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79話 静電気と秘密


「秘密……?」


「マルケル。牢屋番を連れて席を外しなさい。ここには誰も通さないように」


「はっ……」


騎士達はペルシアに「お気をつけください」と一言告げるとその場を後にした。

《探知》で行方を見ていたが、牢屋のへの入り口前でその歩みを止めた事から、何かあった時は駆けつけられる位置で待機しているようだ。


「口で説明するより、目で見た方が早いわね」


ペルシアはそう言うと、壁に掛かっていた鍵を手に取り、俺が入っていた牢屋の鍵を解鍵した。


「付いてきなさい」


そう言うと、入ってきた方とは逆方向に歩み始めた。


「おっおい!なんでお前だけ牢屋を出てるんだよ!俺っちも出せよ!」


ペルシアはチラリと見やると、「貴方はダメよ」とそのまま歩を進める。


ノーチェの顔を拝んでやろうと、隣だった牢屋の中を覗き込むと、そこには二足歩行のウサギが立っていた。

思わず抱きしめたくなる様なキュート外見。

『兎人族』と言うのはよく言ったもので、身長は百五十cmほどの大きさのダークグレーな毛皮に覆われた、目がルビーの様に紅いモッフモフのウサちゃんがそこに居たのだ。


俺は本当に小さな声で「あとで出してやるから」と言うと、ノーチェはガンッと勢い良く鉄格子を蹴り上げた。

《蹴兎》の名に相応しく、蹴りを入れた鉄の棒は歪んでいる。


(こいつも普通に一人で逃げられそうだな……)


そう思えるほどの威力だった。

帰ってきた時もまだ居たら、必ずモフモフさせてもらおう。

そう心に誓った。


「貴方、この街に来てどのくらいかしら?」


俺の前を歩く彼女が、どこか、ぎこちなく歩くのはその皮膚に出来た、吹出物のせいだろう。


「エゾットさんに連れられて、今日着いたばかり……です」


「エゾットと一緒にと言う事は、最短距離で王宮に来たと言う事ですね」


「はい、街に入ってそのまま内城壁を通り、貴族地区と騎士の訓練場の横を通り過ぎて、王宮の客間って感じですね」


「そして、最短距離で牢屋へ……。ふふっ。ごめんなさいね。なんだか可笑しくって」


ペルシアはクスクスと笑った。


「王様の気持ちを少しも考えないで、かなり失礼な事と、場違いなことを言っちゃいましたからね」


誤魔化す様に頭をボリボリと掻く。


「お父様はちょっと短気なんですよ。でも、公衆浴場? だったかしら。 私はこの見た目ですし、入る事はかないませんが、とても良い考えだと思いますわ。それにお父様のお造りになった石鹸より、貴方の作った石鹸の方が素晴らしいですもの。他にはどんな香りがあるのかしら?」


「ペルシア様のお使いになっている石鹸は、金木犀の香りですよね? それ以外ですと、バラと、この香水の香りがする石鹸があります」


サイドポーチからボラルスで買った香水の瓶を取り出す。

因みに今の俺の格好は、パンツ一丁にサイドポーチスタイルだ。

牢屋の冷えた空気が身に染みる。


「まぁ! お母様の好きだった香水ですわ!」


「宜しければ後でお渡ししますよ。本当なら今日は石鹸をお渡ししてさっさと帰るつもりでここに来たんですけどね……。余計な事を言わなければ、今頃宿屋でゆっくりしてたかも知れないのに」


「ですが、そのおかげで私の両手は綺麗になりましたわ」


「そう言って頂けると嬉しいですが、残りはどうしますか? お飲みになりますか?」


「今はやめておきましょう。これから行く場所は、今の姿の方が都合がいいですから」


醜いゴブリンの様な姿の方が都合が良い?

一体どういうことだろうか。

いくつもの空の牢屋の通り過ぎ、終には行き止まりの石壁が眼の前に現れた。


「魔工学はご存知ですか?」


石壁の前に立ったペルシアが唐突に尋ねた。


「魔工学……ですか? 大昔に魔族から伝わった技術……ですよね? 魔石に宿った魔力と魔鉱石で、様々な恩恵が得られると聞いています」


「良くご存知ですね。このフォレスターレ王国の王都は、その全てが魔工学で出来ていると言っても過言では無いのです。例えば、大通り沿いに設置されている魔街灯もその一つです」


ペルシアは「では質問です」と指を立てた。


「魔工学で作られた物を魔工具と言いますが、この魔工具は何を原料に動くでしょうか?」


「魔力……ですか?」


「正解です。ではもう一つ。魔工学が発展したのは、魔族の住んでいた魔力が豊富な土地、ドルガレオ大陸だからこそ発展した学問です。しかしながら私達の住むオレガルド大陸は魔力に富んだ土地ではありません。では、どうやってこの都市全体を賄えるだけの魔力を集めていると思いますか?」


どうやって……?

そもそも魔工具の仕組みがわかってないからなぁ……。

魔工具に魔力ってどうやって注ぐんだろうか?

ソーラーパネルみたいに、自家発電みたいな感じなのかな。

こう、魔石が空気中の魔力を吸収して夜だけ発光とか。

確か魔法都市の魔街灯はそんな仕組みだったはずだ。


「わかりませんか? 答えは簡単です。この大陸に魔力が少ないなら、魔力があるところから奪えば良いのですよ」


ペルシアが石壁に触れると、ゴゴゴという音と共に石壁が動き始め、更に奥に続く通路が現れた。

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