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ボッチと新聞

立ち読みができない世界・・・

 朝日を浴びて飲むお茶は格別ですなあ。

「お楽しみのところ申し訳ないのだけれど、今日は雑誌を捨てる日だよ。帰ったらすぐに出さないと」

 一杯飲んだら帰るとするか。うまい、もう一杯。

「饅頭はでないよ」

 わかりました。帰りますか。

 帰り道の階段を下りて部屋に帰ると、雑誌の束を何個か外に持ち出した。

「今のペースで本を出していくと片付くまでに半年は必要だね」

 4年分の塊が半年で済むのか。楽なもんだと思うけれどな。

「気が長いね」

 まあ時間だけはたっぷりあるしね。自慢じゃないけれど。

 雑誌を捨てに行くと珍しいことに新聞が捨ててあった。

「そんなに珍しいのかい」

 トウカさんのビックデータは変なところで時代が止まっているな。

 紙の新聞お年寄りにはまだまだ人気があるんだぞ。ただし激しい原価競争を勝ち抜くために電子媒体がほとんどだけれども。大手の新聞はほとんどが人件費カットのために新聞配達を辞めてしまったし。週刊誌も電子化してコンビニでは売っていない。

 雑誌は本屋に行かないと売っていない事が多くなった。

「それってどういうこと?」

 漫画もそうだけれどもひと昔前のアイドルグッズみたいなものというか、所有することがステータスになったみたいな感じかな。

 昔の本屋さんみたいに読むためのものを買いに行く人は少ないんだよ。読むだけなら電子辞書で済ます人が多くなったんだ。

 本が完全に消えるだろうという人もいたけれども、小さな子供への贈り物とかとしておもちゃ屋さんで売っているし。電子の海に残らないという点で、規制前の過激な薄い本が闇で取引されているなんて都市伝説もあるよ。

 後は電気を使わずデーターの保存と閲覧ができ、燃えるゴミとして発電の燃料にもなるからエネルギー効率的に電子図書より本の方がよいんじゃないかって極論もあったな。

 例外で古い測定器なんかの説明書は会社が消えて紙でしか残っていないものもあったりするし。

「じゃあ値段も高くなったの?」

 そうでもないかな。印刷屋さんや製本屋さんの施設が極小化して本屋さんに置いてあってね、本を頼むとその場で生産してくれる感じ。

「自分の家やコンビニのプリンターで印刷すればいいのでは?」

 厚紙の表紙やカバー折りまではむずかしいじゃん。

「ねえ、向うに警察がやってきたよ」

 そこには新聞の束をもった人が警察に捕まっていた。

 どうせ捨てあるんだからいいじゃないかとか、時代が過ぎればプレミアがつくとか言っている。

 確かに紙の新聞、特に大きな事件の前兆が乗っている記事はたまにとんでもない値段がつくことがある。

 暗号化が進んだことにより芋づる式に関連記事を掘り出しやすくなり、ネット自体の記事の削除が容易になってきたからだ。

 もうネットも無法地帯ではなくなりつつあった。

「ゴミ泥棒?」

 新聞も一応古本屋にもっていけば売れるからねえ。

「じゃあどうして君はあんなに本をため込んだのさ?」

 半分は仕事の資料だから。

「もう半分は」

 衝動買いです。当時の僕は半分がストレスでできていたんじゃい。

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