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第二十一話~お酒は二十歳になってから~

見に来ていただきありがとうございます。

俺たちは拠点に帰るために、このゴブリン洞窟で倒したゴブリン達の解体を進めていく、倒したゴブリンを可能な限り集めつつ【解体】を使い、魔石と肉に分けていく。


ゴブリンの肉はあまりおいしそうな見た目ではないため拠点には送らないことにする。それに、ゴブリン・キングの部屋にあった食料させあれば一か月は余裕で生活ができそうだ。


そうしてゴブリンを解体して手に入れた魔石やゴブリン・キングの部屋にあった食べ物と酒、その他ランプなんかの家具も使えそうなものは拠点に全て送った。


作業を終えた俺たちは拠点に戻るために洞窟の外に出た。外はもうすでに日も沈み、辺り一帯は暗闇に覆われていた。


「この暗がりの中、拠点まで帰れそうですかね…?」


「ああ、【狼化】のスキルのおかげで夜でも多少目が効くようになったしこの辺りの地形はこれまでの探索である程度覚えている。【探知】を使いつつ拠点の方角へ一直線でいけば迷わずに着けるだろう。」


俺は灯を背に乗せると最高速度で拠点まで直進していく、いくつものレベルアップを経て上がってDEXのおかげで30分程で拠点までつくことができた。


拠点についた俺たちは食事をするために火を起こし、ゴブリン・キングの部屋にあった肉を焼き、果物を食した。俺は部屋にあった酒も少々頂いた。ダンジョンコアでの召喚にも消費DPに見合った量を召喚することはできないし、今の段階でDPを無駄遣いすることはできない。


手に入れた酒をちまちま飲んでいると灯が興味を示した。


「お酒って美味しいんですか?」


「飲んでみるか?日本に居たころじゃあ二十歳になるまで飲めなかったがこの世界じゃあそんな法律どこにも存在しないしな。」


「なら、少しだけ飲んでみようかな…」


灯はコップに酒を少し注ぐと、匂いを少し嗅ぎ、一気に飲み干した。


「う~ん…、もう少し頂いてもいいでしょうか?」


「ああそれはいいんだがあまり飲みすぎて酔いすぎないようにしてくれよ?」


「大丈夫ですよ、まだ少量しか飲んでいませんし」


そういい、2杯、3杯とドンドンと酒を飲んでいく、流石に飲みすぎだと思い灯に声を掛けようとすると。


「大丈夫です!いつも無茶ばっかするお兄さんに言われる筋合いはありません!」


これは完全に酔っぱらっちゃてるな…


「流石にこれ以上飲んだら明日に響くから今日はここら辺でお風呂に入って寝よう。」


流石にゴブリン洞窟で返り血だったり匂いが移ったりしているので風呂に入ってさっぱりしてから眠りたい。


「お願いだ灯、ドラム缶に水を溜めてくれ。」


「どうしましょうね~。お兄さんは私が何度も危ないことをしないでって言っても聞いてくれませんでしたしたしね~。」


「それに関しては申し訳ないと思っているけど灯を守るためにはどうしても必要なことなんだったんだって。」


「そんなことを言えば私が納得するとでも思っているんですか?お兄さんの命はもうお兄さんだけのものではないと何度言えばわかるんですか?」


「どうしたら灯は許してくれるんだよ…?」


「そうですね~、じゃあ一緒にお風呂に入ってくれたら考えて上げてもいいですよ。」


「はぁ!?」


いきなり何を言い出すんだ?酔っているからってちょっとおかしいぞ?


