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59話 静電気と実習


「「「「………………」」」」


「ん? 何か言えない理由でもあるの?」



急にテーブルの空気が悪くなったな。

皆、一様に下を向いて俯いている。



「私たちは、みんな四大辺境伯の所の娘や息子なのよ。どうしても実績が欲しかったの。あの時はコスムカバが庇ってくれなかったら、私達も謹慎になってたところだったわ」



ララがポツリと話し出した。

あ~なるほど。てかコスムカバ、人身御供状態じゃねぇか。

校長先生が見栄っ張りって言ってたのはこういうところだったのか。

哀れコスムカバ。そしてこいつらは糞野郎だな。



「つまり、そんなくだらない見栄のために自分自身を危険を晒したって事か?」


「私達は常に見張られているのよ。親たちの間者にね」



なんかやべぇ親もいたもんだな。

これは心配だから常に監視してるのか?

何か違うものを感じるんだが。



「好きでやってるわけじゃないの。なにか一つでも実績が欲しかったのよ……。そうすればこの窮屈な監視から逃れられるの。私達は自分の家の名を売るために入学させられているのだからね」


「名は売れてるじゃんか。主に悪名だけど」



つい思ったことを言ってしまった。

さっきからひそひそと悪口が聞こえるんだよな。

授業が進まないとか、我儘とか、喋らないとか……。



「それは否定しないわ。色々と無茶をしている自覚はあるの」



あるのかよ。

よくこの視線に耐えられるな。

《探知》にひっかかるこのねちっこい視線が監視かな?



「だとしたらしっかりルールを守って名を上げればいいじゃんか」


「一年次の授業は基礎だけなの。《ロテックモイの逆さ塔》へ挑戦できるのは二年生から、一年生で踏破した生徒はいないの。だから無理をして挑んだのよ」


「二年生で踏破した生徒はいるのか?」


「いるわ。コスムカバのお父様と、ミーアのお母様よ。コスムカバとミーアの両親は二年生で踏破は当たり前って考え。私達の両親は、ほかの辺境伯に後れを取るのはあり得ないという考えな訳。だから何としても一年次に大業をなして私たちは自由を手に入れたいのよ」


「そんなに嫌なら逃げ出せばいいじゃん。逃げ出して、冒険者にでもなれば自由だぞ? 自由に寝て、自由に起きて、自由に働く。なんでも一人でやり放題だ。そのかわり全部自己責任だけどな」



あまちゃんなんだよなこいつら。

自分の境遇が恵まれてるって言う事にすら気がついてない。

親の金で学校行けて、飯食えて、何一つ不自由しなさそうに生活して。

どうせ自分で働いた金なんて一円だって持ってないんだろうな。

俺からしたら羨ましい限りだよ。



「それができたらっ―「それができたらやってるわよ!ってか? じゃあなんでやらないんだ?」


「それは……、もしだめだったらどうするのよ」


「そんなもんはしらん。 やってから考えろよそんなもん。 そんな事言ってる奴は一生不自由なままだ。 俺から言わせてもらえばお前らの境遇は恵まれてるし、それがわからないならそのまま腐ってろって感じだな」


「っつ! 黙って聞いていればいい気になって! 貴方に私達の何がわかるって言うの!?」



ガタっと椅子から立ち上がり、

今まで黙っていたライアが横槍を入れてくる。



「裕福な家庭で育った甘ちゃんって事だけはわかるな。だいたいなぁーー」


『パパ!それ以上は駄目だよ。みんなが見てるよ』



あぁ、少し熱くなっちまった。

いつのまにか周りの視線を集めてしまっていた。

ありがとう。花ちゃん。



「いや、何でもないわ。ごめんな、変な絡み方して。おっさんの戯言だと思っといてくれよ」


「出て行こうにも……私達、使えないのよ……。魔法が……」


「は?」


「だから、使えないって言ってんの!」



入学試験とかあるんだよな。

魔法使えなくても魔術学校って入れるの?

もしかしてコネで入ったのか?

裏口入学とかとことん卑怯な奴らだな。



「なっ! なによその顔は! 入学時の適性試験ではちゃんと適正はあるって言われたのよ! そもそも最初から魔法を使える人なんて少ないんだから! みんな最初は魔法を使えない状態で入学するんだから!」



え? 入学試験ってそういうものなのか。 

確かに今まで行った街でも魔法使える冒険者って全然いなかったな。

あまりにも心証が悪すぎて疑う所から始まっちまうな。



「いや、入学もコネかなんかだと思ってたからさ。 辺境伯って偉い貴族様なんだよな? だからなんでも金とか権力で解決してきたんだろうなーっていう偏見だ」


「なにそれ……ひどいわね……――」



キーンコーンカーンコーン

昼食終了の鐘がなる。



「大変! お昼休み終わっちゃった!!」

「ご飯食べてないじゃん!」

「…………うぅ」



くそう。変なことに頭突っ込んじまった。

うまそうなスープランチ食いはぐっちまったな。



「次の授業、合同実習じゃ~ん! お腹空いたままだと魔法でないよぉ~!」



アーニャちゃん、君はそもそも魔法使えないのではないのかい?







午後の授業は火魔法学科、水魔法学科、土魔法学科の合同実習だ。

教員は土魔法学科のヤチオ先生の他に、二人の見知らぬ先生と教頭先生が見に来ている。

学生寮の近くにある運動場で行われるようだ。

これなら授業が終わった後はすぐに寮に帰って汗を流せるからいいな。



「午後の授業は五限目、六限目と連続で魔法訓練を行う! 途中で十分ほど休憩をとるが、実習は怪我をする可能性が大いにあるので、皆集中して授業に当たるように!」



「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」



火魔法学科、水魔法学科、土魔法学科のそれぞれの学科の教員が自身の学科の生徒を連れて移動していく。

訓練場には、魔術を当てるための案山子のような的が建っている。

その案山子の前には、順番に生徒が並んでおり、【属性変換術式】を唱えた生徒たちが一心不乱に、案山子に向かって火魔法の《ファイヤーボール》や水魔法の《ウォーターボール》、土魔法の《アースニードル》を撃ち込んでいる。



(うーん。これは魔法学校入る意味なかったかなぁ……。それとも一年生だからこんなもんなのか)



午前中の学科の授業と一緒だなぁ。

初級魔法の練習ばっかで、花ちゃんがこの授業に出る意味を見出せない。

さっき花ちゃんが撃った《アースニードル》は案山子を木っ端微塵に吹き飛ばした。

壊した案山子の代わりに花ちゃんが創り出した光沢のある金属で出来た案山子は、生徒の魔法では小さな傷すらつけることが出来ない。



周りで見ていた生徒は唖然としている。

土魔法は極めると金属を作り出すことができるって聞いたことあるけど、花ちゃんはもう既に極めつつあるんじゃね?



一方で愉快な仲間達はと言うと火魔法学科にはララとライア、水魔法学科にはミーアがいる。もちろんアーニャは花ちゃんと一緒の土魔法学科だ。

先ほど言っていた通り辺境伯家の娘達は本当に魔法ができないみたいだ。



彼女たちが【属性変換術式】を唱えてもうんともすんとも言ってないようだ。

そもそも魔力の動きが悪い。

何だろうか、腕まで魔力が行ってないな。

肩の付け根が何かに縛られているかのようにそこで魔力が止まっている。何かに邪魔されているような感じだなぁ。




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