第三十話~族長との対面~
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「ほら!あそこがみゃあ達の村だにゃ」
そうしてミールが指し示す先に目を向けると周りを柵に囲まれた村が見えてきた。
俺たちがどんどん村へと近づいてくると物見櫓の上に居た、ミールと同じ猫人族の男性がこちらに気づくとミールを見つけたのか手を振ってきた。
「おーい!ミール!どうしたんだ!一緒に行ったハル達はいないのか!」
「ハルたちは移住地予定の場所でお留守番にゃ!そんなことよりさっさと門を開けるのにゃ!」
ミールに声を掛けた男性は、物見櫓から降りると、俺たちの前にある門を開け始めた。門はゆっくりと開き、ようやく俺たちは村にたどり着くことができた。
「移住地の方はどうなったんだ?時々、山脈の方の魔物が発見されるようになったと村の狩猟組の方から報告が上がっている。そろそろここも移動しなければいけなくなるかもしれないって話も出ている」
「移住先の方はもう見つけたにゃ、ハル達はそっちでお留守番してもらってるにゃ」
「ああ、それならよかった。ん?っだがその二人はいったい誰なんだ?村を出たときには見かけなかったが…」
「この二人はその移住地で見つけたから保護してきたにゃ」
「おお!そんなところにまだ仲間が居たのか!二人とも無事でよかった、俺はハイルだ、二人とも歓迎するよ」
そういうとハイルと名乗った男性はこちらに手を差し出してきたので俺は彼の手を握り返す。
「ああ、こちらこそよろしく頼む、俺は達也だ。」「私は灯です!よろしくお願いします!」
「村に居ればみんなが守ってくれるから安心して暮らしてくれ」
「守られるのはハイルの方にゃ、タツヤとアカリは二人でゴブリンのダンジョンを攻略するぐらいには強いにゃ」
「おお!それは心強いな、村の戦力が少しでも増えれば俺たちも大助かりだからな」
そう言って彼は笑顔で俺たちを歓迎してくれた。この人のためにも俺たちが少しでも力になれたらいいな。
「そんなことよりみゃあらは族長に移住地が見つかったと報告しに行くからハイルは早く見張りに戻るにゃ」
「ああ、早くみんなを安心させてくれ。」
ハイルは元居た物見櫓へと戻っていき、俺たちは族長が居るという村の集会所へと向かった。その途中、俺たちは族長についてミールと話していた。
「なあ、今から会う族長っていうのはどういう人なんだ?」
「この村には9つの種族が暮らしているのにゃがその種族ごとに族長がいるにゃ、今集会所にいるのは翼人族と羊人族の長にゃね」
「9人も族長が居て話し合いは進むのか?」
「族長が居るといっても基本はみんなの意見をまとめて報告したり、山脈の方の魔物が来てるかどうかを言ったりする程度にゃからあんまり長引くことはないにゃね」
「それに何かあったときは翼人族の長がまとめ役になることが多いにゃね」
「へぇ~、一体どんな人なんですか?」
「ふふふ、翼人族の族長はハルのお母さんにゃね!」
「え!?そうなんですか?」
確かにハルの性格的にお母さんが族長というのも納得だな、皆のまとめ役だというのもミール達の扱い方を見るとしっくりくる。
「でも、ハルみたいな頑固者とは全然違うにゃ」
「そうなのか?」
「まあ会ってみたほうが早いにゃ、ほら、あそこが集会所にゃ」
ミールが指差した方向にはこの村の中でもひと際大きな建物があった。円形状に建てられた平屋で数百人が同時に収容できるくらいの大きさだ。
「随分と大きな建物だな」
「みんながここで食事を摂ったり寝泊りしたりするからにゃ、もしもの時には村の避難所になる予定にゃからこれだけの大きさなのにゃ」
ミールが言うにはまだ村のみんながそれぞれで家を持つことができないので基本的には集団で暮らすのが当たり前となっているようだ。
