第8話:DM契約して、人間やめてくれませんか(≧ω)?
2019/1/5:第7話を改稿したため、こちらの話にも影響が出ています。恐縮ですが、前話をご一読いただけますと幸いです。
2019/1/5:第7話を改稿したため、こちらの話にも影響が出ています。恐縮ですが、前話をご一読いただけますと幸いです。
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「あはは、なんか水島おにーさんが酷い顔をしているぞ(≡ω)?」
「私ちゃん、もったいぶってごめんなさいです(Tω)!!」
俺を見て爆笑するエゼルと慌てているディル。
そして、ディルが取り繕うように早口で言葉を発する。
「えっと、えっと、私ちゃんは『吸血姫型ダンジョンコア』なのです……って、ごめんなさい! おにーさんにちゃんとした自己紹介をまだしていませんでした!!」
「あー、水島おにーさんが記憶を失っているのを、エゼルも忘れかけていたぞ。普通に水島おにーさんがエゼル達を受け入れているのがいけないんだぞー(≡ω)ノシ」
なんか、なんというのか、エゼルに笑顔でディスられた。
でも、エゼルがケモ耳をピコピコと動かしているから、可愛いなぁとしか感じない不思議。……なんでだろう、ケモ耳の破壊力って半端ないな。理不尽さを感じてしまうけれど。
そんな俺の心のモヤモヤには気付かなかったらしいディルが、可愛い笑顔で、小さく両手をポフッと合わせて口を開いた。
「とりあえず、手短に自己紹介をするのです。11分ー―いえ、あと10分くらい後には、女勇者さんがダンジョンに攻めてきますからね。多少引き伸ばせるとはいえ、お迎えの準備しないと迎撃が間に合いませんから」
ディルの言葉に、エゼルも続く。
こくこくと真面目そうな表情で首を縦に振ったかと思うと、おもむろに言葉を発した。
「それじゃ、手短に自己紹介をするか(≡ω)♪ エゼルは、エンゼル・マーブルという名前が本名だ。好きなものは高級アイスクリームの『バーゲンダッツ』と『ナポリタン』。苦手なものは『ミント味のバーゲンダッツ』だ! 水島おにーさんのことも大好きだぞ(///ω)b!」
なぜ、エゼルがバーゲンダッツを知っているのか気になったけれど、それも後半の『愛の告白』のインパクトで吹き飛んだ。ちょっぴり頬を赤く染めたエゼルの顔が可愛すぎたのだ。
そして、俺の思考が一瞬真っ白になった瞬間に、ディルの自己紹介が始まった。
「私ちゃんは、カンディル・バイオレッドという名前です。種族は吸血姫型ダンジョンコアで、好きなものは『おにーさん』で好きな人は『おにーさん』で、結婚したのも『おにーさん』なのです(///ω)ノシ♪」
「……ありがとう。えっと、本当に、ありがとう」
白い頬を真っ赤に染めた美少女の告白。
ヤバい、可愛すぎてくらっと来てしまった。……俺、ロリコンの気は無かったはずなのに。
いや、でも、ここは異世界。2人もWelcomeな訳だし――って、違うっ!!
俺が心の中で『何か』と戦っていると、エゼルとディルの視線が俺に向いた。
なぜかキラキラした視線。ううっ、何かのプレッシャーを感じる。
「次は、水島おにーさんの番だぞ♪」
「期待しているのです!」
「わ、分かった……」
それだけ呟いてから、俺は小さく深呼吸をして言葉を続ける。
リラックスして本音を語れば良いのだから落ち着け……と自分自身に言い聞かせて。
「水島鮎名、28歳です。記憶を失っているけれど、ディルとエゼルと一緒にいると、心の奥があたたかくなるのを感じているよ。これからも、よろしくね。俺は2人と一緒に戦うよ」
「はいなのです♪」「了解なのだ!」
気が付けば、3人とも自然に笑顔になっていた。
さっきまでのどこか不安をはらんだ空気は、もう存在していない。
なんだろう、心の奥がすうっとした感じで落ち着いている。
「ふふっ♪ それじゃ、改めて戦いの準備をするのです!」
「……えっと、ディル? 戦うことは良いのだけれどさ……俺、正直、何の役にも立たないと思うんだ。武術とかしたことは殆どないし、もちろん哺乳類系の生きた動物を殺したことも全然ないし……何か良い武器ってあるのかな??」
自分で口にしておきながら、少しだけ憂鬱になる。また、不安な気持ちになってしまった。
この手で彼女たちを守りたいと心に決めたのに、俺ができることは本当にこの体で1度きりの肉壁になるくらいだ。
自分でそんなことを考えて、かなり落ち込みそうになったけれど――意外な言葉がディルから飛んできた。
「はいっ♪ だから、私ちゃん達とDM契約をするのです!!」
「そうそう、DM契約をするのだ。水島おにーさんも大好きな『ちーと』っていう、異世界召喚のお約束なアレだな(≡ω)b」
「ダンジョンマスター契約? チート? いや、そもそもなんでエゼルが、テンプレという言葉を知っているの??」
混乱する俺の頭。それでも、止まらずに進む時間。
嫌でも感じるプレッシャーでドキドキしている心臓に、焦って空回りする気持ち。
正直、頭が真っ白になって思考停止状態になりそうだけれど、それは悪手だと分かっている。
そんなあまり良くない思考が、ぐるぐると頭の中をめぐり始めた瞬間。ディルがクスリっと小さく笑って、嬉しそうなドヤ顔で口を開いた。
「安心してください♪ 私ちゃんとDM契約をしたら、おにーさんは『ダンジョンマスター』になれるのです。世界最強種と呼ばれる神々と対等の――いえ、神々すら凌駕する可能性を秘めた――世界最凶種族におにーさんは進化できるのです!!」
「え、ちょ、俺……人間やめないといけないのっ!?」
「「え?」」
「え?」
なんで、ここで不思議そうな表情が返ってくるのかなぁ……(Tω)?
俺、戦うって決めたけれど、まだ人間は止めたくないよ??
(次回につづく)