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プロローグ:禁忌の魔術

 賑わった街の中心でギラギラと光った巨大な建物、ここにはこの国の長がいる。スクラスト王国第四十二代国王 ユリン=スクラスト、彼はこの王国が建国以来の窮地に追い詰められていた。

「陛下、近年また魔物の強さが強くなってきています。我が軍の兵士も年々殉死が増えて今や城下町を守るのが精一杯、このままでは……」

兵士長は非常に憔悴しきった顔で弱々しい声で国王に進言した。今ではこんな有様だが二年も前には非常に凛々しく力強い兵士の中の兵士と呼ばれるような男だったというのだからどれほどこの国が崖際まで追い詰められているかなど簡単に想像出来よう。

「こうなれば封印された()()()()を使うしか無かろう。」

王がその言葉を察した途端、周りの年寄り共は大層慌てた様子でざわざわとしだしその中の一人魔術師長が国王の前に出張った。

「陛下!その方法とやら、ご自分が何をしようとしているのか分かっていらっしゃるのですか!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あの魔術は神を冒涜しています!」

まるで仇敵を見るかのようなその目を国王は許し、なんとも悲しい目をして魔術師長の方を見つめた。

「分かっておる、しかしこの方法しかもう我が国の民たちを守る方法がないのだ。この悪魔のような所業をすることでしかお前たちを救う術も見つけられる愚かな私を許せ。」

謁見の間はしばらくの間、しんと静まり返り誰もが気まずい顔をして俯いていた。時間だけが刻一刻と過ぎていく中、一人の青年が手を挙げた。

「陛下、今まで黙っていたことがあります。私は長年その魔法を密かに研究しておりました。」

その一言に周りは騒然とし一同に青年魔術師の方を見た。国王が許す、申せと言うと青年は王の前でひざまづき、こう続けた。

「私の研究ではこの魔術は人ではなくともある程度知性があれば良いようでありまして、人の姿を保つ為のただ一人の人間と残り四つの生きた魔物の魂で十分成功致します。」

周りはより一層ざわめき、青年に向けて悪魔だと言う声まで聞こえてきた。仕方もない、倫理的にも宗教的にも超えてはいけない一線を超えたような、そんな研究をしているなんて知れればそんなこと至極当然の反応であろう。

「皆の者、静粛に」

その凛とした声が辺りに響くと途端に声は止み、一同ぴしりとしてその顔は王の方へと向いた。

「その方、その研究にて生まれた子が既にどこかにいるのはそのバツの悪そうな顔で分かっておる。今よりその子を連れて参れ。他のものは直ちに我が国防衛のための準備に取り掛かれ。」

そう言うと皆一斉に敬礼し謁見の間を出ていった。そうして魔物と人の魂を持った勇者はこの世に生を成した。皆は彼を魔術師の勇断により生まれた者、勇者と呼ぶようになった。

 これはある一人の少年の物語、ある者は称えまたある者は嘆きそしてまたある者は憎んだ勇者の物語。

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