エチチな女とマセガキ
「うわーん!」
「ママーー!!!」
山小屋をひっくり返すと、囚われていた村人が出てきた。持ち出されていた金銀財宝も。
「はなてぇえええーー!!!」
女騎士団は事を済ますと敵の拠点に火を放ち、それを亡き者にした。
「出払っていましたな。老人や使いを残し」
「やはり、今日は奴らの『祝宴日』であったか」
彼女らの顔に日が差した。
アジトをまもる団員は、森には入らず警護を固めた。
「あれ? 奴隷は?」
姿がみえない。クソガキの。
(はあっはあっ! やっていられるか!)
カスオは荷物を放りだし出奔した。女のナイフをうばって縄をとき。
「なぁ~にがイライザ様だ! クソビッチ!!」
「待ってよ、お兄ちゃん! ひうっ!?」
お兄ちゃんがしがみ付いてきた。
「僕も乗せろ」
「……。一人用です……」
ミーアは「空とぶ抱き枕」のうえで震えている。パンツを被ったガキを見て。
「……」
そこに怪しい影が近づいていた。
「いやです」
「のせろぉおお!」
「団長! 奪還品の積載は完了! 人質も集落へ!」
「よくやった、お前達」
「売られる前に取り戻せて何よりです」
作戦が功を奏して女騎士団は廃墟をあとにした。
「イライザ団長!!!」
「!?」
アジトのまわりの見張りが駆けよる。
木々の間から何かがあらわれた。
「オンナどもぉっ! なぁにやっちゃってくれてんのぉおおお?」
「!!!」
森の中からヲタクのような方々があゆみ出た。燃えるアジトを取り囲み。
「!!?」
「戻ってきたんだ本体の……一部が!!」
「そんなッ! この数!!!」
総勢百五十名ほど。これでも一部か。
女騎士団は二十人ほど。
「……」
イライザが、剣に手をかける。
「ワタシがやるッ!!!」
空に黒雲がたれこめた。いまにも雨が降り出しそう。
「あぁっ!」
「よせ! 下がれッ!!」
仲間がこの場を離れない。
「この星はどうなるのです! 団長が死んだらッ!!」
「!!」
「お逃げくださいッ!」
「お前達……、だが……」
「団長ッ!!」
イライザは撤退する騎士団の最後尾を、仲間数名に託した。
「くっ……」
離れてゆく数名をふりかえる。
そのとき、地響きがなり木々をかきわけて何かが現れた。
「!!?」
「グシャァアアーー!!!」
巨大な人影。
しかも三体。
「ひょっひょっひょ!」
その脇に、ローブをまとった老人がいる。
「おぉっ! モガーン様ッ!!」
ぽつりぽつりと黒雲から水滴がおちてきた。
「ヤれいッ! 我が息子ラよッ!」
「ちょっと!」
それは普通のタイタンではない。
「タイタンウィザード!!?」
妙なオーラをまとっている。青紫の。
そのうえ、モンスターが力を発揮する雨天。状況も思わしくない。
(なんてこと……)
化物に割って入られ、勇気あるしんがりの退路が断たれた。
たまらず駆けてきたイライザと女三人が残された。
「ひぃいいーー!! どうしてこうなるのッ!!!」
モンスターが転び出た。天使を背負うカスオの前に。
パンツを被って威嚇する。女のかほり。
「仲間であろう! 騎士団のッ!!!」
「ちがうわ!」
モンスターの背から声がした。
「おい、起きろ!」
ミーアは敵を倒したが、我慢できなくなったのか今はカスオの背でねむる。
「シャァアアアーー!!!」
ビッグカピバラが猫のように威嚇してくる。飼主を乗せ。
「餌にしてくれる! 貴様を殺しッ!!!」
ワームの入墨。テイマーズか。
「!! そうだ!」
――与えられた唯一の能力は、モンスタキラーである。
で、後ろにはモンスターである。
(イケるんじゃね? 最強TUEEE! 俺TUEEEE!!!)
「ぎゃふっ!!!」
しかし、敵にぶつかられて身体が宙を舞った。
「うぁああっ!!!」
さらに放水をしてきた。クリエイトホットウォーター。頭にミカン。
卑怯な攻撃。カスオは爪なのに。
「あ、当てさえすれば、爪を。当たりさえすれば貴様なんて」
「当テテミロヨ」
「な、なにおぉっ!!?」
相手は悠然と近づき、目の前にたちはだかった。
「なめ……やがって……獣が。後悔しやがれーーッ!!!」
右手の黒爪を、相手に振り下ろす。
「バカモンめぇええーー!!?」
胴体に当たった。
「!!?」
が、何も起きなかった。
(えぇッ!!? ど、どういう……!?)
