第二十七話~俺たちについての説明~
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俺たちは今に至るまでに起こったことを全て包み隠さず伝えることにした。
地球という星の日本という国に暮らしていたこと、そこで王国が再び召喚を試みようとし、その余波で二人一緒に亡くなってしまったこと。死んだ後、神さまのような人にこの世界に転生し、追い詰められている亜人族を救って欲しいと頼まれたこと。転生したときに亜人族に馴染めるように姿を変えてもらったこと。
その他、転生後に起きた出来事なども教えた。スキルを獲得し、魔物を狩りながら生活基盤を整えていた
ことやダンジョンコアを手に入れ、ダンジョンマスターになったことなど。
彼らは俺たちの話を静かに聞いた後、少し相談させて欲しいと言い、話し合いを始めた。
「どうするにゃ?いまいち話が分からなかったにゃ」
「ミール、あなたったら…、村には王国との戦争を経験した仲間だっているのだし王国を襲ったやつらと同じ人族だって知ったらタツヤとアカリを引き入れるのを反対する人もでるかもしれないわ」
「でも今は姿も変わって人族なんてわかるわけないにゃ」
「それはそうなのだけど…」
「おぬしの心配事もわかるがこうしてあやつらも隠してもええことを打ち明けておるし、要らぬ心配のように思えるがのぉ…長達には伝えたら反対するものも出てくるかもしてぬが、わしらの世代は戦争を経験したものもいなくなっておるからのぉ」
「今のところは大丈夫じゃにゃいか?元人族だからって王国の民ってわけじゃにゃいしにゃ」
「おみゃあらはどう思っているんだにゃ?」
そうしてミールは他の3人に話を振る。カイトはこの話合いの中でもメイリアが作った晩飯を食べながら話を聞いていた。
「俺はどっちでもいいっすよ~、飯の材料を提供してくれたし、次の移住地も見つかったしでいいこと尽くめですし!」
「わ、私も二人は悪い人じゃないと思います…、調理の時も手伝ってくれましたし…」
最期に、ハルはこれまで静かに食事をしていたグルに意見を求めた。
「あなたはどうなの?グル」
「メイリアがいいと思うなら、大丈夫だ」
「こりゃだめにゃ、グルのメイリア理論が炸裂してしまってるにゃ」
「グル、あなたったら…」
「あはは!グルはどんな時でも変わらないっすね~」
「え、え?どういうことですか?」
「おぬしが気にすることではないぞ、メイリア」
グルはそのまま静かにメイリアが作った料理を食べ始め、メイリアがあたふたするのを他の人たちは微笑ましく眺めている。
「今の段階であやつらを疑うことは早計だろう、それに彼らを村に連れて帰り、長達に合わせる必要もある。決めるのはそれからでも遅くはない。」
「それもそうね。それに彼らが話した、王国に新たに人間が召喚されるということも気になるわ。もしかしたら王国はここまで逃げた私達を追って進軍してくるかもしれない。そのためには定住の地を見つけ進行に備える必要があるわ。」
そして彼らは話し合いを終わらせたのか、こちらに向き直し、ハルが代表して話始めた。
「ごめんなさいね、色々と手助けしてくれたあなた達を疑ってしまって」
「ああ、それは大丈夫だ。いきなりこんな荒唐無稽なことを言われて疑うなって方が難しいだろう。」
俺もいきなり、自分はお前らの国を侵略した人族で転生して君たちを救いに来た、なんて言われても信じられないだろうからな…
だが、彼らが俺たちに友好的で助かった。もし、ここで敵対するようなことがあれば彼らを助けることが難しくなっていたからな。
「話し合いも終わったにゃら早く飯の続きにゃ!早くしないとカイトとグルに全部食われちゃうにゃ!」
ミールは今もなお飯を食らい続ける二人に追いつくべく再び食事を再開した。
「全くもう…みんな大事な話し合いなのにご飯の方にばっかいって…」
「まあええではないか、タツヤよ、酒はまだあるのか?酒なんて村では貴重品でほとんど飲む機会もないからのぉ」
「ああ、それならまだあるはずだから取ってくるよ、灯も手伝ってもらってもいいかな」
「わかりました!」
「で、でしたら私は食材を取りに行ってもいいでしょうか?まだみんな食べそうなので」
