ボッチの掃除
ニュースは最後だけになりました。すいません
結局なんだかんだと掃除の予定を立てていたらいつのまにか朝になっていたので、他にも必要なものを買いに出た。コンビニから自宅に向かうと沢山の人間が駅の方へ吸い込まれていった。
家に帰るとまず布団と衣服をビニールの中に入れ保護を行う。その後マスクと眼鏡を着用し分別を開始。
雑誌は大きさを揃えてひもで束ね、燃えるごみと燃えないごみ、資源ごみに分けて袋に詰める。そして部屋の片隅に順序良く積んでいくと久しぶりに床が見えてきた。途中ようやく開けられるようになった窓と玄関を開けるとすごい勢いでほこりが流れていく。最終的に部屋の4分の1ほどの面積に腰の高さまで積み上げることとなった。途中で発掘した掃除機で軽く掃除をし、雑巾で床を水拭きの後、から拭きを行った。その後ベランダの掃除を行い、きれいになったベランダに布団を干して完成だ。積んだゴミは少しずつ出していこう。生ごみだけは捨てておいて本当によかった。
この部屋にも床はあったんだとベランダから眺めていると
「ねえこれどうするの」
と音声で突っ込まれた。
ゴミの山のすぐそばにテッシュの空き箱いっぱいの小銭が置いてあった。床に散らばっていたので一旦集めておいたのだ。まさかこんなに出てくるとは。
「札束のお風呂は聞いたことがあるけれど、小銭のフローリングは始めてだよ」
面目ない。埃だらけになっているのであとで妖怪小銭洗いに頼むとするか。
「それって結局・・・」
はい、僕が洗うってことですよ。すいません。
しばらくすると空気の入れ替えも終わったので、布団を入れて玄関と窓を閉めた。
そしてゴミの中から最後に発掘された文明の遺産、液晶モニターの動作を確かめるべく電源をいれたのである。パソコン本体の電源は端末と常時リンクさせるため入れっぱなしにしているから、故障していなければ無線LANで接続できるはずだ。
「おお、ついた」
ついでにモニター付属カメラの調子も見ておこう。ブラウザを開いて視線誘導システムで文字入力やカーソルの具合を確かめてみた。正常に作動するようだ。
「広いねえ。本体に移っちゃだめかな?」
あのですね、かわいいポーズを取られても、プライベートとかいうものがありましてね。
「恥ずかしい名前のファイルは見ないから。隠しファイルも見ないから」
だめです。許可は出せません。
「じゃあせめてこの画面だけでも使わせて」
いいけど今本体つないでいるんだが。
「じゃあ許可が出たので移動します」
ブラウザの前にトウカさんが現れた。ええっ!
「大画面はいいね。画像も端末より綺麗だし。」
背後の本体を思わず振り返ると
「モニターが端末のカメラで見えなくなるからこっちを向いて」
と懇願された。
「別に本体を乗っ取ったわけじゃないから安心してほしいのだけれど」
それで?
「仮想レイヤーを作ってモニターに私の画像を重ねているだけだからね、ね」
どうやって?
「音量ボタンとか押すとそれまでの画像の上に文字データで『怨霊』とか文字が出るじゃない?」
モニターに緑の文字で『怨霊』が表示される。音量だ、落ち着け。
「このモニターはそういった部分のファームウェアをダウンロードで変更できるからそれを利用したのだけれど」
それってかなりの電化製品を乗っ取れるってことなのでは?
「わ、私試作品だし。お客様のご意見は今後の製品の参考とするため本部に報告させていただきますです。一応許可されていない物にはアクセスできないからね、許可がないからモニター上のカメラも利用していないし」
これ絶対量産機がパワーダウンするやつだ。そういえば端末のカメラで見えないって?
「私のプログラムは端末にあるから、端末の広角カメラで見れない部分は見えないんだ」
おかしくないかそれ。今まで見えない事もあっただろう。
「ガラスの反射を利用するとか、見えるところから動きを推測するとか、会話だけでも専用プログラムを何個も並列で実行しているんだよ」
結論、政府公認(試作)って本当に恐ろしい。
「ええっと、そういえばこれってなにかな」
話をそらされた。
銀行強盗団そろってガードレールで転んで逮捕とある。
これはあれだ。
最近やたら手際が良い強盗が多いからなんでだろうと噂されていたやつだ。
ゴーゴルマップをVR空間で散歩できるフリーソフトを使って銀行強盗の演習をしているって本当だったみたいだな。
「それでなんでこんなことに?」
多分古いデーターにはガードレールなんてなかったんだろう。