斬り裂くことができない。皮膚でとまっている。
(モンスタキラーだろ? 熟練度?)
「げふっ!!!」
反対に殴られた。胸が焼け付くように痛い。
まずい。
ミーアも寝ている。
「おい! 起きろ!! 起きてください!!!」
炎をあげる山小屋のちかく。
「おらっ! 全員、大人しくしやがれッ!」
アジト前で棒に縛りつけられたイライザ達、四人。
「すみません……団長……」
「いや、悪いのはワタシ……」
周りには、かがり火が焚かれている。空はまだ明るい。
「うぐっ!」
ヲタクのようなヒャッハーらが多数、取り囲んでいる。
手に手に松明をもち。
「よくも……我らのアジトを……」
「貴様らが、テント村を――うあっ!」
「やっ、やめろ……! ワタシだけにしろッ!!」
仲間に松明が近づいてゆく。
「団長!」
ほどける様子はない。冷めたい汗がながれた。
火炙りにされてしまう。助けねば。
「よせぇええ――あぁっ!」
男が前にでて、腰の得物に手をかけた。
「!!?」
イライザのズボンがするりと落ち、長い脚があらわになった。
「うひょ♪」
「ひゃっはー!」
「なっ……!?」
シャツの下の艶めかしい美脚に、口笛がピーピーと鳴らされる。
「団長!!」
「な、何をする……ッ!」
イライザの顔が、怒りでか紅潮している。
シャツに収まりきらないほどの胸がゆれた。
「おっひょぉおおおおーー!!!」
「仲間には手をだすなッ! それを誓えッ!」
「……」
「それを誓えッ!!!」
プツンプツンと音がなる。
ナイフで切られてゆく。シャツの前ボタンが。
「やっ! やめろーッ!!」
ぴっちりと張った胸は変化している。
「おぉ? ノーブラ?」
上から一つ一つボタンが取られ、大きなそれがあらわになる。
「うあぁっ……」
「団長に手をだすなぁああーー!!!」
上はノーブラ、下はパンツ一枚。
大事な部分を太ももで隠した。身体をよじり。
「ヒューヒュー!」
口笛を鳴らされる。一層大きくなるだみ声。
相手はもはや人間の顔ではない。炎に照らされ。
「馬鹿なことは止めるんだッ!」
イライザが震えながら叫んだ。
ギラギラとした獣の眼に取り囲まれる。
「くっ、殺すならさっさと殺せ! 早くころせぇええーー!!!」
だが男の一人が歩み寄り、耳元で何かをささやいた。
イライザの顔が青ざめる。
「――こいつらの相手をするんだ。お前の仲間の目の前で」
縛り付けられた三人の女も取り囲まれている。
イライザの周囲にも、ヲタクのようなヒャッハーが60人近く。
目当ての女に集っているようだ。60人の男に何をされるのか。
「うぁあああーーッ!!!」
太ももを撫であげられた。
「団長ーーッ!!」
シャツの間から大事なところが見えそうになる。
「まずは、オレからだ」
「卑怯者ッ! ひきょうものぉおおーーッ!!!」
大きな胸がはだかれ、それが露になった。
太ももが震えて水滴がしたたる。
「やめろぉおおーー!!!」
闇が、さらに色濃く染まった。
あたりがそれに包まれる。
「……」
イライザは身体をよじってシャツで胸を隠そうとする。
「グワッ!」
そのとき男が一人、地べたをなめた。
「!!?」
降ってくる。空から何かが。
「おいおいおい! 何だぁ! こりゃぁ!!!」
息を弾ませるイライザらの頭上に――大きな――物体が浮かんでいた。
直径百メートルほどの円盤か。
「な、なにぃいいーー!!?」
「ウワァアアーー!!!」
賊が逃げまどう。
無数のビームに焼かれゆく。タイタンらも例外なく。
「こ、これは……?」
「チッ、またか……」
イライザが不満げな顔をみせた。
雲間から光がさしてきた。
「はあっ、はあっ、はあっ」
ヒャッハーらが消えてしまった廃墟。
水滴をながす彼女らの前に、黒髪の男が降りてきた。
「ちょっ、ちょっとッ!!!」
男が拘束を解いてゆく。目をつぶり。
イライザの身体はまだ震えている。ぐっしょりと濡れながら。
「随分なことをさせる……」
男は続けた。
「言っただろう。戦うなと」
女騎士はきっと睨みながら頬を染め、前をとじる。
「……」
男の背丈はイライザよりも少し高い。
顔は――憎たらしいことに――男前である。
「ありがとう……」
女騎士の四人は安堵の表情をみせた。謎の男に。
「!!?」