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68話 静電気と二本目



「は……?」


俺は驚愕した。

教頭先生の身体が急激に膨れ上がっていく。

着ていたスーツの四肢が筋肉の膨張に耐えきれず破れ、そこから露わになった両手足は先ほどまでとは違い、明らかに二回り以上筋肉が肥大化していた。

もしかして俺も魔力でムキムキマッチョメンになれるのかしら。



「魔力はですね。想像力次第で何でも出来るのですよ!ある程度の魔力と!想像力さえあれば!この様に肉体の強化すら可能!何という万能感!!流石はスウマー様のお造りになった秘薬!」



万能感って……薬物依存症みたいだ。

そのうち多幸感も感じ始めるのか?

なんつう恐ろしい薬だ。

それよりも、想像力と魔力さえあれば、やっぱり【属性変換術式】がなくても何とかなるって事だよな。



話している間にも、アンデットナイトや《ダークボール》など、教頭先生の攻撃の手は緩められてはいない。

押し寄せてくる弾幕を《魔障壁》で全て弾けているが、それに集中しなくてはいけない為、攻撃する隙が無いのが現状だ。



いや、攻撃すると言っても、俺の魔法はかなり威力が高い。

下手をしたら殺してしまうかもしれない以上、おいそれと攻撃魔法を使う事は出来ない。

魔王崇拝者達の動向を把握する為には教頭先生から情報を引き出さなくてはならないし、俺は人殺しなんてしたくない。

どうにかして時間を作って、教頭先生の無力化を目的とした魔法を創造しなくては。



「小手先の遠距離魔法では傷一つつけられませんか。では直接殴らせていただきます」



暗闇が教頭先生を包み込む。

それはまるで漆黒のローブを纏ったあの時の魔族の様な格好だ。

暗闇が全身を包み込んだ瞬間、教頭先生が踏み込んだ。

教室の床がメキメキと悲鳴を上げる。

一瞬で俺と教頭先生の距離が詰まる。

教頭先生は勢いそのままに、黒く変色した拳で俺の《魔障壁》を叩く。



ガイィィン!!



硬質な音が教室に響き渡る。

勢いをつけた渾身の一撃も俺の《魔障壁》を突破する事は出来ないようだ。床を、壁を、天井を使い縦横無尽に教室を飛び回りながら攻撃をしてくる教頭先生だが、俺に有効打を与えられない事に焦りの表情が窺える。

これだったら《魔障壁》を攻撃に転用できる。



『パパ? 花ちゃんも何か手伝う?』


『いや、花ちゃんはその場で待機しててくれ。もし、教頭先生を無力化出来たら、土魔法で作り上げた金属で先生の全身を包んでほしい』


『やって見るね!』



花ちゃんとの会話の間にも絶え間無く攻撃を仕掛けてくる教頭先生だったが、遂にその動きが止まった。

顔をうつむかせて何やらブツブツ呟いている。



(チャンスだ……!教頭先生を無力化するには電流じゃなく電圧をあげてスタンガンの様に制圧目的の魔法を作るしかない)



「どうして……どうして邪魔をするんですか? この国は滅びなくてはならないんです。悔しさを胸に抱きながら死んで逝った同胞達のためにも、焼かれて死んで逝った私の両親の為にも……」



教頭先生は四肢が破れたスーツの上着の内側に手を入れると、赤い液体の入った小瓶を取り出した。



(あれは!?)


『花ちゃん! あれは飲ませちゃダメだ!』


『わかった! 《アイアンロック》ぅ!』


「《黒渦》」



花ちゃんの魔法が小瓶を持った教頭先生の腕を鉄で包み込もうとした瞬間、小さなブラックホールの様な黒い渦に花ちゃんの魔法が飲み込まれた。



「この国は滅びなくてはいけないんだあぁぁああ!!!」



教頭先生は恐らく二本目の薬であろう小瓶をあおる。

学校中に吹き荒れた魔力の奔流とは比較にならないほどの魔力が教室中に充満する。



「《ダークニードル》!!!!」



飛来した闇の尖槍によって俺の《魔障壁》にヒビが入る。

それを見た教頭先生は口角を上げ、初めて通った攻撃に確かな手応えを感じている様だ。

先程よりも魔法の威力がかなり上がっている。

十発ほど受けきったのち、《魔障壁》が砕け散った。



『花ちゃん!少しだけ時間を稼いでくれ!』


『《アイアンウォール》!』



俺たちの四方に鉄の壁が現れる。

次々と飛来する《ダークニードル》はその鉄の壁を貫き、貫通した穂先が若干飛び出ている。



(もう少し、もう少しだ……!)



指先に集めた電力の電圧だけを高め、魔力で裁縫針並みのサイズに加工していく。



「どうしました!防御一辺倒ですか!?」


『パパ! 限界だよぅ!!』



花ちゃんの《アイアンウォール》が蜂の巣になっている。

が、俺の対人魔法は完成した。

蜂の巣になっている、鉄の壁の隙間から放たれるのは極細の雷の針。

魔力で極限まで細くしたこの針は、高速で射出されれば肉眼で捉えられることはないだろう。



『花ちゃんよく頑張った!』


「教頭先生、ちょっとビリッとするかもしれませんが、我慢してくださいね。《雷針(スタンニードル)》!」



極細の雷針が鉄の壁に空いた穴から射出された。

知覚できないその針は教頭先生の首元に刺さり、二十万ボルトがその意識を刈り取った。



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