俺たちは食料置き場となっている場所に酒を取りに向かう。酒と食材を取りに来ているときに灯がメイリアに話かけていた。
「みなさん、私達のことを受け入れてくれてありがとうございます!」
「う、うん。アカリちゃんもタツヤさんも悪い人じゃないってみんな理解しているから…それにハルだって、あなた達のことを最初から敵だと思ってなんかいないの。どうしてもみんなの安全を考えると疑わなきゃいけないだけなの」
「私もこんな場面に直面したらどうしたらいいかわかんなくなっちゃいますもん、ハルさんも悪い人じゃないのはわかっていますから、私たちが危ないことをしたと知った時も本気で心配してくれましたからね」
「ハルはみんなのお姉さんみたいな存在なの、年上のグルやガントだって決め事のときはハルの決定に従うし、私もいつもハルに助けてもらってばっかだし…」
「いいお姉さんですね~。私もここに来る前は友達に助けてもらってばっかでしたからよくわかります」
二人とも仲良くやれていそうでよかった。俺は二人の話が一区切りしたのを確認すると、そろそろ戻るように声をかけた。
そして俺たち8人は互いの話をしながらメイリアの料理を食べ、酒も嗜みながら宴会を続けた。灯は酒を飲みたそうにしていたのだが昨日のこともあり、飲酒は控えてもらった。流石にあったばかりの彼らにあの状態の灯は見せられないからな…
俺は宴会の終わりに近づいてくる中、ハルにこれからの予定を尋ねた。
「そうね、ひとまずはここを拠点とさせてもらって装備の手入れなんかをしつつ周辺の調査をしようかしら」
「だったらしばらくはここで暮らすのか?」
「ええ、でもあなた達を村に居る長達にも紹介したいし、数日したらあなたたちに村まで付いて来て欲しいの。それにいつ村がダンジョンから襲われるかもわからないから移住の準備も進めなきゃいけないわ」
「ここからその村までどのくらいなんだ?」
「大体十日程歩いた場所にあるかしら、どうしても魔物の襲撃を警戒しながらの移動になるから時間はかかってしまうわね」
「それなら一つ提案があるのだが…」
俺は灯の【ダンジョン輸送】のスキルを使った長距離移動について説明した。
「ダンジョンマスターになるとそんなこともできるのね…でもだとしたらアカリさえ居れば村とここを繋ぐことができるのね」
「ああ、だから俺が【狼化】を使って一気に村まで距離を縮めればいいから誰か村までの道案内をしてくれれば移動の時間を大幅に短縮できる。」
「なら私たちもこちらでの移住の準備を進めることができるし、仲間たちもこちらに来やすくなるわね」
「おみゃあらは便利なことができるにゃね~」
「こちらの世界の人はスキルの獲得ができないのか?」
俺たちはステータスやスキルについて説明したのだが、どうやらこちたの世界の人にはステータスやスキルというものがあまり身近なものではないようだ。
「昔は特殊な魔道具があれば確認できたらしいけど、こちらへ逃げてくるときにそういった魔道具は無くなってしまったの」
魔道具とは魔法を付与された道具全般を指す言葉らしい、村にも水を出す石や、魔法の矢を放つ弓などがあるらしいがそういったものは村でも作れるものが限られ、貴重品として扱われているらしい。
「一応、灯が【鑑定】を持ってはいるがまだスキルまで全てを見ることができないしな」
ちなみに、彼らのレベルを確認したところ一番低いメイリアでもレベル10、一番高いグルはレベル16と彼らもかなり高いレベルのようだ。
「技術なんかも村では子供たちに教えて少しでも生きる術を身に着けるようにしているわね」
「話を戻すのだけど、ダンジョンコアを村に届けるならミールを道案内に連れて行ってもらってもいいかしら」
「おみゃあらのことは私にまかせるにゃ!」
「ああ、それで大丈夫だ」「よろしくお願いします!」
「ありがとうね二人とも、それじゃあ話もここら辺にして片付けをしましょうか」
「それなら、片付けも終わったらお風呂に入りませんか?昨日できたばかりなんですが、私その時酔ってて入った記憶がないんですよね」
「あら、そんなのがあるのなら入らせて頂こうかしら、ミールもメイリアも一緒にどう?」
「旅の間は水浴びもできなかったから汗を流したいにゃ!」
「私も入りたいです…」
