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TS:1 神谷優里という人間

あ〜俺が主人公の神谷優里だよろしくな読者のみんな。早速だがこれからこの小説「女体男心〜girl body・boy hart〜」の前書きの司会をさせて貰うぜ、まぁ気張らずに気楽にやってこうぜ、それじゃあ本編スタートだ!

春にしては少し肌寒い朝、なんとなく毛布から出るのを躊躇ってしまう…そんな室温に優里は毛布にくるまったまま

「ん〜後五分…」等と誰にともなく言い訳しながら貴重なぬくぬくタイムを謳歌していた。

神谷優里、男にしては長くサラサラの黒髪は寝癖でバサバサになってはいるがそれでもその髪はしなやかに流れる様だ、顔もイケメンというよりは女顔で、彼は長い髪も合わさって初見の人には女性と間違われることも少なくはない。そんな彼だが体つきは悪くない。一見すると細く弱そうだが鍛え抜かれた身体には無駄な肉が一切ない。優里はどうやらまだまだ布団の温もりから抜き出したくは無いようだ。

時計は既に8時を回っている。準備をしてから学校に行ったのではまず間違いなく遅刻であろう。だが遅刻常習犯の優里からすればそんな事は些細な問題である。彼にとっての問題は外が肌寒いということだけなのだから


「ん〜8時か…まぁいいか今日は風邪で休みってこと

「優里っ!お前また遅刻する気かっ!」で…」


仮病を使おうと優里が決めた瞬間自室の扉を開け大きな瞳が印象的な少年が入ってくる。少年はそのまま優里の寝ているベッドまでズカズカと歩み、ベッドの傍に立つと毛布を勢いよくひっぺがえした。


「いい加減に起・き・ろ・っ…!優里!!だいたいお前って奴はいつもいつも…」


雷を落とすと共に優里に対して説教を始めたこの少年は優里の家のお隣に住む同級生の相坂棗である。

肩より上で揃えた少し蒼がかかった黒髪、大きく意思の強そうな瞳。活発な印象を受ける美少年である。棗は優里の高校からの友人で同じクラス、という腐れ縁という奴である。

生徒会書記と学級委員長を勤めており、遅刻常習犯の優里を二年になり同じクラスになってからはこうして毎日起こしにくるのだ。

優里にとっては貴重な睡眠時間を奪われるのでありがた迷惑ではあるが、わりと棗のことは気に入っているので棗が起こしにくる時はいつも素直に起きている。


「ったく…しゃあねぇなっ…と、って…うお…!さ、冷えんな今日は」


薄い寝間着ではこの気温に応える為、優里は反射的にベッドに返ろうとした。しかし…


「ゆ・う・り・ぃ?」


「はいはい起きます。起きますってば」


まあ当然棗からまたお叱りを受けるだろう故に優里はベッドに戻るのを断念し、渋々制服に着替え始める。棗はまた優里が布団へGO!するかもしれないので部屋からは出ず後ろを向いて優里の着替えが終わるのを待っている。


(本っ当こいつは堅物だよな…)


だがまあ根性がある奴は嫌いではない。優里は態度とは裏腹に最近の環境を楽しんでいた。

優里達の通う高校の名は明星学園。

小、中、高、大までのエスカレーター式のマンモス学園である。生徒総数はなんと2800人を越えている。まぁ優里は高校から転入した身ではあるが…。その為一年経った今でも新しい事ばかりである。悪友ができたり、教師にチョークを投げられたり、クラス委員長にこうして毎朝起こされたり等、昔では考えられなかったことばかりである。

学ランを第2ボタンまで開き、少しラフに学ランを着た優里は後ろを向いている棗の肩を叩き着替え終わったことを伝える。


「大体優里はやればできるんだからもう少し真面目に…」


「ははっ、なんかお前、俺の母親みたいだな」


「誤魔化すなよ全く…まぁ、いいさ…僕が委員長である限りは絶対に遅刻はさせないから」


「お仕事ご苦労さん」


全くもって頭が上がらないという位に世話になってる人にもこうして軽口を叩ける優里もまた棗とは違って別の意味で大物であるのは間違いない。


「優里、もう時間がない今すぐでなければ遅刻してしまう」


「なら行くか」


「だけど優里、朝御飯は食べたの?」


棗がそう言うと優里はきょとんとした顔になり腹を抱えて笑い出した。


「ゆ、優里?」


「ほんとお前俺の何だよ?ははっ…別に心配しなくても朝飯位食わなくても昼までならもつって」


優里がそう言うと棗は少し申し訳なさそうな表情になり


「やっぱり何か食べてからの方が…」


「お前は俺を遅刻させたくないんだろ?なら食べてる時間なんてないんだ、お前が最初にしようとしたことをやり通せよ、つってもまあ俺もこんな偉そうなこと言えた立場じゃねぇけどな」


