第18話:エゼルが二人と出会った時の記憶③
ディルと水島おにーさんがDM契約を本当の意味で完了した時。
つまりそれは、水島おにーさんがDMに進化した瞬間――エゼルは真っ白な世界に飛ばされていた。
目を焼くような明るさに思わず瞼を閉じて、3秒数えてからゆっくりと薄目を開ける。
すると周囲には見慣れた鍾乳洞が広がっていた。
でも、直ぐに理解した。ここが過去のディルのダンジョンだということを。
鍾乳洞の中には、明かり代わりに『真っ白な魔力の固まり』がふわふわと無数に飛んでいる。
そして、半透明になったエゼルのすぐ近くには、こちらに背を向けて立っている過去のエゼル。そして、相対する過去の水島おにーさんとディルの姿。
んにゃ?……過去の水島おにーさんとディルの背後に、何か違和感を覚える。
「……なんか強力な魔力と、あたたかい雰囲気を感じるぞ(≡ω)?」
思わず呟いてしまって、血の気が引いた。
ヤバい、今の声を過去のエゼルに聞かれてしまったかもッ!?
さすがのエゼルだって知っている。過去に干渉してしまうと、予定されていた未来が変わってしまうことくらい。ヤバい、ヤバいぞ。どうやって誤魔化す??
そんなことを考えていたエゼルだったが……幸いなことにエゼルの言葉は、過去のエゼルやディル達には聞こえていなかったらしい。
そう、エゼルの姿や気配も感知できない様子のままで、周囲を気にするような素振りは見せずに目の前の3人の物語は進んでいくのだから。
そして、ついに過去のディルと水島おにーさんのDM契約が交わされた。
周囲を包み込む閃光。嬉しそうに「目が~♪」と叫ぶ過去のエゼル。
そして、光が収まった瞬間から【思考加速】スキルを発動させて過去のエゼルに鑑定を掛ける水島おにーさん。
……(///ω)
水島おにーさん、なんかキリッとしていて格好良いな♪
今のエゼルは、この時とは違って【思考加速】スキルを持っている。
だから、一瞬でDMとしての力を発動させた水島おにーさんの凄さを理解することが出来た。
エゼルとのレベル差は250きっかり、ステータス差で考えると絶望的な違いのはずなのに……水島おにーさんは生き残ることを諦めていない。絶対にディルを守って、一緒に生き残ることを考えている雄の目だった。
ヤバい、なんかめちゃくちゃ格好良くてドキドキする。
この時はまだ敵対していたけれど、こんな目をあの時の水島おにーさんがしていたなんて……なんか胸の奥が熱くなるな。
そんなことを考えていると、エゼルの頭にテレパシーが飛んできた。
『ちょっと危ないですが、絶対に勝てる方法があります!!』
それは水島おにーさんに提案する、過去のディルの声。
ちなみに、なぜエゼルが彼女のテレパシーを受信できるのか一瞬分からなかったが……おそらく『今のエゼルは今のディルとテレパシーを共有できる』から、過去のディルの声も聞こえるのだろうと思い当たった。
でも、エゼルが戸惑っている間にも、2人のテレパシーは続いていく。
レベル差250だとしても、相手を倒す方法。
ステータスも経験も劣っている2人が、絶望的な格差を飛び越えてエゼルを倒すための秘策。
それは――ダンジョンコア&ダンジョンマスターしか使えない【DPアタック】というスキルを使うことだった。
DPアタックとは、DPを消費して「DP×1/10の防御貫通&無効ダメージを、相手に確実に与えることができる」ダンジョンマスターの必殺技とも言える固有スキル。
ダンジョンマスターとダンジョンコアが「世界最凶種族」として忌み嫌われ、世界最強種族の一角に立っている大きな理由。
その破壊力は、世界最強種族のもう一角である「108柱の神々」を相手取ることができると言われていて、過去のエゼルのようにダンジョンに踏み入ってDMとDCを討伐する者達が一番警戒するスキルでもある。
例えば、1万DPを消費すれば1,000の固定ダメージを相手に与えることができる。
当然、10万DPを消費すれば1万の固定ダメージを与えられる。それはつまり――25万1,000DPを消費してDPアタックを放てば、HP2万5,100のエゼルを屠ることも理論上では可能だということを意味していた。
しかし、そんな強大な力がノーリスクで放てる訳もなく。当然、DPアタックにも欠点があった。そう、「使用したDP数の1/1000のダメージを、自分やその周囲500mにいる仲間にも与えてしまう」という大きな欠点が。
この時のエゼルのHPは25100。それを削るためには最低でも25万1000DPが必要で、ディルや水島おにーさんも最低251の固定ダメージを受けることになる。
HP660のディルは良いけれど、HP150の水島おにーさんは余裕で死ねるな。
……合掌(≡ω)Λ
(次回につづく)