84話 静電気と治療法
「ダンゴムシをすり潰す? それって魔工学研究所にいた魔吸虫の事だよな。そんなことしたらこの王都の魔工具が動かなくなっちゃうじゃないか!」
「小鬼病は魔吸虫の毒袋から作れる血清がないと治らないからねぇ。あれから毒袋を採取できないなら、直接ドルガレオ大陸に行って捕まえに行くしかないよ」
ライアは「あっちにしかいない魔物だからね」とペルシアの後ろ姿に視線を飛ばす。
「そんなこと言われてったなぁ……」
行くためには許可が必要で、今の立場だと許可取れそうにないよなぁ……。
チラチラと目でライアを見る。
「だからそんな目で見られたって、連れていけないものは連れていけないってば。私の魔力にだって限界があるんだから。魔界草の事なら心配しなくても毎日見に行って挙げるから安心しなさい」
「それはありがたいけど……。そうだ!ちょちょっとライアが採りにいってよ」
「絶対いや」
「何でよー。そこを何とかお願いできない?」
「あんな所に一人で行くなんて絶対にいや。小鬼病になるなんて二度とゴメンだね」
ライアはそう言うと、その豊満な胸を両腕で抱き抱え、ブルリと自身の身を震わせた。
てか、ライアもかかった事あるのか……。
この様子だと本当に無理っぽいな。
「小鬼病って、何をしたらその病気になるんだ?」
「魔吸虫はグルメなんだよ」
「グルメ? グルメって食通って事? 虫のくせに?」
「そう、グルメ。魔力っていうのは人によって違うんだ。濃かったり薄かったり、ふわふわしてたりカチカチだったりな。魔吸虫は吸った相手の魔力が気に入らないと、その相手が二度と近寄ってこないように、細い触手で毒を打ち込むんだよ」
「じゃあ今小鬼病に罹っている人たちは、コロちゃんのお眼鏡にかなわなかった魔力の持ち主って事か」
「そういう事。もしかしてフィーの奴、その説明してないのか?」
「してないんじゃないかな。ペルシア姫は原因不明、この国の治癒師じゃ治せない病気だって言ってたからね」
「あとでお仕置きだな」
「ライアとフィーグーはどういう関係なの?」
「教師と生徒」
なるほど、だからフィーグーは苦虫を噛み潰したような顔してたのか。
やっぱりドルガレオ大陸に行くには、素直にごめんなさいして、何とかしてもらうしかないな。
急ぎ足でペルシアの横まで追いつく。
相変わらず歩きにくそうにしている姿が痛々しい。
「ペルシア様、ちょっと相談があるんですけど……」
不思議そうな顔をしてこちらを向く。
「相談……ですか?」
「はい、実は小鬼病なのですが、うちのパーティーメンバーが治療法を知っていまして……」
「!? 本当ですか!?」
「えぇ、小鬼病を治療するには、魔吸虫の毒袋から作られる、血清が必要なんです」
「通常の魔吸虫は小さいからな。結構な数の魔吸虫が必要だぞ」
ライアは俺とは反対側の位置でペルシア姫を挟むようにして立ち並んだ。
「フィーの話では、魔吸虫はドルガレオ大陸の生き物だとお伺いしていますが、どうやってお集めするつもりですか?」
「それは俺たちで直接捕まえに行こうかと考えていたんですが、よくよく考えてみたら、俺って国家反逆罪でお尋ね者なんですよね。だからそこを何とかして頂けないかと思いまして……」
ペルシア姫は顎に手を当て少し考えると、こちらを振り向き言った。
「先程の回復薬をお借りする事は出来ないでしょうか? その回復薬を使ってお父様を説得して見たいのですが……」
「回復薬ですか? 《花汁》の事でしたらまだまだありますので大丈夫ですよ!」
「あんなに見事な効果のある回復薬でしたら非常に高価なものではないのでしょうか?」
「いえ、製法は秘密ですけど、材料はタダですので」
「でしたら数本、いただく事はできないでしょうか? 何とかお父様を説得してみます」
たった数本ならお安い御用だ。
《花汁》は花ちゃんから抜け落ちた蔓から搾り取れる《汁》を絞っただけのもの。
造るという言葉すら烏滸がましい。
「それと、もう一つお願いがあるんですがーー」
「わかりました。それも同時にお願いしてみますね」
「お願いします!」
これがうまくいけば、問題なくドルガレオ大陸に行くことができる。
ペルシア姫も救えて、願いも叶って一石二鳥だな。
仕事が詰まってしまっているため、次回の投稿は月曜日の朝になります。
申し訳ございません。




