するという妙高の目的通りの結果になった。


『さあ妙高、次も参りますよ!』

「うん!」


 あれだけの大爆発を起こしても沈まないのだから、敵重巡が沈む筈がない。そう自分に言い聞かせて意識を集中させ、隣の重巡も無力化することに成功する。と、その時である。


『妙高、魚雷です!!』

「うっ……」


 先の戦いで魚雷を叩き込まれた痛みが思い出される。


『妙高! 回避してください! 大した数ではありません!』

「……分かった!」


 水中聴音機で魚雷の位置と速度を把握し、妙高は回避行動を取った。落ち着けばどうということはない。魚雷は妙高の左右を通り抜けていった。


「よ、避けれた……」

『気を抜いている場合ではありませんよ! 攻撃しましょう!』

「もちろん!」


 砲撃を再開する。戦闘は終始月虹優位に進み、最後の巡洋艦に15発程度の砲弾をぶち込んで大破炎上させ沈黙させた。これで妙高と高雄に対抗できる艦は完全に沈黙したことになる。


「これって、どうすればいいのかな……。駆逐艦も無力化するもの?」

『彼らが逃げるのならばそれに任せましょう。ほら、逃げていくようです』

「いや、あれは、そういう訳じゃ……」

『と言うと?』


 逃げるという風でもない。駆逐艦達は重巡の後背に回り込んでその姿を隠した。高雄もようやく察した。


『まさか、自沈……』

「うん……止めないと!!」

『妙高、待ってください! どうするというのですか? ここから砲撃すれば重巡も巻き込んでしまいます。駆けつけようにも間に合いません』

「で、でも」

『これが、軍艦の運命です。彼女達には武人として、最期を迎えさせてあげるべきです』

「そんな…………」


 せっかく殺さずに済んだと思ったのに、それは間違いだった。妙高と高雄が見守る前でアメリカ軍は自沈処理を行う。駆逐艦から至近距離で魚雷を放つのだ。艦が沈めば船魄も死ぬのは必定。結局、妙高の努力は無駄になってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