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1.邪悪な魔女はいませんでした

 新鮮な血の匂いがする。肉の焦げる臭いもする。血肉に喜ぶ獣の咆哮も聞こえる。

 広場の真ん中で(はりつけ)にされながら私は国の滅びを感じていた。

 だから言ったじゃない、私は邪悪な魔女ではないって。

 寧ろこの国を護ってさえいたのに。手出ししないようにお願いしていたのに。


 あれ程言ったのに誰も信じてくれなかった。

 私は森の奥に引きこもって暮らしていただけなのに。

 そこに鹿狩りに来た貴男が迷い込んだだけなのに。

 手当てをして食事を与えて森の入り口まで送っただけで感激して。

 君は救いの聖女だなんて私を強引に城に連れ帰って。

 大袈裟な愛を囁いて、私も貴男を愛して。少しでも貴男の役に立ちたくて民を癒して。


 けれど他に好きな姫が出来たらお払い箱。

 別に人間の男の身勝手さなんて慣れているけれど。

 けれど邪悪な魔女扱いで民衆の前で辱めて処刑は悪趣味過ぎないかしら。


 私が動物たちと話せるなんて、ずっと前から知っていたでしょうに。

 知っているわ。私が貴男を憎んで復讐すると恐れたのね。

 私の魔法が敵国に渡ることも恐れていたのね。だから殺してしまえと。

 そんな風に貴男に毒を吹き込んだのはあの可愛らしい隣国のお姫様なのね。 


 本当に馬鹿な人たち。

 私は一度も妃になんてなりたがったことはないのに。

 私は一度も貴男たちに恨み言を呟いたこともないのに。


 それなのに貴男たちはわかりやすく私の死骸を国の真ん中にぶら下げた。

 魔女狩りだとお祭り騒ぎをした。

 私を裸に剥いて罪人の焼き鏝に、沢山の鉄槍。

 私の血はとてもよく香ったことでしょう。


 魔王の娘である、私の血は。 

 きっとお父様の元にも、届いてしまったのね。


 ああ悪趣味なお祭り騒ぎが始まる。私はこんなこと決して望まなかったのに。

 本当に、馬鹿な人たち。

 本当に、馬鹿な、いとしかったひと。


 もう幾ら私に赦しと救いを求めても、 

 貴方達を赦すのも殺すのも私ではない。


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