第十四話~ゴブリンの巣~
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昨日、俺たちが探索で感じた疑問とは、ゴブリンとの戦闘が多すぎることだ。
数体程度ならここ数日でも1回の戦闘で戦うこともあったのだが、昨日では5体以上の群れがそれほど離れていない距離に複数存在するなんてことがあった。
ゴブリンの中には通常の種類とは違い石の剣や槍を持った。ゴブリンソードマンやゴブリンランサーという上位種のような魔物も複数確認できた。
そいつらを倒すと遠くから、増援が来ているのを【探知】で見つけることができたので俺たちは長期戦になることを恐れ、撤退を選択した。
「でもどうしてあんなにゴブリンがあそこにいたんでしょうね?」
「偶然だったらそれでいいんだがもしゴブリンの巣みたいなものがあれば早めに駆除しておきたいな。」
「拠点からそれほど離れてもいないですし数が増えてこちらに雪崩込んできたら倒し切れるか怪しいですしね…」
「ああ、今の段階でどのくらいの数がいるかわからないができる限り数を減らしておいた方がいいだろう。俺たちが遭遇したのが巣からはぶれたやつなのか、周辺探索に駆り出されたやつなのかはわからないが…」
巣の一掃ができなくても巣の規模やどの程度の強さの魔物がいるかは調査しておきたい。最悪今いる拠点を移す必要もでてくるかもしれないからな。
そうして、俺たちはゴブリン大量発生の原因を突き止めるために昨日ゴブリンが居た場所へと向かう。
「えへへ、もう【飛行】にも慣れてきましたね。」
灯は【飛行】の練習として移動の時などは常に飛んでいるのだが、あまり遠くで飛んでいると奇襲の時に守ることができないため、今は俺の肩に手をのせる形で飛んでいる。
「空に飛べるだけで、ほとんどの敵が攻撃できなくなるからな。戦闘中も遠距離攻撃のみ気をつければいいだけだし。」
【探知】を使用しつつ辺りに魔物がいないのを確認しながら俺たちは昨日、ゴブリンの集団と遭遇した場所までやってきた。
「ここにはもういないみたいですね。」
「ああ、この前の増援は向こうの方から来たし今日はそちらに行ってみるか。」
俺たちは昨日のゴブリンが増援としてやってきた方向へ進んでいると昨日と同じようにゴブリンの集団が【探知】に引っ掛かった。
「やっぱりここら辺にこいつらの根城があるのは確定だとみていいだろうな。」
「じゃあいつも通り灯の魔法から始めよう。」
「はい。」
俺は茂みに隠れながらゴブリンたちに近づくと、灯が魔法を発動させた。
灯の周囲には同時に5本の火の矢が出現し勢いよくゴブリンに向かって飛んで行った。
レベルアップを経て格段と威力の上がった魔法はゴブリンたちの体に突き刺さるとゴブリンは一撃で絶命しその場に倒れた。
仲間が倒れたことに焦ったところを茂みに隠れていた俺は飛び出し、ゴブリンの油断をついて【格闘術】の『ためる』、【剣術】の『スラッシュ』を使用して斬りかかった。
スキルのレベルが上がったおかげで『ためる』による攻撃力の上昇、『スラッシュ』の攻撃範囲拡大により一気に3体のゴブリンを仕留め、となりにいた2体のコブリンの腕を吹き飛ばした。
そのまま腕を飛ばされたことで動揺している2体を剣でなぎ倒した。
残りゴブリンは6体、ようやく状況を理解したようで一番後ろにいる剣を持ったリーダーのようなやつが周囲のゴブリンに何か指示を出すと5体のゴブリンが突撃してきた。
初日の頃なら苦戦しただろうが、今はステータスの上昇もあり、こいつらでも危なげもなく戦うことができる。
『スラッシュ』で5体のうち3体を弾き飛ばし、残りの2体のうち槍を持った方がこちらへ攻撃を仕掛けてくるが、ひらりと避け、空いた横腹に剣を叩き込みゴブリンを真っ二つにした。
もう1体のコブリンは仲間がやられ逃げ出そうとするが、後ろを振り向いたところを攻撃し、とどめを刺した。
弾き飛ばした三体も灯がとどめを刺したのを確認すると最後のリーダーらしきゴブリンを倒そうと居た場所へ視線を向けるがすでに逃走を開始し離れた場所に行こうとしていた。
「逃がすか!」
俺は【狼化】のスキルを発動し上昇したDEXを生かし一気に距離を縮めるとゴブリンの脳天に足を振り下ろした。
「お疲れ様です!でもこいつ倒しちゃってよかったんでしょうか?巣の方に逃げているのなら生かして泳がすのもよかった気もしますが。」
「ああ、でもこいつに俺たちの存在を伝えられても困るしな。幸い逃げた方向はわかっているし、そっちの方向へ行けば【探知】に何かしら引っ掛かるだろう。」
「それじゃあ魔石だけ回収して進みましょうか!」
俺たちは魔石を回収した後、先ほどゴブリンが逃げ出しそうになった方向へを足を向けた。
進んでいくうちに1時間ほどが経っただろうか、数回のゴブリンの群れとの戦闘の後、ゴブリンの巣と思しき洞窟を発見した。
洞窟の入り口からはゴブリンが頻繁に出入りしており、食料なども運んでいるようだ。
「あれ見てくださいよ、ファング・ボアですよ。ゴブリンでも倒せるんですね…」
「数で押し切ったのか、ファング・ボアを狩れるほどの個体がこの中にいるのか。」
「それにしてもこれだけの数がいると洞窟内の制圧は大変そうですね。」
「ああ、やるにしても夜、あいつらが寝静まってから奇襲をかけるのがいいだろうな。今倒しに行っても食料調達のやつらが帰って来たら挟み撃ちされるだろうしな。」
「ひとまずは拠点に帰って作戦を練ろう。」
俺たちはゴブリンの巣の位置を覚え、ひとまずは拠点へと引き返すことにした。
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