「うん…そうだねありがとう優里、悩むのは僕の悪い癖だ」


「別にいいんじゃねぇの?悩むってことはちゃんと考えてるって事なんだからな、考え無しな行動をするよりもちゃんと考えてから行動する方がきっと良い結果も出んだろ。まっ今は悩んでる時間もねぇ、速ぇとこ学園に行こうぜ」


優里にそう言われると棗はうなずき


「そうだね…それじゃあ行こう優里」


そして二人は家を出て彼等の通う学園、明星学園に走って行った。




***********




「ふぅ…間に合ったな」


優里達は五分の猶予を残して学園に登校することができた。優里の下駄箱には相変わらず手紙の山が入っている。見た目も性格も良い優里は男女両方に人気がある。中には男子の後輩から応援の手紙もある位だ。まあ大半は恋文ではあるが…。


「ったく…こいつらは、送られる身にもなれって…」


毎回大量の手紙を処理する優里としては面倒事以外の何物でもないのだ。


「相変わらず優里はモテモテだね」


隣にいる棗は自分もまた大量の封筒を手に抱えながら優里の下駄箱を覗き感想を言っている。


(まあ、こういう奴だよな…)


自分のことを棚に上げてとは正にこの事である。


「オヨッ?、優里〜♪」


不意に横からやけにカタコトな日本語を口にしながら優里にハグしようとしてきた大男を優里はなんの躊躇いもなく棗を身代わりにして避けた。


「うわぁっ!?」


「つれナイナ〜優里は」


「ジョッシュ、お国柄って訳でもねぇんだいい加減朝の挨拶でハグするのはやめとけ」


浅黒い肌の大男、彼の名はジョシュア滝島、アメリカ系のハーフである。顔はイケメンではなくどっちかというとこの年代にしては老けており、ダンディな顔つきではあるが軽薄そうな笑みがそれを台無しにしてしまっている。身長は189cmと長身で162cmの優里よりも頭一つ分はデカイ、ちなみに棗は168cm…実は優里、結構チビである。


「いいじゃねぇの、優里ってば男にしとくのが勿体ない位の美人さんなんだから男同士だからこそできる友情のハグで役得ってやつ?」


「寝言は寝て言えタコ」


「…というか優里、僕を身代わりにしたた事は流すつもりか?」


「気にするな、またの機会があったらまた身代わりにさせてもらうから」


「既に身代わりが決定してるの!?」


「ところで優里、今日あそこに寄ってかね?」


「あぁ〜悪いな今日は部活に出るから無理だわ」


こうみえて優里、男子テニス部に所属している。後輩からのファンレターは実は部活関連だったりする。


「優里も中々良いところまでいってるってテニス部顧問の山根先生も褒めてたよ」


「な…まじかよ、あの婆さんが?」


山根先生とはテニス部の顧問にして優里達のクラスの担任でもある妙齢の女性である。既に50を越えている筈なのに外見は30代なので中々に非常識な教師である。優里も目を付けられており、授業中居眠りしたりすると直ぐにチョークが飛んでくる。