「なら片付けが終わったらみんなで入りましょう!」
俺たちは食事で出たゴミなどを片付けた後、灯の魔法で風呂を溜め、女性陣はみんなで風呂に入りに行った。
そして残された男性陣は彼女らが風呂から上がる間、雑談をしていた。
「しかし、どこの世界の人間も風呂には目がないのぉ…」
「俺も久しぶりに風呂に入れるのは嬉しいっすね~、グルもそう思うっすよね?」
「ああ…」
俺たちは互いのことについて話し合った。地球ではどんな酒があるかや料理、彼らがここに来るまでに倒した魔物についてなど様々なことを話し合っていると、彼女らが風呂から上がってきたようだ。
「ほら男ども、さっさと風呂に入って汗臭い体を洗ってくるにゃ!」
「石鹸以外にもいろんなものがあるのね、髪も翼も奇麗になったわ」
「メイリアも抱き心地がっよくなったにゃ!」
「わっ!もう、ミールちゃんったら…」
最後に灯が出てきたのだがどうやら少しぎこちない感じがする、俺と目を合わせるのだがすぐに目を逸らす。
「灯、どうかしたのか?」
「い、いえ!お気になさらず…!そ、それよりもお兄さんもお風呂どうぞ!」
「あ、あぁ、それならいいのだが…」
少し違和感もあるのだが、あまり詮索しない方がいいだろう。俺たちは、灯に風呂を温め直してもらい、風呂に入った。グルとカイトは体が大きく少し風呂も狭く感じたが俺たち四人は体を洗い、汚れを落とし風呂を楽しんだ。
風呂から上がり、就寝するために俺たちは小屋へ入り、彼ら6人は男女分かれてテントに入っていった。
灯はまだ少し照れくさそうにしているが夜も更けてきたので眠たそうにしている。また明日からは彼らと一緒に行動をしていくので体を休めるためにも俺たちは布団に入ることにした。
「今日は彼らが俺たちのことを受け入れてくれて安心したな…」
「ええ、皆さん優しい人たちですし、彼らのためにも何か手助けになることをしたいですね…」
「ああ、明日からも頑張っていこう」
そうして、しばらくの間沈黙が続き、俺は眠るために目を閉じようとすると、灯が話かけてきた。
「あの、お兄さん…」
「ん?どうした?」
「あのですね、昨日のことなんですけど私って酔ってて昨日の記憶があまりないのですが、お風呂には入っていたわけじゃないですか、も、もしかしてお兄さんが一緒に入ってくれたんですか…?」
しまった、そこらへんの説明は話しづらいので黙っていたのだがまさか今になって勘付かれてしまうとは…これだと今まで黙っていたせいで余計やましさが増してしまっている…
「あのだな、それはな…」
「ど、どうなんですか?本当に入ったんですか…!?」
流石にここまで詰め寄られたら流石に言い逃れができるはずもなく、俺は正直に白状することにした。
「あ~、そうなんだが誤解のないように言うが俺は決して灯に邪な気持ちを抱いたり変なことをしたりしていないからな!それだけは神に誓って言える!」
「うぅ…まさか酔っている時にお兄さんと初めてお風呂に入るなんて…私のバカ…」
灯が胸の中で何か呟いているようだが小さすぎて何を言っているかがわからない。
「灯…?」
「うぅ~、どこまで見ましたか…?」
「いや、あまり見ないようにしていたから、背中を洗ったときに少し見た程度だろうか…?他はタオルを巻いていたから見ていないと思う…」
「まさか人生初めてお父さん以外で男の人と一緒に風呂に入ったのを酔っていて覚えていないとは…」
女の子が異性と酔っている内にお風呂に入っていたなんて日本だったら捕まっていてもおかしくないことだしな…謝ったら許される問題じゃないしな…
「どうしたら許してもらえるだろうか…?」
「そ、そうですね…でしたら1つだけ私のお願いを聞いてもらってもいいでしょうか?」
「そのくらいで許して貰えるなら何でもするのだが、一体どんな願い何だ?」
「それはまた今度、お願いするときに言います…」
「ああ、俺にできることの範囲で頼む」
「ふふ、覚悟しててくださいね?」
どんなお願いをされるか少し怖いが黙っていた罰だと思い、甘んじで受け入れるとしよう。寝る前の雑談も終わり俺たちは眠りに就く。いつもより少しだけ灯が近づいているように感じた。
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