04 英雄職⋯⋯ではないけど(前)
狭間の街ディアス=オーリア。
魔界と人間界の境界線に位置するこの都市は防衛ラインとしての機能を有している。もちろん、魔界から流れてくる魔物や自然発生する魔物の掃討も担っている。
故に都市の周囲を高々と石壁で囲っているため、別名城砦都市と呼ばれるようになった。
そんな話を金髪男───アレガスから聞いているとその街の関所に着いた。
「身分証の提示を」
「商業ギルドカードです」
「うむ、通って良し。そこの者も身分証の提示を」
「持ってないんだが⋯⋯なんとかならないか?」
「持ってない?見たところ罪人の紋は刻まれていないようだし、通行料で勘弁してやる」
俺は通行料の銀貨1枚を払うとその場を後にした。
因みにこのお金はアレガスから借りたものだ。記憶のことを話していたときに身分証や持ち金もないことを伝えると通行料をやると言ってきた。必ず返すと俺が言うと、「困ったときはお互い様だ」と遠慮された。
「ここでお別れだな。コウは冒険者ギルドに行くと良い。年齢人種問わず登録ができるから身分証や稼ぎにはもってこいだぞ」
「本当に色々助かった、ありがとう」
「良いってことよ!それと最後に忠告だ、このあたりの魔物は初心者には厳しい強さだから無理は絶対にするな。また会えたらよろしくな」
「分かった、心に刻んでおこう」
そう言うとアレガスは後ろ手で手を振りながら去っていった。本当に優しいやつだ、この世界で初めて会った人間がアイツで良かった。
「冒険者ギルド⋯⋯ここか」
荒くれ者の溜まり場みたいな騒がしいものを想像していたが意外と賑やかな雰囲気が強い。コルクボードのような場所に仲間たちと話し合う者たちもいれば、テーブルに腰掛け談笑している者もいる。確かに誰でもなれるほどには治安が安定しているようだ。
俺は受付の場所へ足を運んだ。
「ギルドカードが欲しいんだが」
「冒険者登録ですね、では手数料として銅貨3枚頂きます」
茶髪の女性に銅貨を渡す。すると女性は水晶を出す。占いとかでよく見るようなものだ。
「これは真価の玉と言いまして、水晶に触れた人のステータスを見ることができます。あ、魔力の有無に関わらずに見れますので大丈夫ですよ」
魔力の有無?そもそも俺に魔力があるかどうかも知らないからそういう機能じゃなくてよかったよ⋯⋯。というかステータスが見れるなら関所の場所にこれは位置しておけば対策になるんじゃないのか?
取り敢えず手を乗せてみる。
「さて結果は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え」
「どうしたんだ?」
なぜか水晶を覗いた瞬間硬直した女性。わずかに身体が震えている気がする。
なにか不備があったんだろうか。さてはあのお気楽神が変な細工でもしたんじゃないだろうな。
嫌な予感しかしないが、俺も一緒に覗き込むと一気に血の気が引いた。
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名前:星橋 衡(不明)
種族:文字化け
職業:なし
Lv:1*
HP:10000/10000*
MP:10000/10000*
STR(基礎攻撃力):100*
STK(攻撃力):10
VIT(基礎防御力):100*
DEF(防御力):12
INT(知力):100*
RES(抵抗):100*
DEX(器用):100*
AGI(素早さ):100*
LUC(幸運):100*
《技能》
《称号》
世界の管理者,転生者,究明者
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これやばくないか⋯⋯。
明らかに常識外れ───チートじゃない、か?ステータスが高いかどうかわからないな。100が平均値かもしれない⋯⋯HPはどうしようもないな。
「あのーなにか問題がありましたかね⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
流石に無理があるか。こんな異常なステータス値⋯⋯なんて説明すればいいか────。
「すみませんが、私と一緒に来てくれませんか?」
「えーっと、どちらに?」
「この冒険者ギルドの最高責任者───ギルドマスターのところへ、です」
終わった⋯⋯。説明しようがないだろ。「異世界の神様に言われてこの世界を管理しに来ているんです!」なんて頭のおかしいこと。
現実が甘くないように、異世界モノのテンプレも甘くはないようだ。
2本投稿1発目です。
因みにタイトルはボキャブラリーの少なさが露呈しまくってるように意味がないです(¯―¯٥)