第三十一話~調査報告と料理作り~
ハルが俺たちの拠点周辺についての調査報告を話していくとアルピアさんはその話を聞きながら素早い手つきで羊皮紙へと書き出していく。
「すごいですね…先ほどの雰囲気が嘘みたいです…」
「ああ、村のまとめ役としての風格があるな」
「ええ、こう見るとハルさんと親子って感じますね」
こうしてしばらくの間二人の間のやり取りが続き、シイラさんから頂いたお茶と軽食を取りながら報告が終了するのを静かに待っていた。
そして、移住先予定の報告が一通り終えると、アルピアさんは伸びをし、お茶を飲んで一息ついた。
「まずはみんな、調査を無事に終えてよかったわ、ありがとう、そしてお帰りなさい」
彼女がハルたちに労いと感謝の言葉を伝えると、みな一様に嬉しそうにしながら返事を返した。
「これなら次の移住先として問題ないでしょう、これだけ早ければ次に魔物の進行があったとしても無事にみな避難することができるわ」
そしてアルピアさんは話に一区切り付けると、今度はこの場所まで一瞬で現れたハル達について質問し始めた。
「それにしてもさっきのあれは何かしら?いきなりハルちゃんが現れてお母さんビックリしたわ」
「それについてはタツヤから説明してもらってもいいかしら?」
「わかったよ」
そうして俺はダンジョンコアについてやそれまでの経緯などの説明をした。だが俺たちが転生者で亜人族達を侵略した人と同じ世界から来たということは伏せることにした。これはハル達とも話し合い、余計な心配をかけないようにするためだ。
アルピアさんは俺の説明を興味深そうに聞き、話を聞きを終えると一息ついた後、話し出した。
「人がダンジョンの主になるなんて聞いたことがないわね、それにダンジョンマスターというのになるとそんなことまでできるのねぇ…」
「それなら移住予定地にドワーフの方たちが移動する時間も大幅に短縮できそうですね」
「そうね、ねえアカリちゃん、移住先の開拓のためにも協力してもらえないかしら?」
「ええもちろんです、お任せください!」
「本当にアカリちゃんはいい子ね~、身寄りもないのだし私の娘にならない?ハルちゃんも最近は反抗期に入ってつれなくなってしまったし」
「え!?え~っと…」
「こらお母さん!あんまりアカリを揶揄わないでよ!」
灯を抱きしめ、ニコニコと笑いながらハルに怒られているのを見ると流石はこの二人が親子なんだというのを実感する。
「まあ冗談はここら辺にして、アカリちゃんもタツヤ君もここのみんなはあなた達の家族同然みたいなものだから困ったときは気軽に声を掛けて頂戴ね」
俺たちは二人揃いアルピアさんとシイラさんの方を向き礼をする、ハルたちもそうだが、この村の人はみんな優しい人だと実感するな
「「ありがとうございます」」
「ええ、それじゃあもう時間も経ってきたしシイラ、そろそろ晩御飯の準備を始めましょうか」
「そうですね、メイリアも手伝ってもらっていい?」
「わ、わかりました!」
「でしたら、俺たちも手伝いますよ、それにいくつかお渡ししたいものもありますので」
そうして俺たちは集会所内にある食堂の調理場へと移動し、拠点で作った干し肉やまだ加工前の鮮度の落ちていない肉、その他ゴブリン・キングの部屋で見つけた酒や果物なんかを取り出した。
「あらあら、こんな大量の食材をどうしたの?」
「ミールとカイトが灯のスキルを便利がって辺りの魔物なんかを狩りまくったのよ」
「ついつい興が乗っちゃったにゃね~」「いや~、干し肉作りも苦労したっすね~」
「まあそれで、大量に余ってしまったから村のみんなにお裾分けってなったの、お酒や果物なんかはお酒を飲むのもタツヤだけだし果物も傷む前に食べきれないってことでタツヤ達が私たちの村に寄付してくれるって渡してくれたの」
「まあ!それはありがとうございます、村のみんなもお腹いっぱい食べれることもあまりないのでとても助かります」
シイラさんはこちらの手を取ると笑顔でお礼を告げてきた、俺が少し照れた風にお礼を受け取ると誰かから脇腹をつねられた。
「お兄さん?早く調理に移りましょう?皆さんの分を作るのなら早く準備に取り掛からないといけませんよね?」
「あ、ああ…」
「ふふふ、二人とも仲がよろしいんですね」
「ええ、そうなんですよ!さあお兄さんもこっちに来て食材を切りましょう!」
そうして俺は灯にぐいぐいと引っ張られて食材のカットをしていく、やはりメイリアやシイラさん、その他羊人族の方々は素早いペースでどんどんと食事を作っていく。
「やっぱりみなさんの調理の腕前は一味違いますね…」
「みゃあ達は食事が出るのを首を長くして待つことしかできないにゃ」
そういいながらミールは俺たちが渡した果物をつまみ食いしながらこちらを眺めていた。そのミールの後ろからハルが近づいてくるとミールの頭目掛けて手刀をいれた。
「ふにゃ!」
「こら、ミール!つまみ食いはやめなさい、そんなことをしていたらミールの分の食事は抜きにするわよ」
「にゃー!それだけは勘弁にゃ!」
「じゃあ皮むきでもなんでも少しは料理の手伝いをしなさい」
ハルはミールの首根っこを掴むとそのまま食材の方へ連れて行った。
「あはは…私達も料理の続きをしましょうか…」「そうだな…」
数時間ほど、調理を続けていき、俺たちは村のみんなが食べる分の料理を作り上げた。
「それじゃあ後は食堂の方に料理を持っていきましょうか」
シイラさんが食堂の方へ声を掛けると、待っていたとばかりに何人か屈強な男たちがやってきて、鍋や大皿などを運んで行った。
俺たちもいくつかの料理を食堂へと運びようやく皆で席につき食事を始めることとなった。
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