そうして俺たちは集会所の中に入り、族長が居るであろう会議室へと向かった。会議室への扉を開き、中へ入るとそこには二人の女性が座っていた。一人はハルや灯と同じ翼人族の女性だ、ハルと同じ緑色の翼を持っていることからこの人がハルのお母さんなのだろう。
もう一人の女性は羊人族の女性でその手には編み物のようなものをしているのか針で服か何かを編んでいるようだ。
ハルのお母さんはこちらが入ったことに気が付くと椅子から立ち上がり、ミールの方へ勢いよく飛んでいくとそのままミールを抱きしめた。
「あらあらあら!ミールちゃんったら帰っていたのね、ハルちゃんはどうしたのかしら?姿が見えないようだけど、それにそのお二人は?」
「ハル達は見つけた移住地の方で待機してもらっているにゃ、この二人はそこで会ったタツヤとアカリにゃ」
「あらそうなの?あなた達三人で戻ってくるなんて危なくなかった?二人ともようこそ私達の村へ歓迎するわ。私はアルピア、気軽にアルお母さんって呼んでね!」
「あ、ああ…こちらこそよろしく頼む」
「よろしくお願いします、アルお、お母さん…」
ミールの言っていたように普段冷静なハルとは違ってかなり陽気な方だな…
「まあアカリちゃんったらお母さんって!最近はハルも素っ気なくなってしまって寂しかったのよね~、反抗期なのかしら?」
「ハルちゃんも大人になったということですし良い事ではないですか」
「そうだけど、お母さんとしてはもっと甘えて欲しいのよね~」
そういいながら話に入ってきたのは編み物をしていた羊人族の女性だ。
「ミールちゃんもお帰りなさい、それに二人ともようこそこの村へ、私はシイラ、基本的にはみんなのご飯を作っている時以外はここで編み物をしているからいつでも訪ねて頂戴ね」
「あ、はい!よろしくお願いします」
俺たちは彼女に向かい会釈をする。顔を上げると彼女は微笑みながら席に着くように促してくる。
「ほら、三人ともお昼ご飯はもう済ましたかしら?何か作ってこようかしら」
「あっちょっと待って欲しいにゃ、他のみんなも連れてくるから少しだけ待ってて欲しいにゃ!」
「どういうことかしら?ハルちゃん達は移住先で待っているのでしょう?」
「今から連れてくるから少し待ってて欲しいにゃ、アカリお願いするにゃね」
「は、はい!わかりました!」
そういうと灯はダンジョンコアをテーブルの上に置くとそのまま【ダンジョン輸送】のスキルを使い一瞬にして姿を消した。
姿を消した灯に二人は驚いている様子だ。
「え!?アカリちゃんどこに行ってしまったの!?」
「まあ…」
「すぐに戻ってくるから待ってるにゃ」
そしてすぐに湖の拠点に居るハルたちが一人ずつこちらへと現れ、最後に灯が戻ってきた。
「わぁ!ハルちゃん会いたかったわ!お母さんに会えなくて寂しくなかった?」
「ま、待って母さん!今から色々と話すこともあるしいきなり抱き着くのはやめて欲しいわ!」
灯に抱き着いた時のようにアルピアさんはハルに向かって飛びかかろうとしたが、ハルは後ろに下がり抱き着かれないように逃げていた。
「もう、お母さんはハルちゃんが子離れして悲しいわ…前まではいつもお母さん、お母さんって抱き着きに来てくれたのに…」
「それもいつの話なのよ…、それより色々と話さなきゃいけないことも多いしくだらないことに時間を使いたくないわ」
「むぅ…家族とのスキンシップはくだらないなんてないのに…」
そしてアルピアさんは1回咳払いをすると先ほどまでの顔を引き締め、話始めた。
「移住先についても報告して欲しいしひとまずはみんな席について頂戴、シイラ何か彼らにお茶でも出してもらってもいいかしら?」
シイラさんははーいと返事をすると、そのまま席を立ち俺たちへお茶を出すために会議室から出て行った。
「さあ、ハルちゃん、調査の報告をしてもらってもいい?」
そうしてハルは移住先の調査報告をし始めた。
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