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74話 静電気と王都



フォレスターレ王国、王都ビギエルヒル。

王城と貴族地区を守る堅牢な内城壁と、居住地区や商業地区などの城下街を守る外城壁に囲まれたこの都市は、国の行政を司る中央機関である。


オレガルド大陸の最北西部、森と山に囲まれた地域にあるこの国は、東部には砂漠国家ティラガード、北部には強大な魔物が跋扈するドルガレオ大陸、西部には高難易度迷宮《地獄の門》のある鉱山都市アイアンフォード、南部には同じく高難易度迷宮《海底神殿》のある海洋都市ブリッジポートと、四方どこに目を向けても常に脅威に晒されている。


ティラガードは友好国家であるようだが、ドルガレオ大陸、アイアンフォード、ブリッジポートは未開拓の土地や迷宮の為、そこから魔物が溢れ出し、いつ魔物災害が起きてもおかしくない。


(平和なところだなぁ……)


初めて王都に入って受けた印象はまさに“平和”だ。


綺麗に舗装された石畳の道、賽の目状に区画整理された土地に建つ家々は、あばら家や木造の家などはなく、まさに高級住宅街といった様相を呈している。


行き交う人々は笑顔に溢れ、すれ違う衛兵は煌びやかな鎧を身に纏い、自信満々に道を闊歩している。


「綺麗な街ですねぇ。ゴミひとつ落ちてないや」


ボラルスとは大違いだな。

あそこは貧民街もあったし、道端には物乞いもいた。

王都に入る前から《探知》で周囲を確認しているが、王都内にそれらしき人物や場所は存在しない。

しっかりと統治されているからだろうか。


「……そうですね。二十年前、現王が即位してからは王都ビギエルヒルはかなり様変わりしました。数多くの法が制定され、住みやすい街になったと思います」


「なるほど。いい王様なんですねえ」


馬車はゆっくりと王城へと向かって進む。


「それなりの身分のある奴にとってはな」


もう間も無く着くといったところで、ライアがエゾットに聞こえないよう俺の耳元で小声で言った。


「どういう事?」


「おかしいと思わないのか? この街は綺麗すぎる。魔法都市でさえ貧民街はあったぞ。ここにはそれが無い。全てが救われる世界なんて、この世には無いんだよ」


そう言うと、ライアは王城を睨む。


「まぁそうかもしれないけど、現に無いんだからいい事じゃないか」


「平和ボケしているお前に、この違和感はわからないか。精々足元を掬われないように気をつけるんだな」


そうこうしているうちに馬車が止まる。

気になってエゾットの脇を通り、御者席へ顔を出すと分厚い城壁の間には鉄と木で出来た巨大な門が俺たちを見下ろすように建っていた。

ヂャリヂャリと鎖を巻き取る音とともに、地面を引きずりながら重厚な城門が開く。


「内城壁の中に入りましたよ。もう暫く進むと王城の門に着きます」


整備された石畳の道を進むと、左手には大きな屋敷がいくつも立ち並び、右手には剣を片手に訓練する若い騎士たちの姿が見える。


エゾットは俺の視線の先を見て「貴族の御子息様達です」と教えてくれた。

今年入団したばかりの新人騎士達らしく、騎士学校の卒業生達の中でも優秀な人物達が王宮を守る王宮騎士団へと入団を許可されるそうだ。


王宮騎士団への入団は名誉な事らしく、跡目を継ぐことのできない次男坊や三男坊などを入団させようと、貴族達は日々教育に力を入れているらしい。


力や財力のない貴族達にとって、身体一つで成り上がれる可能性のある騎士学校は、ある程度の素養が必要な魔術学校に通わせるよりも効率的なのかもしれない。







無事、王宮に入り客間へと案内されてから一時間が経過した。

その間《探知》にて周囲を確認しつつ、ライアから昨日酒代を代わりとして学んだ転移魔法陣をこっそりと設置する。


学んだと言うよりも、ライアの魔力に俺の魔力を混ぜ合わせた上で転移魔法陣を設置する魔法を使用してもらい、《魔法創造》スキル で名前をつけて《転移門設置(ゲート)》の魔法と《転移(ワープ)》の魔法を勝手に作成した。


ちなみにライアには《魔法創造》の話はしていないので、使えるようになっているとは思っていないだろう。

ただ単純に「もう一回転移魔法を体験させてやった」くらいの認識だろうと思う。


俺はいまいちライアという人物を信用しきれてはいない。

手の内を晒すことは極力控えて行かなくてはいけない。


ライアの協力の元、転移魔法の習得に成功した俺は、事あるごとに様々な場所で転移魔法陣を設置している。

もちろん何かあったら即逃げる為と、利便性の追求のためだ。


コンコン


客間の扉がノックされ、「お待たせしました」とエゾットが入ってくる。


「国王陛下の準備ができました。謁見の間へご案内いたします」


コツコツと足音を鳴らすエゾットの後ろをついていく。

ライアと花ちゃんは客間にて待機という事になった。


「なんか緊張しますね」


社長に呼び出された時並みに緊張する。

言葉使いとか大丈夫かな。

取り敢えずご機嫌だけは損ねないようにしなければ。


「あはは。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今回は国王陛下強っての希望ですから、とって喰われるような事はないでしょう。……多分」


「多分って何ですか……」


見事な龍の装飾がなされた扉の前に着く。

その左右には全身鎧を着込んだ兵士が、剣と盾を前身に構えて直立している。


「ではくれぐれも、失礼の無いようにお願いいたしますよ」


「出来るだけ、善処します……」


こうして、初めての国王陛下への謁見が始まった。



お読み頂いてありがとうございます。

少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブクマ、評価、宜しくお願いします!

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