57話 静電気と魔法創造
「おい! さっさとでてこい!」
やべー。早速近所トラブル発生。
ドンドン!と勢い良く扉を叩き続けている。
迷惑な奴だな。まぁ俺のせいだけど……。
《魔力手》で外に出していたマットレスを引っ込める。
「さっきから埃を飛ばしてるのはお前だな!!! はやくでてこい!!」
建て付けの悪い扉を叩き続けている来訪者。
そんなに叩いたら開かなくなっちゃうぞ。
このままだと近所迷惑だ。俺は鍵を開け、扉を押し開ける。
俺の姿を見た目の前の人物が、ゴクリと息を飲むのがわかる。
白と紫のローブに生意気そうな面と赤い髪。
どこかで見た事あると思ったらイキリ小僧か。
なんでビビってるのかと思ったら、牛頭人王のフード被ったままだったからか。
まんま牛頭人に見えるみたいだしなこれ。失礼失礼。
俺がフードを取ると、イキリ小僧の態度が急変し、いきなり大声で怒鳴り始めた。
イキリだけにいきなりってか。
「お前は、あの時の臆病者の冒険者!なんでお前がここにいるんだ!」
「なんでって言われても、俺の娘が入学したからな」
「娘だと!? そんなものどこにいるんだ?」
「どこって、ここに居るじゃないか」
俺は右肩にいる花ちゃんを顔の方へ抱き寄せる。
「はっ! 何を言うかと思えば、そいつは魔物じゃないか! 人間の糞にも劣る魔物を《娘》だなんて、お前は頭がおかしいんじゃないか?」
言いたい放題言ってくれるじゃないの。
流石にイライラしてきたぞ。
だが、ここで問題を起こしてもしょうがないからな。
ぶち殺してやりたいが大人な対応で行くしかない。
『ごめんな。花ちゃん。すぐ追い出すから』
『んーん。大丈夫だよ』
花ちゃんはそうは言うものの悲しそうに見える。
「何黙ってるんだよ! 図星すぎて言い返せないのか!?」
「あぁごめんごめん。ついでに埃もごめんよ」
「なっ! ついでだと!? 俺を誰だと思ってるんだ!? 俺はナウソラエ辺境伯の息子コスムーー」
「あぁいいよ。君の名前は知ってる。偉そうなバカ息子だろ?」
「くっ!! 貴様!この俺をバカにする気か!!」
あれ?違ったっけ?
コムスカバは杖を引き抜くと「後悔させてやる!」と叫び呪文を唱え始める。
(こいつは馬鹿なのか? オンブリックが嫌っている理由がよくわかるぜ……)
「荒ぶる火の精霊よ――我に力を与え給え――」
おっと。そうはイカのちょんまげ。
その【属性変換術式】は確か《ファイヤーボール》だったな。
《魔力手》で今にも発射されそうなコスムカバのファイヤーボールを包み込む。
「「ファイヤーボール!」ってか」
オンブリックのおかげで【属性変換術式】を覚えてたからな。思わず真似しちゃったぜ。
コムスカバの《ファイヤーボール》は、ポフっという音と共に《魔力手》の中で消えた。
それと同時に、今まで何度も感じた身体に魔力が定着する感覚があった。
「「なんだと!?」」
思わぬ出来事にコスムカバと驚きが被ってしまった。
コムスカバの驚きは、恐らく《ファイヤーボール》が消されたことだろう。
しかし俺の驚きはまったく違うものだった。
俺は慌ててステータスボードを確認する。
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名前 別宮洋也 年齢 27
職業 B級冒険者 魔物調教師:魔界草変異体
身分 ―――
能力値 Lv66
【体力】B+
【魔力】A+
【筋力】B+
【敏捷】S
【頑丈】B
【知性】G
【ユニークスキル】
静電気Ex(MAX) 魔法創造
【パッシブアビリティ】
異世界言語 体質強化 魔力操作Ex(MAX)
【アクティブアビリティ】
放電Ex(MAX)魔法:雷銃Ex(MAX) 魔法:雷槍Lv5 魔法:雷装鎧Lv3 魔法:電弧放電Lv2 魔法:神の裁きLv2 魔法:局部破壊放電Lv2 魔法:魔力手Ex(MAX) 魔法:ファイヤーボールってかLv1 身体強化魔法:極限集中状態Lv1
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やっぱりそうか……。
スキル作った時みたいな、魔法の定着感があったんだよな。
魔法創造ってなんでしたっけ。
魔法:ファイヤーボールってか。
たしかに ってか っていったけども!
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《魔法創造》
魔力を関与させて、現れた現象に名前を付けることで、その現象の概念を固定化しスキル化する。
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俺は《魔法創造》スキルの事、勘違いしてたのかもしれないな。
別に自分の魔力で発現した現象じゃなくてもいいってことか。
《ファイヤーボールってか》ちょっと唱えてみるか。
畜生……。名前がダサすぎる……。
室内では打つことはできない。腕を窓側に向ける。
「《ファイヤーボールってか》」
腕の前で十五センチ程の炎の球が現れる。
が、その炎の球は1センチも飛ぶことはなく、手のひらの前でポフっという音と共に霧のように消えた。
「「…………」」
思わずお互い顔を見合わせる。
「お、おい……。今のは何だ?」
「お前の魔法だ」
ずいぶんと弱いな。っていうかパーティとかで使うクラッカー並み。
名前を付けたときの状態が反映されるからだろうな。これは。
めちゃくちゃ使えない魔法になっちまった。
「おい、なんで俺の魔法は消えたんだ?」
「俺の魔力で包んだからだけど……」
「馬鹿な……魔力自体をどうやって使うというんだ? しかもいまの魔法は無詠唱じゃなかったか?」
「しらん。お前に教える義理も義務もないからな俺には。さっさと帰れ」
それにさっき花ちゃんの事、『人間の糞にも劣る魔物』って言ったの忘れてないからな俺。
俺はおもむろに《魔力手》でコスムカバを掴み、そのまま窓から放り投げた。
「あああぁぁっぁっぁぁぁぁあああ!!!!」という叫び声が聞こえたが気にしないことにする。
まぁ二階だし死にやしないだろう。花ちゃんへの暴言はこれで許してやる。




