TS:5 悪夢の始まり(前編)
優理だ、今回はそれなりに事態が動くぜ
とりあえず俺はおしとやかな女になるつもりはない以上
カタカタカタ…
民家の光は消え、深夜の闇に街も静まりかえる頃、根岸正は部屋の電気を消しながらパソコンに向かっていた。
「…ちくしょう……」
正は今日生徒会長を辞任した。代わりに生徒会長となったのは後輩の相坂棗だ
「…ちくしょう」
彼が毛嫌いする弟優理がある日突然女になった日から自分に振りかかる不幸の数々
最愛の妹梨華も何故かアイツにだけベッタリだ、見た目は確かに美人正自身も嫌らしい目で見ることも多い
血は繋がっていない妹になった弟に、梨華とは違う意味で正は執着していた。
「…くくく」
自分から生徒会長の座を奪った相坂には復讐を
自分よりも梨華になつかれている優理にはお仕置きをしなくてはならない
頭の中で優理と棗をそれぞれ好きなように仕打ちするその表情はすでに狂人の者になっていた。
「見てろよ…」
キーを打つ指が止まり彼の復讐の為の準備が整う
「優理…一応親戚だからな、お前は可愛がるだけにしてやるよ…」
画面に写るのはホームページ、最近一部の若者の間で流行っている依頼請け負い人の部屋というサイトだ
「相坂…幼馴染みだから多目に見ておいてやったが調子に乗りすぎたな…二度と調子に乗れなくしてやるよ…フヒヒ」
彼がそのサイトに依頼した内容は脅しだったのだが掲示板に記された内容は
─相坂棗─リンチ
─神谷優理─輪姦
その日、本人達が知らない所で少年達は危険な存在の獲物となったのだった。
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「優理」
「棗?」
それは唐突だった
棗はごく自然に俺の前に出た。
今俺達は例の如く鮫島(2話参照)率いる不良に囲まれている。
「おい相坂ぁ…神谷の野郎はどこ行きやがった?」
相変わらずしつこい奴だな鮫島…
それにしても何か言おうにも棗が邪魔で前に出れねぇぞ
「優理なら引っ越したよ残念だったね」
まぁ一応そういう事情にはなってるけどよぉ…それをコイツに言っちゃうと多分
「そうか神谷はもういねぇのか…なら代わりにオメェでウサをはらさせて貰うぜ」
やっぱりこうなるんだよな本当に面倒な奴だ
「棗退け」
とりあえず襲ってくるなら逃げるか応戦するかだが俺は応戦の方を選んだ
だが棗は一向にどこうとしない俺を背中に隠すように庇っている。
なんだか変な感じだな…こいつがこんなにも必死に俺を守ろうとするのが不思議と嫌な気分じゃない
俺はずっと一人だった
だけど今では心を許せる人々が少なからずいる
それがなんとなく心地良い
(まぁだからといって黙ってみてるだけでもねぇけどな)
棗に向かってくる三人の不良を棗の後ろから滑るように飛び出た俺はそれぞれ一撃でのした
「なっ、なんだこの女!?」
まぁ不良達もまさか見た目こんな美人がこんなアホみたいに喧嘩慣れしてるとは思ってもみなかったのだろう
笑える位に狼狽える不良を唖然とした棗の視線を背にばったばったとのしていくその光景は美女がガラの悪い男達を叩き伏せるというなんとも形容しがたい光景なのであった
作者「それなりにクライマックスです」
優理「短いなこの作品」
作者「勢いで書いた作品だしな」
優理「勢いかよ!?」
小次郎「クゥーン…」