「灯、絶対に酔いが醒めたら後悔するからやめた方がいいって」


「いいじゃないですか、どうせお兄さんは私のことなんて子供としか思っていないんですし」


「それにドラム缶風呂に二人では入りきらないだろう?」


「そんなのDPで出しちゃえばいいじゃないですか!ちょうどゴブリン・キングから手に入れたダンジョンコアからDPが手に入ったんですし!」


そういうと灯はダンジョンコアの方まで飛んでいき操作し始めると俺たちが暮らしている小屋の隣に4人程が寛げる程度の大きさの檜風呂が出現した。


「ほら!これで一緒に入れますよね!?」


「お湯だってどうするんだよ!?流石にドラム缶と違って焚火で温めることなんてできないぞ!」


「それだって魔法で解決すればいいんですよ!」


今度はステータスメニューを開くと何かのスキルを操作しているようだ。操作が終わったのか灯はメニューを閉じると風呂に向かって魔法を使用し始めた。


「『アクアウェーブ』『ヒート』!」


「いったいいくつレベルを上げたんだ…?」


『アクアウェーブ』は【初級水魔法】をlv.Maxにしたのだろうが、『ヒート』は何の魔法だ?【中級火魔法】を取得したのか?いやそれよりも【家事魔法】の方が可能性が高いか…?


「そんなことどうでもいいじゃないですか!ほらお風呂も溜まりましたよ!さっさと服を脱いで下さい!脱がしてあげますからバンザイしてください!」


「おい、ちょっと待ってくれ!」


灯はこちらの服を掴むと空に飛んでいき無理やり脱がそうとしてくる。こんなことのためにスキルを使うなんて…!


流石に服を破られるのだけは避けたい、これ以外に服がないしずっと上半身裸ではすごいしたくない。灯は勢いよく飛んで脱がしてくる、このままでは破れるので大人しく上だけは脱がされることにした。


「後はズボンだけですよ、大人しくしていれば優しくしてあげますから…」


「もう一度よく考えてくれ!絶対に起きたとき後悔するから!」


「そんなにお兄さんは私と一緒が嫌なんですか…?う、う、うぅ…」


灯は翼で顔を覆うと泣き出してしまった。どうすればいいんだ…


「あ~もう、今回だけだからな…」


俺が根負けして風呂に入ることを了承すると灯は顔を覆っていた翼を広げると再び俺の周りを飛び回りだした。


「やった~~~!じゃあついでに石鹸やシャンプーなんかも出しちゃいましょ~!」


灯は再びダンジョンコアの方へ行き、操作をすると石鹸やシャンプーボトル、リンスなど色々なものが出てきた。今日だけでDPも結構消費した気がするな…


「こういうのも欲しかったんですよね~お風呂には入れても髪なんかは少しずつ傷んでいきますし、DPに余裕がなかったので贅沢もできませんでしたし。」



灯は鼻歌を奏でながら腕に荷物を抱えながらこちらに寄ってきた。


「ほら、早くお風呂に入りましょう!」


灯が荷物を風呂場に置いて、服を脱ぐ合間に俺はこの現実を諦めてもう風呂に入ることに集中することにした。木を板に変えて風呂の周りに敷き詰め、桶と椅子を作製し置いておく。壁なんかは明日設置すればいいだろう…


そうして入るための準備を終えた俺は残った服を脱ぎ、灯が召喚したタオルで大事な場所を隠す。


「ほらお兄さんはここに座ってください!私が洗ってあげますから!」


灯に促され、椅子に座ると灯は石鹸を泡立てたタオルで背中を洗ってくれる、普段はお湯で体を流したり体を拭いたりする程度だったが、やはりちゃんと体を洗えるのは気持ちがいいな。


