ボッチの食事
ラーメン回です。
充電器に端末を置くと
「そろそろお昼なので、外出を希望します。ついでに端末のパーツも買ってください」
と要望が来た。
端末はスマホの延長というよりは携帯できるパソコンといったほうが近い。共通規格のバッテリーやカメラ、ストレージのセットを必要に応じて組み合わせていくのが今のトレンドであった。
ただ買いにいくのはちょっと無理だな。猛烈に眠くなってきた。
「すまん無理。起きたら説明する」
僕は布団に倒れこんだ。
気がつくと夕方だった。
目を開けるとモニターが目の前にあった。
そこにはうちのAIさんが映っていらっしゃる。
「説明しろ」
はい。
会社を辞めてからストレスがひどかったり、ちょっと疲れたりすると猛烈に眠くなるようになった。おかげで家の外にでるのがわりとめんどうなのだ。おそらくコンビニが近くになかったら生活できなかっただろう。最近は調子よかったからちょっと無理をしすぎたみたいだ。
とりあえず買い置きしてあった水と栄養ゼリーを取り出す。
「えっと冷蔵庫は?」
ここにはないよそんなもの。当然ながらレンジもない。家電は洗濯機と掃除機があればいいと思うのだが。
とりあえず寝て体力も回復したことだし、買い物に出かけますか。
「ちょっと待って、買い物は大丈夫なの?」
それくらいはいつも普通にしているが。
「あー、ちょっと相談しようよ。急に倒れこんだからこっちは心配しているんですが」
まあ何年か前までなら入院していた症状も、現在は基準がガバガバになっているからなあ。医者に症状を言ってもこの結果だし。とりあえずトウカさんには経過観察してもらうということで納得していただいた。
その後買い物も時間をかけるのは心配だということで、出かける前に買うものをきめることとなった。
一般的に端末のデータ処理はパソコン本体にまかせるので、端末の強化は通信情報量を増やすためのアンテナの増設とバッテリーの強化があげられる。メモリーは高速化かしたストレージに統合されて消えた。
「私のプログラムは端末上にあるのでCPUも強化してください」
土下座されてもあれ、良いお値段だしなあ。
「ナンも出しますから」
お前の料理は食えないだろうが。
結局高価なCPUを買ってしまった。
久ぶりに商店街にやってきたので外食することにする。座って休めるしね。さすがにゼリーだけだともたないし。まあせいぜいラーメン屋だが。
「で何を頼んだの?」
ラーメンです。
「野菜も頼もうよ。美味しいよ」
ラーメンは余分なものはいらない派なんですが。そもそも味がわかるのか?
「言ったな。じゃあ私が味をあてることができたら野菜も頼むということでおK?」
ほう?よいぞ。
「じゃあいったん端末の電源を落としてそこのコップの水に少量の調味料を混ぜるがよい。再び電源を入れたときお前は野菜を頼むことになるであろう」
早速電源を消しゴソゴソと入れるふりをしてから再び電源を入れる。
「これは・・・ただの水ですね」
馬鹿な!何故わかったのだ!
「カメラと距離計のLEDをつかって光スペクトル分析を行ったんだよ。反射してくる光の性質は物質によって違うんだ。これが、無駄に予算をかけている政府のビックデーターの力だ!」
嘘だ。これは何かの間違いに違いない。
そこにラーメンがやってきた。
「この味噌ラーメン、コクを出しつつさっぱりした味を出すために、野菜くずとともにグレープフルーツで出汁を取っている」
店員さんに聞いたら当たっていた。
僕は巨大な組織の力に敗北し、もやしを追加することになるのであった。