「あの婆さんが俺を褒めるなんてな、今日は雪でも降んのか?」


「山根先生は優里に期待してるからこそ厳しく接してるだけだよ実際あの人の教え子で大成を果たした人達は何人もいるって話だしさ」


「へぇ〜寧々ちゃん先生がね〜、やっぱりできる女は一味違うね、くぅ〜俺も寧々ちゃん先生に個人的に指導されたいね〜」


「代わってやろうか?」


「ご遠慮するわ、それはそれこれはこれってやつよ」


「じゃあ優里、僕はこれから職員室に行くからちゃんと教室に行くんだよ?サボらないでよ」


「わぁ〜ってるよ、んじゃ行くぞジョッシュ」


「あいよ」


棗と別れた優里とジョシュアは教室に向かうのだった。




***********




授業も終わり放課後、優里はテニス部でラケットを振るっていた。


「あらよっと」


優里の鋭いスイングと共に相手のコートのラインギリギリに鋭いストロークが決まる。


「ゲームセット、勝者神谷優里」


ラケットを肩に乗せ御機嫌な様子で優里はコートを後にする。


「優里、あんたまた腕を上げたね」


「おっ、婆さん珍しいじゃねぇかあんたが俺を褒めるなんてよ?」


「相変わらず口の悪さは変わらないねぇ…」


「棗の奴からも聞いたけど一体どういう風邪の吹き回しだよ?気味悪いぜ?」


「別に最近のあんたは実際なんか蛹から蝶になったみたいにスクスク成長するからね、前はずっと燻ってたっていうのになんかきっかけでもあったのかい?」


「きっかけ…ねぇ」


まぁ最近の自分を取り巻く環境には満足している。

こんなに充実した毎日というのももしかしたら産まれて始めてかもしれない、そういう意味ではきっかけなのだろう。

だがそういうのとは違い何か最近はやけに体のキレが良いのだ。

どんどん体が軽くなり、五感がどんどん研ぎ澄まされていく様なそんな感じ、先ほどストロークもラインギリギリに打ち込む等今までの優里では十回に三回成功すれば良い方である。しかし今はなんだか百発百中で決める確信がある。そんな優里の変化に山根女史も気付いたのだろう、逆に言えば“調子が良すぎる”のだ最近の優里は


「まぁ別にきっかけとか言われても心当たりもねぇしな…」


「まぁあんたなら気付いているとは思うけど自分の体はちゃんと管理するんだよ?」


「あいよ、まぁ特に病気とかそういうのはねぇと思うけどな」


優里自身気付いていない訳ではないこの体中の細胞が活性化している様な奇妙な体調は実際異常なのだから


「今日はもう上がるわ、ちと約束があるんでね」


「はぁ…まあいいわ、でもあんまり好き勝手するんじゃないよ?あんた人気はあるけどそれと同じ位妬まれてるんだから」


「わぁってるよ」


優里はそう言うと更衣室に入っていった。




***********




夕暮れの河川敷、優里はそこにいる一匹の約束の相手に声を掛けていた。


「よぉ、小次郎元気にしてたか?」


「ワゥ!」


黒い毛並みの雑種犬、名は小次郎。筋金入りの野良犬で優里が此方にやってきて始めてできた親友である。


「相変わらず元気そうで安心したぜ、お前もこの町の頭を勤めるのは大変だとは思うけど無理はすんなよ?」


「バゥッ!ゥヴ…」


「ははっ、何だよこっちが心配されてりゃ世話ねぇぜ」


一人と一匹はまるで互いに言葉が解るかの様に話していた。そこには種族を越えた友情が確かにあったのだ。


「さて、と…俺はそろそろ帰るわ、あんまし遅せぇとネガネ達がうるせぇしな」


「バゥ!」


「ああ、お前もしっかり頭はれよ、お前なら立派なボスになれるさ」


「ワォーン!」


「あぁ、じゃあな相棒…!」


小次郎と別れた優里は彼にとって帰るしかない家に重たい歩を進めるのだった。




***********




「ただいまっ…

「お帰り優兄!」うおっ…!?」


玄関を開けた途端優里の義妹の梨華が優里に抱きついてくる。


「ったくお前は…もう少しお手柔らかに出迎え出来ねぇのか?」


「ええ〜こんなに可愛い妹が抱きついてあげるんだからもっと喜んでくれてもいいじゃない、プンプン」


「妹相手に喜んでどうする、逆に虚しくなんだろうが?そうゆうのはあのメガネ会長さんにやってやれよ」


「えぇ〜?正兄は正直嫌いだし嫌よ、あんな根暗に抱きつくなんて絶対に嫌!」


「実の兄は随分と嫌われてんなぁ…」


「だってあいつもババァも優兄に冷たいじゃない、私のお兄ちゃんは優兄だけよ♪」


「ハイハイ」


優里の義理の妹の根岸梨華。彼女と優里は従兄妹である。四年前に優里の父親が他界した後に引き取られたのだが…。それは善意からではなく遺産目当てだった、といっても優里もその時は13歳、何とか全てかっさらわれずに済み、自分の口座にちゃんと残している。

