TS:7 真打ち登場
動物万歳
…ここは?
俺はいつの間にか意識を失っていたらしい
周りが騒がしいな…
全身に感じる脱力感に何とか抗い重く閉じていた瞼を開くとそこには―
「…棗?」
最初俺はそれが棗だと気付くのに時間がかかった。
何人もの男に蹴られ叩かれている棗の顔はもう誰だか分からない位に腫れ上がり、腕や足はどれも確実に折れている。
明らかな過剰攻撃―既に虫の息の棗をそいつらはお構い無しに殴り叩き蹴る。
「やめろ…」
それ以上やったら
「やめろ…!」
棗が死んじまう!
「やめろぉぉおぉ!!」
喉が張り裂けんばかりの勢いで叫んだ俺の声に男共の動きが止まり俺の方に向き直る
「うほっ、ようやくお姫様のお目覚めだぜ」
「ったく待たせやがってお陰で暇潰しにコイツで遊ぶしかなかったじゃねぇかよ」
「もう何の反応もなくて飽きてきた事だし次は優理ちゃんに遊んでもらうか」
―何故…俺の名前を知っている?
俺が男の頃ならまだ分かる、だが今の俺はそれほど有名ではないはずだなのに何でコイツ等は俺の事を知っている?
「まぁ君に恨みはないけどこれも依頼でね」
―依頼―?
「何の事だか分かんないって顔だね〜?つまり君とアッチの坊主の事が気に入らない人間が君達に少し痛い目にあってもらおうって魂胆で俺等に依頼してきたのよ」
俺と棗が目障りな―
まさか…いやいくらなんでも…
「しっかし君も悲惨だね?君のお兄さんだよ依頼主♪」
正…
仮にも従兄弟でありながらそこまで俺が憎いか…幼馴染みの棗までそんなに憎かったのか!アイツはアンタをあれでも尊敬してたんだぞ!?
「じゃあそろそろ優理ちゃんには俺達と遊んで貰うよ?」
男達は俺に群がり制服に手をかける
「や、やめろっ!」
「抵抗しようとしても無駄無駄♪君の体にはまだ薬が残ってるんだからね」
「うはっなんだよコイツ予想以上の上玉じゃねぇか!」
「こんだけでけぇ胸なんて実際に見たのは初めてだぜ俺」
制服は男達に引き裂かれ露になった肌や胸を男達のゴツゴツした手が撫で回す
以前痴漢にあったときと同じおぞけのするような感覚に優理は恐怖した
「や、やめろ!やめろ!!」
だが薬で痺れた体は言うことを聞かないため抵抗したくても出来ない
「うっは、パンツ黒かよいいねぇ〜」
ついに男達の手は下腹部に伸びスカートもずり下ろされる
「…っ!やめ、やめろ!」
必死に身を捩ろうとジタバタする優理、だが男達に抑えつけられいくらもがいても少しも動けない
「ヒュー♪マジでいい女だね〜」
痴漢にあった時もそうだが今優理は震えていた。得体の知れない感情─そう恐怖に
(助けて!助けて!)
生まれても始めてかもしれない哀願も口を塞がれては心の中でしか叫べない
男の手がパンツにかかろうとした正にその瞬間…
「ゅ…優理から、その汚い手を放せ…!」
満身創痍の棗が這いずりながら男達の方にやってくる。
「はぁ?お前マジしつけぇって…もういい死んどけ」
そして無慈悲な一撃が棗に振り下ろされ…
─ガキィンッ!
「グァッ!?」
ようとした瞬間何かが男を襲い、男はくぐもった悲鳴とともに倒れた
「な、なんだ!?」
いきなり廃屋の中の明かりが消え、辺りからは獣の様な唸り声、いや獣そのものがいた
「なんだよこいつらは!?」
男達をいつの間にか囲んでいた様々な獣の中からリーダーと思わしき獣が一歩でる。それは優理のよく知る相手でもあった
「小次郎!?」
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side:小次郎
「ワン!(ふん、屑の分際で俺のダチを襲うとはいい度胸だぜ!)」
「なんだこの犬!」
「ニャア!(無礼者!この方はこの街のボス、小次郎様だぞ!貴様の様な輩が気安く話しかけていいと思うな!)」
威嚇の声とともに群れの中から飛び出る猫、猫、犬、鼠、鴉、etc…
暗闇のなか夜目の聞かない男達は…
「ギャアーッ!?」
「俺の顔があああ!?」
「そこは、そこは止めろっ…アーッ!?」
なすすべもなく動物達に叩きのめされたのであった
合掌
後二、三話で完結です