ボッチと桃缶
白桃缶がおすすめです。
予定外のもやしを何とか処理した僕はコンビニに立ち寄った。
買うのはいつものバランス栄養ゼリーだ。
「桃缶も買おうよ」
重いしいらないじゃん。
「桃缶は長く保存できるよ」
缶切りなんてないし。
「プルタブ型もあるし、いつか必ず役にたつからさ」
しょうがないな。まあどうせ食べるのは僕だしなあ。
トウカさん猛プッシュの桃缶も購入し、家にかえるのであった。
風呂にはいってから端末にパーツを組み込むと日付が変わるころになった。歯磨きをする横で、モニターの中のAIがベンチマークで遊んでいた。
「あれ、もう寝るのかい?」
まあ今回は普通に眠いからね。
「前回とは違うんだ。まあしばらく様子を見ないとアドバイスもできないしね」
そんな調子で大丈夫か?
「下手なアドバイスでさらに生活リズムがくずれて悪化するかもしれないしね。私が君の生活に入ってきたこと自体今までなかったことなんだし。それに私と話す以外に会話とか普通にしていた?意外とこれってストレスたまるんだよ」
ノーコメント、ノーコメントで!
取り合えず寝ることにしたので端末を充電器の上に置き、モニターも消してもらうことにした。
久しぶりにおやすみなさいを言った後、僕は眠りについた。
翌朝起きると風邪をひいていた。
「起きたかな?って調子が悪そうだけれども風邪でも引いたのかい」
そうですよ。とりあえずお腹がすいたのでゼリーでも食うか。
「ちょっとまった。折角だから桃缶食べようよ」
でもうちに食器なんてないんだが。
「その缶詰めにプラスチックのカバーがついているでしょう。その下にあるのなーんだ」
小さいけれどフォークがついているじゃないですか。
「味わってたべるがよい」
以外とさっぱりして美味しかった。やっぱり昨日風邪をひくぐらいはしゃいでいたのかな?
「その前のゴミ掃除で疲れたのが原因じゃないかな。桃缶は風邪じゃなくても食べてもらいたかったけれどもね」
うん?
「昨日から見ていると、体力があまりないでしょう?そんな調子じゃ遊びに行くにしてもまずは鍛えないとだめな気がするよ」
どこまで脆弱になっちまったんだ。
喉が渇いたので水を飲もうとするが、ペットボトルの水がない。そういえば桃缶に気を取られて買うのすっかり忘れていた。蛇口の水は嫌だなあ。面倒だけど買いにいくしかないか。
「水分は取らないの?一ついいことを教えてあげる。現在避難場所に指定された建物を除くと貯水槽の設置は少ないです。なぜなら政府が補助金を出して直接給水方式を推奨しているから」
話を聞くと雇用を広げるためと、災害・テロ対策のために貯水槽設置ルールを厳しくしたらしい。いままで高さがあって水道管からの圧力では供給できなかった場所にも、アシストポンプで水道管から直接送れるようになっているそうだ。カラスの死体の浮いた水を飲む危険性は極めてまれだということか。
「風邪でフラフラなのに買いにいくのは厳しいんじゃないかい」
しょうがないので水道の水を飲むことにする。それだけでも倒れそうだったので結局ぼくは布団に寝転んだ。
「お願いがあるんだけれども、本体を経由してネットで調べものをしてもよいかな。本体のデーターはみないから」
定額使い放題のサービスにはいっているからまあいいか。
「ありがとう」
結局僕はまた眠りこんでしまうのだった。