食費と家賃云々は毎月払っており高校を卒業したら優里はこの家を出るつもりである。優里は母親を早くに亡くしており、父親が唯一の肉親であったのだが親戚関係にあたる叔父は父の弟だ。兄弟仲は良くなかったらしい、といっても叔父が嫉妬深い性格の為、優里の父親を妬んでいたという一方的なものだが叔父には二人の子がおり、優里より一つ年上の正、そして一つ年下の梨華である。

兄、正は叔父の血を濃く継いでる様で容姿で勝っている優里を毛嫌いしている。三年になってから明星学園の生徒会長をやっているが支持率が低い為次の選挙では間違いなく落ちるだろう。叔母も嫉妬深い為この家で唯一優里に家族として接してくるのは妹の梨華だけである。

優里はじゃれついてくる梨華をひっぺがし台所に向かい一人早めの夕飯を作り始める。有り合わせの物で炒飯を作ろうと決めると梨華が

「私にも〜♪」と言うので二人分作り食べる。兄と叔母はこの時間どちらも家には居らず優里は夕飯を食べると自室に行く。梨華は優里に遊んでとせがみ優里はいつもその相手をする。やがて叔母や兄が帰宅すると梨華は優里に迷惑をかけない様に退散する。梨華は優里以外の家族を嫌っているのだが叔父達は梨華を溺愛している為優里と一緒に梨華がいるのを見ると酷く怒る。前にもそういうことがあり優里が酷い目にあったこともある為、梨華はそれ以来家族がいない時にだけ優里に甘えている。梨華が退散すると優里は不意に強烈な眠気に襲われベッドに入ることなくその場で倒れた。




***********




「…ん?」


どうやら床でそのまま眠ってしまっていたらしい、らしくないミスと自分にしては珍しい早起きに優里は棗をビックリさせてやるかと思い付き、身支度を整える為、洗面所に向かおうと起きようとした。すると先日までの調子の良さがまるで嘘の様に体が重いことに気付き何かに引っ掛かりバランスを崩してうつ伏せに転んでしまった。


‐フニュ


「……は?」


今何かあり得ない感触が胸にあったような…


「つーかなんだ…?ズボンがなんでこんなにダボダホっ…て…」


どうやらズリ落ちたズボンに足をとられた事が転倒の原因らしい、いやそれよりも問題なのは…


「何で俺に胸があんだよ…?」


先程の転倒で対して被害がなかったのはどうやらこの胸のおかげらしい、しかし優里は男なのだ。男に胸なんかあるわけが普通ない。


「………」


なんとなく揉んでみると確かに自分の体の一部であるということが胸から感じられる。優里は反射的に股間に手を伸ばし有るものがあるかないかを確認する。


「……ねぇ」


そこにあった筈の男の象徴は綺麗さっぱり無くなっており、男性にはない筋が出来ていた。自室の鏡に目をやるとそこには間違いなく美女と言える美しい女性になった自分がいた。元々女顔、というの理解していたが女の体にこの顔だとここまで印象が変わるということに優里は自分の体が女になって始めてきづいた。


「はは…参ったねこりゃ」


この時、優里は驚愕の余りただひたすらに呆然とするしかなかった。こうして突然女になってしまった神谷優里の新しい生活が始まる。

作者「………」

優里「作者の奴、何黄昏てんだ?」

棗「何でも何個も書いた作品の中でこの『女体男心〜girl body・boy hart〜』がようやく世に出せるレベルだったらしいよ?」

優里「へぇ〜…でもこの作品も世に出せるかは今後次第だろ?」

棗「出だしが一番ましだったのがこれ何だってさ」

作者「性転換カテゴリよ…私は帰ってきた!」

優里「まあ、こんなイカれた作者だけどよろしく頼むわ」

棗「それじゃまた次回」




ジョシュア「あれ?俺は!?」

作者「空気乙WWW」

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