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第5話:脳梗塞はヤバいのです! え? 違うの??

 自分の頭の下に感じる柔らかさ。ほっとする日向のような温かい匂い。

 重たい身体がすぅっと軽くなる、どこか優しい誰かの気配。


「いたたっ……」


 風邪をこじらせた時のような、かなり気だるく鈍い痛みを頭に感じながらも、俺はゆっくりと目を開ける。

 すると――至近距離で俺を覗き込んでいるディルと目線が合った。


「良かった、おにーさんが気付いたのです!」

「エゼルのパーフェクト・ヒールが効いたんだな(≡ω)b」

「エゼルさん、グッジョブです♪」


 ディルとエゼルが嬉しそうにはしゃいでいるけれど……やっぱり夢じゃなかったんだな。

 思わず涙が目に浮かんできて――自分で驚いてしまった。ディルとエゼルのことは、名前以外にはほとんど何も覚えていない。でも、2人に再び会えたことが嬉しい。堪らなく嬉しい。


「今は、私ちゃんのお膝で、少しだけ泣いても良いのですよ」

「いや、それはダメだろ(≡ω)ノシ!?」


 ディルとエゼルが全く逆のことを口にしている。

 ただそれだけのことなのに、なぜか無性に嬉しく感じる。堪らなく懐かしく感じる。

 思わず小さく吹き出してしまって、少しずつぼんやりとしていた思考がはっきりとしてきた。


 そして感じる――猛烈な恥ずかしさ。

 年下の女の子、しかも10歳くらい下の美少女に膝枕されている28歳って、絵面的にどうなのだろう? 見る人が見たら1発アウトだと思うのは、多分勘違いでも間違いでもないと俺は思うのだけれど。


 でも、それを表情に出すのは、なんだか大人のプライドが許さなかった。

 徐々に熱くなっていく顔を、意志の力と深呼吸をすることで誤魔化して。さりげなさを装いながら、現状を脱するためにまずは身体を起こしていく。


「ディル、ありがとう。エゼルも、ありがと」

「どういたしまして、です♪」

「うむうむ。エゼルは頑張ったぞ(≧ω)b!」


 エゼルのドヤ顔に、なんだか心の奥が温かくなる。心臓がとてもドキドキする。

 ああ、本当に、俺はこの2人のことを知っている。そう、「どこで出会ったのか」とか「なぜ俺が記憶を失ったのか」ということは分からない。けれど2人の反応からは「俺達3人が仲の良い関係だったこと」がすぐに想像できた。

 そして気付く小さな違和感。


「――あれ?」


 そういえば、気を失う前にディルとエゼルの他にも女の子がいたような??

 紫色の髪のお姉さんと水色の女の子。なんとなく懐かしいと感じた、2人の女の子。


 でも、今の俺達の周りにはは誰もいない。

 さっきのは、頭痛が見せた錯覚だったのだろうか? 脳梗塞とかで、幻覚や幻聴の症状が出るっていうことを聞いたこともあるから、ちょっと不安になってしまう……。


「おにーさん、どうかしましたか??」

「いや、ディル、あのね……さっきの頭痛の正体が『脳梗塞』とか『脳のケガ』だったら嫌だなって思って……」

「ああ、そのことですね。私ちゃんは大丈夫だと思いますよ?」

「エゼルも大丈夫だと思う。多分、脳梗塞じゃないからな(≡ω)b」

「そうなのかな??」


 返事を返しながら、ケモ耳がいるこっちの世界にも、「脳梗塞」という病気があることに少し驚く。

 だってソレは、こっちの世界が脳の病気を発見できるくらい文明が進化していることを意味しているのだから。

 まだ俺の記憶が戻っていないから、はっきりとは分からないけれど……この洞窟の外はどのような世界が広がっているのだろうか?? 怖くもあり、見てみたくもあり……。


 そこでふと、気が付いた。日本に戻ることよりも、「こっちの世界で生きる事」を真面目に考えている自分がいることを。そして、それに違和感や驚きを感じない自分自身に。

 でも、俺がそんなことを感じているとは知らないエゼルが、のんびりとした声で口を開く。


「多分なー、水島おにーさんの頭が痛くなったのは、『失った記憶を取り戻すとき』に発生する【振り戻し】とか【揺れ戻し】っていうやつだとエゼルは思う。ちなみに、比較的軽かったが、エゼルも失った記憶を取り戻すときには頭痛がしたからな(Tω)ノシ」

「ん? 今の言い方だと、エゼルも記憶を失っていたの??」

「ああ。話せばちょっと長くなるんだが、エゼルも水島おにーさんと一緒で記憶喪失だったんだ」


 ちょっと苦い顔で、そう口にしたエゼル。

 でもそれは、どこか引っかかる言い方のように感じてしまった。


「そうなの? ちなみに聞いていいのか分からないけれど、エゼルが記憶を失った原因ってなに?」

「んー、水島おにーさんすまない。それは後で説明しよう!」

「実は、今はあまり時間が無いのです」



(次回につづく)

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