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58話 静電気と学友



「本日は新しい仲間が土魔法学科へとやってきました。紹介します。『花子』さんです」



コスムカバを窓から放り投げた翌日、土魔法学科のある西棟二階の教室に来ていた。

土魔法学科の生徒たちは、俺と花ちゃんの姿を見てかなり引き攣った表情だが、拍手で迎え入れてくれた。



花ちゃんを紹介してくれたのは土魔法学科一年生の担任である、ヤチオ=イーオ先生だ。

眼鏡をかけた三白眼で凶相の先生だが、人相とは真逆で物腰は非常に柔らかな先生だ。

初めて花ちゃんに会ったヤチオ先生は驚きはしたものの、直ぐに花ちゃんを受け入れてくれた。



一つツッコミを入れるとしたら、その不自然で浮いたようなポニーテールは明らかにカツラだろうな、と言うことである。

因みに男性の教員である。



「では花子さん、何か一言、自己紹介をお願いします」



まじか。先生忘れてないか?

花ちゃんは人に触れないと会話が出来ない。

俺が少し口を出すべきか?



『花ちゃんどうする? 俺が代わりに言おうか?』


『花ちゃん一人で挨拶出来るよう』



花ちゃんがそういうと、しゅるりと蔓を出す。

その総数は二十二本。

蔓の本数は教室にいる生徒、先生の数と一致する。

生徒達は恐る恐る花ちゃんの蔓を手に取り、花ちゃんの念話による思念を受け取る。



『始めまして! 魔界草の花ちゃんです! 仲良くしてください!』



大半が声が出ない中、一人だけ花ちゃんに声を掛けてくる生徒がいた。



『ねぇねぇ君達、この間《ロテックモイの逆さ塔》の時、中に連れてってくれた冒険者さんだよねっ?』



声の主を探すため周囲を見ると見覚えのある顔があった。

イキリ小僧と愉快な仲間たちの中にいた女生徒の中の一人だ。


腰までの長さの波打つ桃色の頭髪にアホ毛。

この土魔法学科の女子生徒の中でも抜群に可愛い容姿。

間違いなくこのクラスのアイドルだろう。



「じゃあ花子さん。アーニャさんの横の席が空いていますので、その責にお座りください」



ヤチオ先生の案内されて座った席の横には先ほど念話で話しかけてきた美少女がいた。

この子はアーニャっていうのか。



「花ちゃんって呼んでいいかなっ? 私はアーニャ=ザラ=ズール。アーニャって呼んでねっ!」


『いいよ! 花ちゃんもアーニャちゃんって呼ぶね!』


「土魔法学科に来るってことは、花ちゃんも土魔法が得意なの?」


『んー? 便利だから覚えたいだけだよ! 花ちゃんはどの属性も使えるよ~!』


「へ? どの属性も使える!?」



おいおい、あんまり盛り上がらないでくれ。

ヤチオ先生がすごーく嫌そうな目でこちらを見ているぞ。



「そこの二人、五月蠅くするようでしたら、外でお話して頂いてもよろしいのですよ?」



「『ごめんなさい!!』」







授業内容に関しては、正直言ってつまらなかった。

【属性変換術式】の暗記と理論式の座学が中心で、《賢者》のおっさんが付いてる花ちゃんには物足りない内容だったようだ。



四時限目は俺が少し気になってた魔物学だった。

校外実習でよく活用される《ロテックモイの逆さ塔》に出現する魔物についての講義だったのだが、第五階層目までは小鬼(ゴブリン)大鬼人(オーガ)豚頭人(オーク)、そして五階層目の階層主である醜怪巨人(ボストロール)で、双頭の巨人はレア魔物だったようだ。

講義の途中で、質問してしまったのだが、鎧骸骨は出ない魔物らしい。

じゃああの時五階層目で出てきた鎧骸骨(アーマードスケルトン)はなんだったんだ?



昼食はアーニャと一緒に取ることになった。

食堂は魔術学校の中心にある中央棟にあるらしい。

西棟から5分ほどかけて到着すると、食堂は生徒で溢れかえっていた。



「やっほ〜! みんなぁ〜!」

「アーニャ!こっちこっち!」

「アーニャちゃんおはよー」

「…………はよ」


アーニャが声をかけたのは、迷宮にいた時の女生徒達だった。

四人とも美少女だからか、周囲の生徒からの熱い視線を一身に受けている。



「一学年の四天王だぞ。相変わらず可愛いな」

「あんな美少女達とお近付きになりたいよなー」

「やめとけよ。四人とも辺境伯のところのだぞ。目でもつけられたら、この学校にいられなくなる」


「「「でも可愛いよなぁ〜」」」


やっぱり人気なんだな。彼女たち。

それにしても彼女たちも辺境伯?の親族なのかな。

皆んなセレブって事かよ。



「で、アーニャ。なんでその人と一緒にいるの?」


その中の一人がアーニャに声をかける。

短めのボーイッシュな髪型の黒髪に濡れるような黒い瞳、線の細い顔のパーツは絶妙なバランスで配置されており、長い手足はまるでモデルのようだ。


「花ちゃんはねっ!今日から土魔法学科の生徒なんだよっ!」


「は!? その冒険者、この学校に入学したの!?」


あ、勘違いされそうだ。

先に訂正しておこう。


「いや、入学したのは、俺の『娘』の花子だよ」


「そうなのね。魔物が入学なんて変な気がするけど、昨日は庇ってくれてありがとう。お陰でコスムカバ以外は特にお咎めなしで済んだわ。彼は教頭先生が一週間の謹慎処分を出したけどね」


四人は頭を下げ、それぞれありがとうと感謝してくる。

花ちゃんを魔物呼ばわりするのはいただけないが、ここで文句言うのは野暮ってもんか。


「自己紹介がまだだったわね。あたしはララ=カロボトム」


黒髪の美少女はララと言うらしい。

ララが他の二人も自己紹介!と急かしている。



「…………ミーア=ナーナイル」



清流のような水色の髪をおだんご状に纏め、眠そうな眼は妖艶な雰囲気を醸し出している。アーニャやララと同じく非常に魅力的な顔立ちだ。発育の良いその身体はローブの模様を横に引き伸ばしてしまっている。



「コス様が退学になる所を助けて頂いて、ありがとうございました。ライアと申します。」


最後に挨拶してきたのは、この四人の中で一番控えめなタイプの女の子。肩まで伸ばした茶色い髪は強いクセがあるようでかなりのうねりがある。顔立ちも美人だが、他の三人には一歩劣ると言ったところか。体型はローブに隠れてしまい、ミーアのような強力な武器などは持っていないようだ。


ぴったり当てはまる言葉を探すとしたら、『クラスで三番目に可愛いけど、性格がいいから一番人気』だ。



「みんな怪我とかなくて良かったよ。俺はベック。この子は魔界草の花子だ。今日から通う事になったから、仲良くしてやってくれ」


「よろしく!」「…………よろ」「よろしく〜」「よろしくお願いします」


「それで、なんで君達は迷宮に勝手に潜ったんだい? コスムカバは君たちを庇っているようだったけど」


「「「「…………」」」」



何か訳ありなのかな。






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