「でも不思議ですよね…あれだけ傷を負っても魔法で治っちゃうんですから。」


「ああ、灯がいるおかげだよ。」


「だからって危ないことをしてもいいわけじゃないんですよ~、そうだ!」


「灯?何を思いついたんだ…?」


何かものすごい嫌な予感がする。背中から悪酔いした人間の良からぬ気配を感じると背中に一瞬痛みが走った。


「痛っ、何したんだ灯…?」


「えへへ~、お兄さんの背中に傷をつけちゃいましたぁ~。」


手を伸ばし背中の方にできた傷を確認するとそれは噛み跡のようなものがあった。そのうち消えるだろうがこれを灯が酔いから醒めたとき見たら勘違いされそうだな…


「な、なぁ。流石にこれは治してくれないでしょうか灯さん…?」


「治してあげませ~ん」


灯はふふふと笑うとそのまま背中を洗い終えたのかタオルを離した。


「ほら!前は自分で洗ってくださいね~。」


そうしてこちらにタオルをこちらに渡してくると俺に背中を合わせるように体を洗い始めた。


「久しぶりにしっかりと体を洗えるのはいいですね~。」


上機嫌そうな灯の声を聴いていると手に入れたDPの使い道はこれでよかったと思える。


体を拭き終え、灯が体を洗い終えるまで待とうかなと思っていると声がかかった。


「すみません、翼を洗ってもらってもいいですか?流石に手が届かなくて…」


今までは軽くお湯で流す程度だったらしいがこうして石鹸やらが手に入った今となっては奇麗にしたいだろうからな。俺は、灯の翼を洗うために後ろを振り返った。


これまでに何回か灯の翼を服に通すために見たことはあるのだが今は体を洗ったせいもあってか艶めかしく見える。


意識しないようにしつつ、灯の翼を洗っていく、羽の一枚一枚が傷つかないように丁寧に洗っていく。


「お兄さんに翼を洗ってもらうのもいいですね~。少しくすぐったいですけど」


灯は体を揺らしながら少しくすぐったそうにしている。こうしていると子供の面倒をみているようで邪な気持ちも次第に落ち着いてくる。


そのまま無心で灯の翼を洗い終え、ようやく俺たちは風呂に入ることにした。


「広々と体を伸ばして風呂に入るのもいつ振りだろうな…」


「ドラム缶風呂だと翼がある分窮屈でしたしね~」


「今日の疲れがすべて吹き飛ぶな…」


「うふふ、そうですね~」


灯はこちらへともたれかかってくると瞼を閉じ、少しうとうとしてきた。


「ん…このまま眠っちゃいそうです…」


お酒でいい感じに酔いも回り流石に眠くなってしまったか。今日は戦闘続きだったし仕方ないな…


「灯、風呂で寝るのは危ないから上がって体を拭いてから着替えて寝よう。」


「お兄さんがやって下さい…もう無理です…」


「ちょっと灯!」


灯は眠ってしまうと、声を掛けても体を揺すっても全く起き上がる気配がない。このまま放置するわけにもいかず、しょうがないので灯を抱え上げ体が冷える前に拭こうとするのだが灯はこちらに抱き着くと離れようとしない。


「灯、このままじゃ体を拭けないから少し離れてくれ」


「うぅん…」


灯は唸り声を上げるだけで全然起きる気配がない。仕方なく灯を抱えた状態で二人の体を可能な限り拭いていく。ステータスが上がったおかげで片手でも灯を抱えることができるのだが灯がこちらに抱き着く力も当然上がっているので離せそうな気がしない。


丁寧に灯の体を拭いていき、水を吸い取った翼も水を落としておく、これをしておかないと体が冷えて風邪をひいてしまう。流石にバスタオルを取って体を覗くことはできないため少しでも水分を取ることにする。


服もこの状態だと碌に切ることもできない、俺はズボンまでは履くことができたが上は灯がしがみ付いているせいで着ることができなかった。


灯の着替えもしてあげたかったのだが、しがみ付かれ、片手では灯の翼を服に通すこともできず、このままずっと外に入れは湯冷めしてしまうので小屋に入ることにした。


俺も今日の戦闘では怪我してばっかだったし思った以上に疲れていたのだろう、酒を飲んで少し酔っているのもあり、考えるのも億劫になってきたのでもう寝てしまうことにした。


この状態で寝るのは間違いなくよくないとはわかっていても、この疲労の中もうどうでもよくなり灯に抱き着かれたまま布団に入った。


明日、朝起きたら、その時は明日の俺がなんとかしてくれるだろう。


俺は布団にはいるとすぐに眠くなり眠りに付いた。







読んでいただきありがとうございました。


誤字・脱字指摘していただけるとありがたいです。


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